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5章 魔法少女と魔物襲来
158話 魔法少女はフィリオに呼ばれる
しおりを挟む紆余曲折あり、街に到着した。門番の人に、「若いのにお疲れさん」と挨拶を貰い、私は「仕事ですから」と、かっこよく言ってみた。
こう言うセリフ、1度でいいから言ってみたかったんだよね。
できる女って感じだよね。
「なんか変な雰囲気立てんなよ。」
「黙ってて?」
「……おぅ。」
適当な会話を重ね、街に入る。すると、広間的な開けた場所に、人が集まっていた。
何かあったのかな?こっからじゃ見にくいし……なんだろうね?
何事かと、私は先に走ってみることにする。
「おっ、ちょ待てっ!そっちは……!」
ディーが言い切る前に、駆けていってしまった。それが、運の尽きだった。
「うぉぉぉぉぉ!!英雄様のお帰りだァァァァァァァァッッ!!!!」
「「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
「なに、っこれぇぇぇ!!」
人の荒波に飲まれた。コミケ会場ですら、ここまで押し合いにはならない。1度道を間違えたら、1周して戻ってくる必要のあるあのコミケレベルだ。エグい。
あの時は水分も塩分もまともに持ってきてなかったから、死にかけたなぁ……
ほんの数年前のことを思い出し、懐かしんでいた。
じゃない!
「そっ、ソラさーん!」
「だから言ったろ……」
2人がどんどん遠くなっていき、呆れる表情も心配がる表情も見えなくなる。
あー……このまま流れに任せたら、どうなるんだろう。
胴上げされながら、ボーッとした目で空を見上げる。
すると、どこからかピーーーッ、と言う機械音が響く。
「あー、あー。そろそろ戻ってきた頃合いだろう。表彰を始める。」
フィリオの声だ。フィリオの声で、全員の動きが止まる。もちろん、胴上げもね。
あぁ……死ぬかと思った。早くおさらばしよう。
ステータスでゴリ押し、私は逃げ出した。
「領主様の一声で助かったな。」
「今日初めて、フィリオに感謝の念を抱いたよ……」
「あの、早く行かないと……時間が……」
「そうだな。」
冒険者は表彰されるということで、私もついていくことになった。「行きたくない場合は?」と聞くと、「拒否権は無いぞ」と言われてしまった。
いやだー!なんで私が表彰されなきゃいけないんだ!
「お前が1番表彰されるべき人間だろうが!」
「嫌だよっ!地龍倒しただけだよっ!」
「おまっ……そんなことしてたのか?地龍?お前本当に同じ人間か?」
「酷っ!私、人外?」
あーだこーだ言い合いをしていると、人影が現れる。
「集まったか?こっちも準備は完了した。冒険者はそれぞれ代表を、騎士団は団長と副団長を表彰する。」
軽く説明が始まる。
「特に活躍した者には、個人で表彰しよう。」
何故かフィリオは、私を見ていた気がする。
気のせいだ、うん。
「もう少しで始まる。休憩をとっておくといい。」
他の冒険者の人は、フィリオにビシッと挨拶をしていた。高感度のためだね、多分。
その隙間を縫って、私もフィリオの元に行く。
「ねぇ、ほんとに私を表彰する気?やろうと思えば、この街簡単に破壊できるよ?」
脅しのつもりで、適当なことを言ってみる。
まぁ、事実なのは確かだけど。
「やめろやめろ。ソラが言うと洒落にならない。」
呼び方が変わってるような気がするけど、最近の記憶はあやふやだから、あんまり覚えてない。
「少しは敬意を払おうと、名前で呼んでるんだけどな……まぁいい。俺は、讃えられるべき人間を表彰しているんだ。あそこに行くこと自体、普通は怖くて無理だ。勇気を持つ人間に対し、領主が称賛する。当然のことだ。」
「お、おぅふ……」
急な文章攻撃に、思いがけないダメージを喰らう。
ま、まぁ?こんな小娘が?表彰されようと?誰も見向きしないでしょ?
さっきだって?私のことなんてよく見て無かったし?なんとかなるでしょ。
現実逃避をする。
「分かった、でも大々的にやったら恨むから。」
「そうか。ならいっそ大々的にやってやろう。やるならパーッとやった方がいいぞ?」
フィリオの口角が上がった。完全にいじってきてる。
何この領主。私に対して辛辣すぎない?私に恨みでもあるの?
よくよく思い出してみれば、竹林の村の件で仕事を山のように積み上げたことを思い出して、「恨み、ありまくりだ……」と顔に手を当て、小声で呟く。
表彰式まで残り10分をきってる。騎士団が先に出るらしいから、まだ時間はある。
「お前、緊張してんのか。」
フィリオから少し離れたら、ディーが話しかけてくる。
「緊張?緊張はしてないよ。緊張はね。」
人前に出るのは好きじゃないのに……くそっ、どうして私が。……地龍なんて倒すんじゃなかった。
倒さなかった場合のことを考えると、この街が終わりそうなので、結論は倒して良かったと言うことになった。
私が我慢すれば、それでおしまいだ……うん、そうだ。
「わっ、私は緊張しますっ!ぶぶぶっ、舞台に上がるなんて、いいっ、今まで無かったので……」
そんな風にざわざわしている中で、ついに表彰式が始まってしまった。突然死会なんているわけもなく、いきなり魔法通信が始まり、それぞれの領主が画面に現れる。
「まずはパズールの街から。騎士団団長、コーレス。副団長、ヴィレ。前に。」
「「はいっ!」」
———————————————————————
表彰式。ソラさんが主人公みたいなもんですね。物語的にも、ちゃんと主人公ですけどね。
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