魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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5章 魔法少女と魔物襲来

155話 覚醒(前編)

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 私はこの戦場の只中で、休息をとっていた。

 いや、地龍はご覧の通りのされておりますので、セーフ、セーフ。

 ふぅ、と何度か息を整えながら、地龍に一瞥をくれる。

「さっさとやっちゃわないと。動き出しちゃったら危ないしね。」
目を閉じ、しっかり3秒経ってから目を開ける。

 そして私は忘れてた。私が、一級フラグ建築士だということに。

「ギュルアァァァ………アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
傷なんか気にしないと言うように、とんでもない轟音が森に響き渡る。

 ……ッ!?復活した?こんなに早く?

 地龍の生命力に、思わず呆然とし、目が点になる。

 呆然とした理由はそれだけじゃない。

「ギュルゥァァァ……」
どんどんとその巨大が縮んでいき、2m級の人型をとっていく。

 小さくなったからといって、弱くなったわけじゃない。見ただけで分かる。とんでもなく強い。

 背中にあった赤い紋章が光り輝き、苦しそうな呻きをあげた。

 もしかして……なにかに……

「ギュアァァァァァァァァッッ!!」
黒く染まった腕を突き出し、空力の壁にてなんとか防いだ。それでも、威力を殺しきれずに後方に飛ぶ。

「くっ……!」
体を翻し、勢いを殺して着地した。

 空力の効力が減った?龍から龍人になったとか?地力が上がった……?

 頭の中で高速で思考される。それでも平行線で、全く結論に辿り着かない。

 でも、ただ1つ、分かることがある。

「覚醒した?」
キッと目を細く結び、人型の地龍を見据えた。

 原因は全く分からない。何でこうなったの?ほんとに意味が分からない。

「当たらなければどうとでもない、と言ったな?当たらなくとも、どうということもあるのだ。」
低く沈むような声が響き、底冷えするような感覚に陥る。

 喋った?というより、今までも意識があったってこと?

 いきなりの展開が続き、私は動揺を隠せない。

「とんだ僥倖だな。貴様がその失われた力を使えなければ、とっくに死んでいた。これから死ぬのに変わりはないが。」
表情は何も変わらないけど、どこかウザさを感じる。

 ……でも、よく考えてみれば有利になるかもしれない。

 私の本質は魔法だ。忘れちゃいけない、私は魔法少女だよ。魔法少女の本質は、言わずもがな魔法だしね。

 魔法への抵抗力が減って、空力への抵抗力が上がる。臨機応変なのはいいことだけど、魔法への抵抗を減らしたのが運の尽きだっ!

 私を舐めちゃぁいけないよ。付け入る隙を与えたこと、後悔してもらおう。

「はっ、怯えて動けぬか。」
その瞬間、目の前から地龍が消えた。

 っ!?でも、こういうう時こそ動かないと!

