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5章 魔法少女と魔物襲来
157話 魔法少女と終戦
しおりを挟む「………ただいまぁ。」
少し軽減されたけど、頭痛は無くなってないので、掠れた声しか出ない。
「そっ、ソラさん?大丈夫ですか!?」
「いや……うん。大丈夫、大丈夫。」
私の定位置、切り株に腰を下ろした。
能力値がバカみたいに上がったけど、結局頭痛は治らないと。そうですか、はいそうですか。
はぁ~、と深いため息を吐く。フェイルが回復薬とヒールを使うけど、別に魔力も傷も無い。
ただの倦怠感。
「何があったか分からんが、音は聞こえてきた。激戦があったようだな。はぁ。後処理はなんとかしてやる。もう魔物の動きも薄くなったしな。」
「よかったですね、ソラさん。」
笑いかけるフェイル。おっとりした感じの女の子は、やっぱ可愛い。
それにしても、ディーが謎の積極性を持ってる?
もしかして……?
「頭でも、打った?」
「心配してやってんだろうが!」
軽くキレられ、「そーですか」と空返事をしておいた。
うーん、SPはどうしよう。各種地龍魔法の『×』の記号も気になるし、そこまで上げようかな、全部。
それからそれから……思いつかない。
「聞いてんのか、テメェは。」
舌打ちをしながら、森の奥に入って行った。もう強い魔物はいないから、適当に手を振っておいた。
「がーんばれぇー」
「頑張ってくださいねー!」
「………おぅ。」
気の抜けた返事をして、少し経って見えなくなった。
「んー、寝よっかな?」
「起きといてあげた方がいいんじゃないですかね?」
「そうかなぁ?そう言うなら、まぁいいけど。」
そこからは、雑談で終わった。1時間くらい経った後、返り血に染まったディーを見て、「「あぁ、終わったんだなぁ」」と2人、心で思った。
この戦いは無事終わった。終戦と言っていいのか分からないけど、魔物襲来の件が片付いた。
「にしても、本当に3万匹しかいなかったのか?もっといただろ。」
ディーが、帰り道でそんなことを呟いた。
確かにそうだね。地龍と核石のせいで、魔物が余計集まったってことだと思うけど……これからは近辺の魔物は薄くなる。
これも狙いなのかな?だとしたら、とんでもない策士じゃん。孔明名乗ろうよ。
「わっ、私はあんまり実感ないですね。ずっと、守ってもらっていたので……」
「まぁ、こっちはこっちで大変だったし、数とかぶっちゃけ覚えてない。」
「お前……1番倒してたやつが何言ってんだ。」
呆れたような視線を寄越し、もちろん私は無視をする。
これからの事後処理、フィリオ達がやってくれるのかな?戦うまではいいけど、そんな細かいところまではやりたくない。
一方ディーは、聞いてるのか……と頭を抱えていた。
「これ、帰ったらどうするの?私、疲れすぎて死にそうだから、帰りたいんだけど。」
「あ?こういう時は、魔法通信で表彰されるもんだぞ。お前は確実だろうよ。」
嘲笑うかのように、口角を上げた。
……なにそれ、初耳。表彰?通信?魔法技術発展しすぎ……は、今関係ない。
「そそそ、そういう、ディーこそ?表彰されるんじゃないの?」
「はっ、願ったり叶ったりだ。冒険者として、これほどの名誉は無い。」
ちっ、私とは感覚が違うのか……普通、喜ぶべきことなんだろうけど、目立ちたくはない!
魔物を倒す、面白そうなことをやる、それだけならいいけど、そこまでやるとは言ってない。
「今日中には領主に呼ばれるだろうからな、準備しておけよ。休む暇なんざ、与えられねぇな。」
「……うん。口、閉じようか。」
無言の圧とはこのこと。目を瞑り、拳を見せる。
「怒りの矛先を間違えんなー。怒られる筋合いは、こっちにはねぇからな。」
うっざぁ、うざすぎる……なにこの、『人を煽るのに特化させました』みたいなやつ。私の嫌がる部分を好き放題押してくれるじゃん。
今の私なら、覇気だけで倒せる気がするけど…………やっちゃおうかな?
「おい、マジになんな。冗談だ、冗談。お、おい?分かってくれるよな?」
「うん。」
「分かってないだろ?な、な!争いは何も産まないぞ?」
「そうだね。」
「その物騒な色したステッキを下ろせ!」
「「ぷっ…………」」
私とフェイルが、そのやりとりを見て吹き出す。それぞれの笑い方で、ディーの顔を見て笑いこける。
「おいコラ、しれっと俺の顔で笑ってんじゃねぇ。」
「あ、バレてた?」
「それを口に出すな。」
ツッコミ役のディー、ボケ役の私、可愛さ役のフェイル。このトリオで、ずっとボケ倒した。
周りは苦しそうな表情をしたり、血がついた剣や鎧を持って暗い雰囲気の人もいた。
騎士達は、なんとか急場を凌げて少しダラっとしていた。
三者三様。同じ戦いの終わりで、ここまで差がついてることに驚いた。
「こっちはソラがいたから、前線もある程度安全だったけどな……他はそうもいかないのか。」
「魔物の数も減らなかったし、当然っちゃ当然だけどね。」
適当に返事をしながら、考え事をする。顔には出ないように、真顔をキープする。
あの件は、フィリオに話した方がいいのかな?
あの件とは、知ってのとおり地龍ことと、洗脳されてたこと。それが、他者によるものだということ。
言わないと、色々問題も起こりそうだ。早めに解決してほしい。
あ、何かあっても、もちろん私は参加するつもりはないよ。
私は、今回の事件を振り返りながら、私達の街へと帰って行った。
———————————————————————
今回はまったり終わりました。1番の山は超えましたし、あとは5章の終わりに向かうだけです。
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