魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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5章 魔法少女と魔物襲来

148話 魔法少女と中ボス 2

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「グギュルゥゥゥゥッッ!!」
バックステップで後ろに避け、私の拳を躱そうとしている。

 そう簡単に躱せるとでも?

 魔導法で魔力を操作し、拳に纏っていた魔力を腕を振るって射出し、魔物が地面に足をついた瞬間を狙って当てる。

「……ゥゥッッッ!!!……」
腹部に直撃、苦悶の表情を浮かべるも、さすがはここでは地龍の次に強い魔物。簡単には倒れない。

 よく分からないけど、影が目元の部分を覆って見えない。仕様かな?

「おっと。」
そんな考えをしていると、反撃と言わんばかりに突進し、爪を突き立てる。その瞬間、私を真似たかのように詰め先から炎が飛び出た。

 ……っ!流石はボスクラスっ、これくらいじゃなきゃ張り合いがない!

 魔力喰らいで炎を吸収し、ことなきを得る。もう1度後退し、木の側面を足場にして蹴る。
 加速し、ステッキを構える。見定めるような目をし、弱点を探る。

 どっかに無い……?弱点は。これに勝たないと、集中できない。
 早くしないといけない気がする。

 。そんな気がしてならない。

「万属剣っ、アースアイス!」
地面が揺れ、尖った氷塊が地面から飛び出る。でも、相手は揺れに対して争いながら、氷塊を避けている。

 思ったより身体能力が高い?俊敏に振ってる感じ?それに炎で獣みたいな感じ……って、それ……

「鑑定眼。」
右の瞳が緑色に変化し、鑑定が発動する。

 狐人こじん
獣人の仲間。獣人とは能力の扱い方が違うが、狐人の中では低位のもので、会話は不能。体を自由に変化することが可能。
得意能力は炎。苦手なのは氷。

 って、ちゃっかり弱点突いてた。当たらなければ意味は無いけど。

「ディー!こいつ狐だよ、氷魔法使えない?」

「使えるかボケッ!」
「えぇ……」
「俺は剣士だ!」
そうは言うものの、後ろで様子を伺うしかしてないディーに軽く冷笑し、睨まれる。

 ここは私1人でやるしか無い。後ろには守らないといけない人はいないから、全力でいける。

「自分の身くらい、自分で守ってね。」
何か言われる前に、さっさと戦闘に戻る。

「トール!」
その場で、前のめりになってしゃがみ込み、地面に手を触れる。

 初めてだけど、使えるかな?ステッキからじゃないから、少し火力は劣るけど。

 手に触れた瞬間、雷が手の中で荒れ狂う。無理矢理それを押しとどめ、地面に流す。
 それを波のように動かし、広範囲に広げる!

「——————っ!!……っ!」
なんか後ろからギャーギャー聞こえるけど、脳が意味ある言葉として認識しない。

「成功っ、よしっ!」
そのまま片手で地面を蹴り、飛び上がる。

「グリュゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!」
動きを鈍らせながら、なんとか咆哮を捻り出すような感じだ。ダメージは与えられた、と一安心する。

 中ボスだ。私といい勝負ができてる。

 フッ、と息を吐く。

「神速っ!」
空中歩行と合わせ、空を超スピードで駆ける。その最中に刀を取り出し、接近と同時に刀を振るった。

「クギュゥッッ!」

「防がれた?」
ゆるりと挙げた爪が、ギンッという力強い音を鳴らせて刀の動きを止める。

 知能もそこそこ……普通の人間が太刀打ちできるような敵じゃないよね、これ。

「風?いや……魔力?何かが集まってるような……ッ!危ないっ!」
すぐさま刀を払い、神速で滑るように後ろに戻る。

 その瞬間、業火が狐人を覆った。

「ギュルオォォォォォォォォォォォ!!!」
一瞬自滅したのかと思うけど、業火はすぐに収まり、狐人の体のあちこちに炎が纏っていて、狐人の能力だと悟る。

 もたもたしてられないのにっ!

「炎上するなら鎮火もできる、エアリスリップ!」
魔力をごっそり奪われる感覚が襲ってくる。それを歯を食いしばって耐えながら、竜巻を発生させた。

 回復薬っ……はぁ、危ない。この辺の魔法は結構魔力を消費する。連発は避けないと。

 狐人の姿は次第に見えなくなり、影と水音と風の音しか聞こえない。

「ディー、回復薬取ってきて!足りない可能性があるから。」
今のうちに指示を出す。これは一応、休憩も兼ねている。

「は?戦闘役だぞ……」
「役に立ってないでしょ!早く!」

「お、おう……」
不機嫌そうな顔で後ろに走っていく。

「あ、持ってきたらまた向こう戻って、フェイルの護衛してきて!」
ついでにもう1つ頼み、前を向く。

「あぁ!もう分かった!言うとおりにすればいいんだろ!」
ヤケクソで答え、走っていく。私は私のやることがあるので、後ろ姿は見ていない。

 もう少し時間がかかりそう。戦闘中にも今感じてる違和感が何かを考えないと……

 脳を絞り、限界まで考えようとしたとき、竜巻が晴れる。

 晴れた時の風は、生温かった。

「ギュルゥゥゥゥォォォォォォォ!!!」
炎が更に熱くなり、走ってくる。

 は?さっきより早っ……!

 考えるより早く、狐人は爪を振り下ろす。

「うっ、威力高い。」
ギギギギギッと火花を散らしながら、鍔迫り合いをする。

「万属剣!」
この至近距離なら、と5つの剣を生み出して射出する。それは業火によって阻まれ、消された。

 何これ、さっきまではこんなに強くなかった…………確か、鑑定眼の表記には『能力の扱い方が違う』って書いてあった気が……

「人神魔力!身体激化!………………くっ。」
地面を踏み締め、思いっきり蹴る。

 私には火雷超耐性がある。そこに激化を加えれば、更に能力が跳ね上がるっ!

 スピードに身を委ね、拳を前に突き出す。それを爪で防ごうとするけど、流石に私のパンチには耐えられなかった。

 爪にヒビが入り、後退した。

「はぁ、はぁ、やっぱり、身体激化は体の負担がデカい……」
筋肉を無理矢理魔力で膨張させ、強くする技だから、めちゃくちゃ筋肉が痛い。

 例えるなら、フルマラソンした後に腹筋腕立てを100セットくらいした感じ。
 やったことないけど。

「でも、分かった。」
人神魔力で力の流れを読み取った。

 水竜之加護だと、地震に水竜の加護と、脈を感じることしかできない。普通に有能だけど。
 人神魔力なら、もっと詳しく、浅く広く分かる。

 多分、この力は人間が知るはずがない。水竜さんが教えてくれた、あの能力の改変版みたいなやつだ。

「その能力は———空力。違う?」

———————————————————————

 消化試合と言いましたが、あれは嘘です。皆さん騙されましたか?
 と言うことで、まだ中ボス戦は続きます。

 今まで直球だったのに、今章は謎が地味に入れ込んであります。最初から入れろって話ですね。
 はっはっはっ。もう取り替えしはつきません。

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