 神速で真後ろに移動し、次に見た光景は、さっきまで自分のいた場所に、鋭い一撃が宙を掠めていたものだった。

 そのとき、微かに万能完治に反応がある。流石にそこまでは気づけなかった。

 このときに知る。
 

「かぁ……っ!」
衝撃がお腹に伝わってくる。臓器が揺れる感覚と共に、後方に飛ばされた。

 ……ぁぁ、意識が、飛びそうに……なんて威力。
当たらなくとも、当たってしまう。これが圧倒的な力。

 お腹をさすり、力を振り絞って立ち上がる。万属剣、暗黒弓、混合弾、流星光槍を周りに出現させ、それを置いていくように神速で走り抜ける。

 空力と魔力、混合の物質。そのままだけど、空魔力とでも呼ぼう。
 空魔力をステッキに纏わせ、力任せに振り上げる。

「速いな。」
腕で受け止められている。ミシミシと装甲が悲鳴を上げ、それでも脈を張って耐えている。

 脈を張られなければ、空力の方で装甲は突破できる。あとは魔力で何とかできれば……

  そう考えるていると、真後ろから私の魔法が飛んでくる。

「だから、どうしたのっ!」
地龍を右足で蹴飛ばし、神速で真上に飛ぶ。ミョルスカイを装備し、空力を混ぜ込む。

 弾丸の外に空力を纏わせ、空魔力で押し込む。
出力調整、限界。300%軌道修正、軌道補正完了。トール、投擲………

 確認作業を終える頃には、魔法がうち終わっている。

「流石に避けきれぬか。なかなかに痛む。」
体中、様々な箇所に魔法が突き刺さっている。

「それはよかったね。なら、もっといいのをプレゼントしてあげる!」
トリガーに指をかけ、強く押し込む。地龍が私を見上げた瞬間に、ドォォォォォンッッ!という轟音が空気を震わせた。

 雷が全てを焦がしていく。土、木、空間、魔力、脈‥‥ここまでくると、余波すら災害並みの魔法だ。
 厨二っぽく名前をつけるなら、烈焦雷滅魔砲ラディレクト•ガノンみたいな?

「…………………………………」
地龍は立っていた。でも、左腕を押さえている。よくよく見ると、腕がない。

「これは、本気を出さぬといけない相手なようだ。」
感情を捨てきったような声色で、地龍は歩く。

 もう魔力はすっからかんだよ……これでも倒せないとなると、結構ヤバい。空力も、私は魔力が無いと使えないし。

「貴様は、我の本気で逝くに相応しい。」
コキ、コキ、コキ。指の関節を鳴らす音が、やけにはっきりと聞こえる。ドス黒いオーラを放ち、より一層背中の光は激しさを増す。

 残像が見え、次の瞬間には全てが消える。辺りの土が膨れ上がり、膨張の結果破裂する。
 その威力は爆弾並みだ。

「……は?」
その光景を見て、唖然とするしかできない。そのときにはもう、槍のように尖った拳が鳩尾に突き刺さっていたとも知らずに。

「……………ッ!!??……ぁぁぁ……」
表現できない痛み。久しぶりの苦痛。格上からの、圧倒的な攻撃。倒れ伏すしか、できなかった。

 鳩尾からドクドクと血が流れ出す。土と鱗が変化した、尖った拳。殴られる痛みと、刺される痛みが両方感じられてしまう。

 口から酸っぱい液が流れる。胃から逆流してきたんだと思う。

 まともに思考が働かない。痛みで今すぐ意識が飛びそうだ。血は、とめどなく溢れ続け、このままでは出血多量で死ぬ。

「即死にはならないか。常人ならば死んでいるんだがな。」
意識が朦朧の中、そんな言葉が聞こえる。

 ダメ、だ。まだ、死ね、ない。……特異、体質?ダメ。もう、使った。……なら……何か…スキルは?

 そこで、2つのスキルを思い出す。

 言葉は発せられない。頭を死ぬ気で働かせ、命をつなげる。

 覚醒、運命。今使える、唯一のスキル。

 今、ここで決意する。

 ———!———

「……っ、覚…醒…………!!」

————————————

 地龍は、意識だけが生きていた。あの一瞬、思考魔法を発動させ、思考分離をしていた。

(何をやっているんだ、我輩は……!)
身体の自由が効かず、勝手行動がとられる。

 今は、あの時洗脳を解いた少女と戦っている。

 戦闘には、目を見張るものがある。動きは未熟だが、それなりの強さがある。

 それでも、地龍は自分のほうが上だと感じる。

 それは、今までの経験から。体に染み付いた戦い方は、意識が無くても癖が出る。

 声も、喋り方も、何もかも違くとも、強さだけは変わらなかった。

(生きてくれ……強き少女よ……!)
今の地龍は、別の意識でそう願うことしかできない。

———————————————————————

 今回、いつもよりだいぶ長いですね。

 実は簡易的なプロット立てたときに、地龍戦はここで終わりなはずだったんです。
 でも、見てください。まだ終われません。

 少し戦って、攻略法を見つけ、倒す。これで終わりだった、終わりだったはずなんです。
 でも、何故か龍が人型になり、喋り出し、そしてなにより空が死にかけです。

 どうしてこうなったんでしょう?

 ということで、話数は同じで、前編後編に分けました。いつものやつです。





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