魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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5章 魔法少女と魔物襲来

154話 魔法少女と決戦

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 勝ち目がない?絶対にダメ?そんなわけない。そんなわけがない。

 威風堂々たる、威厳を持つ地龍。でも、弱点がないわけじゃない。どんな生物にも、弱点は絶対ある。

 大地を揺らしたものは、青みがかった黒色をした鱗を持つ、

 何が起こったって?そんなの簡単。

「空力。聞こえてるか分からないけどね。」
わざとらしく首を曲げてみる。

「空力は、力がほとんどない人間が、強者に勝つため生み出された。狐人が私を圧倒しかけたのは、魔力防御が高かったから。」
自分の考えを噛み締めるように、言葉にする。

 簡単に説明すると、龍は魔法に対して圧倒的な防御を発揮する。その中に、魔法を入れたらどうなる?

 硬い鱗と、体の間。出ることはできない。できるのは、ただ自分を傷つけることだけ。

 私の魔法少女装備一式は、魔法に対して全体的にとてつもなく効力を発揮できる。
 狐人の空力は、それに反応したんだと思うよ。

「どう?自分の防御力の高さのせいで食らうダメージは。あっ、なんかやる気出てきた。」
ようやく勝機が見えてきたことで、自然と頬が緩む。眉も丸い八の字を描いていた。

 でも、万能感知で見る限りあんまりダメージ食らわせた感がないんだよね。

「そろそろ立ち上がったら?私も私の攻撃の威力くらいは把握してるから、この程度で地龍がのされるなんて思ってないよ。」
その言葉に呼応したように、のそっとした動きで立ち上がり、背中の赤い紋章が光る。

 ほんとに、なんだろうね。あの赤いの。

「ギュルゥラァァァァァァァッッッ!!」
思考はその咆哮で遮られ、「もう、なんなのさ……」と呟きながら後退する。

「ギュルォゥゥッッ!」
その巨大では考えられないスピードで、四方八方に跳んで移動する。もちろん土槍も一緒に飛ばしてね。

 とうとう本気を出したかな?流石のスピードだね。

「じゃ、避けてみて。」
空中歩行で空を駆け、両手を横に伸ばす。空間の力が集まり、見えない球が形成される。

 狐人みたいに、形にしちゃうと避けられやすい。私にしか分からなくていいんだよ、空力なんて。

 音にしたらボォンッとか鳴りそうだけど、全くもって音は鳴らない。実態が無いしね、当然っちゃ当然か。

「ほらほら、どうしたの?さっきまでの強さはなんだったのかな?」

 数値化したら挑発能力53万を超える私に、挑発できるような状況を生み出すなんてね。
 これは煽ってくださいって言ってるようなものだよね。

 土弾も土槍も検討ハズレの方向にしか飛ばない。いくつか当たったのもあるけど、破壊されていく。

「ギュラゥッ!!」

「新しい攻撃っ?」
地面から意志を持ったようにうねうねと動く、土の棒が何本も生み出されていた。

「ギャウラァァッ!」
それぞれが空間を埋め尽くすように動き回り、そのうちの1本が私へと肉薄する。

 ………っ!危な…………、なーんてね。

 ボッと視界が青く燃える。

「ざーんねん。想定済みでした。」
空力で発生させた炎が、ゆらゆらと煌めく。その隙間からニヤッと笑みを浮かべた。

 アニメや漫画を読み漁った私に、地龍の攻撃パターンや種類が分からないわけないんだよね、これが。

 よくあるよね、こういうやつ。

「私が空力を使えるなんて思わなかったでしょ?京成逆転だね。」
意味は無いけど、適当に暗黒弓を放っておく。

 魔法少女が攻撃に魔力を使わないっていう、よく分からない状況だね。
 魔力の方が使いやすいから、空力はサブになる予定だけどね。

「ギュラウゥゥッ!ギャァァォッ!!」
今度は、大きい土の塊をいくつも宙に飛ばし、私はそれを眉を折りながら観察した。

 なんだろう?爆発するとか?

「というか、未だ空力は当てられてない。これが歴戦の猛者たる龍……」
そんなことを言ってると、耳に刺さる音が聞こえる。

 なにっ?

 急いで音のした方を見ると、土の塊が割れて細かくなったものが全方向に飛散していた。

「そんな攻撃聞いてない!」
空力を固め、盾を作る。

 さっさと当てないとダメなのに、こんなところで足止め食らうなんて……

「あぁ!もう!魔力喰らい。」
飛散した土の塊を、魔力喰らいで全て食い尽くす。力を食い尽くす魔法なので、頑張って空力は避けた。

 接近戦でなんとかしよう。じゃないと、攻撃を当てられるビジョンが見えない。

「おっと、神速のある私に逃げられるとでも?」
土槍を出現させ、華麗な動きで飛び移って逃げる地龍を、神速で追いかける。

 速さで勝てると思わないことだね。

 刀を再度取り出し、ステッキと一緒に空力を纏わせる。

 両足で強く踏み込み、跳躍する。回転する土の塊を生み出す地龍に接近し、その瞬間に土の塊は刃を形成し、飛んでくる。

「効かないよ、そんなの。」
刀でキンッと1度弾くと、内側からヒビが入って無くなる。

 攻撃が全て効果的な私に対し、攻撃の全てが意味を成さない地龍。形勢逆転だ。

「ギュラァァァァァァッッ!!!」
前足で地面を叩くと、ドドドドドッと地面から鋭い槍が連なって出現する。

「当たったらひとたまりもないね……でも、当たらなければどうということはないのだよ。」
どこかで聞いたことのあるセリフを吐き、跳躍。槍の側面を足場に蹴り進む。

 私と地龍の差。残り10メートル弱。

「流星光槍!」
斜め打ちで光の槍を飛ばす。その間に、空力の壁を地龍の後ろに作っておく。

「ギャォォッ?」
何かにぶつかったみたいに、血流の体はそれ以上進まない。

「ギャォォォ……」
光槍が腹部に刺さり、眩い光を発して地龍を蝕む。

「チャンスっ!」
空気を両手に握られた武器に流し込み、斬撃と弾丸を撃ち放つ。

 空気を切り裂いていくような動きだけど、実態はないからね。誰が思いついたのかな?人神?

「ギュラオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!」
傷口は避け、力が逃げられないようなところに2発とも命中。苦痛に耐えきれず、地龍は轟音を発してのたうち回る。

 これで勝った……?

 スタッとかっこよく着地し、「ふぅー」と息をつく。

「はぁ……………結構疲れた。もう動きたくない。……魔力も回復させないと。」
瓶を取り出し、さっさと飲み干す。1本では足りる気配がないので、最後の1本も飲み切る。

 空力を使うには、結構神経を使う。体が重くなるし、無理矢理体を動かすと、その分負担も大きい。

 地龍は動き出しそうもないし、体を休めてから移動を開始することにする。

 神経すり減らしたなぁ……と思いながら、私は木のそばに腰掛けた。

———————————————————————

 地龍、案外あっけなかったですね。

ソラ「あっけない?こっちは死ぬほど疲れてるんですけど!?」


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