153 / 681
5章 魔法少女と魔物襲来
148話 魔法少女と中ボス 2
しおりを挟む「グギュルゥゥゥゥッッ!!」
バックステップで後ろに避け、私の拳を躱そうとしている。
そう簡単に躱せるとでも?
魔導法で魔力を操作し、拳に纏っていた魔力を腕を振るって射出し、魔物が地面に足をついた瞬間を狙って当てる。
「……ゥゥッッッ!!!……」
腹部に直撃、苦悶の表情を浮かべるも、さすがはここでは地龍の次に強い魔物。簡単には倒れない。
よく分からないけど、影が目元の部分を覆って見えない。仕様かな?
「おっと。」
そんな考えをしていると、反撃と言わんばかりに突進し、爪を突き立てる。その瞬間、私を真似たかのように詰め先から炎が飛び出た。
……っ!流石はボスクラスっ、これくらいじゃなきゃ張り合いがない!
魔力喰らいで炎を吸収し、ことなきを得る。もう1度後退し、木の側面を足場にして蹴る。
加速し、ステッキを構える。見定めるような目をし、弱点を探る。
どっかに無い……?弱点は。これに勝たないと、集中できない。
早くしないといけない気がする。
何か重大な見落としがあるような。そんな気がしてならない。
「万属剣っ、アースアイス!」
地面が揺れ、尖った氷塊が地面から飛び出る。でも、相手は揺れに対して争いながら、氷塊を避けている。
思ったより身体能力が高い?俊敏に振ってる感じ?それに炎で獣みたいな感じ……って、それ……
「鑑定眼。」
右の瞳が緑色に変化し、鑑定が発動する。
狐人
獣人の仲間。獣人とは能力の扱い方が違うが、狐人の中では低位のもので、会話は不能。体を自由に変化することが可能。
得意能力は炎。苦手なのは氷。
って、ちゃっかり弱点突いてた。当たらなければ意味は無いけど。
「ディー!こいつ狐だよ、氷魔法使えない?」
「使えるかボケッ!」
「えぇ……」
「俺は剣士だ!」
そうは言うものの、後ろで様子を伺うしかしてないディーに軽く冷笑し、睨まれる。
ここは私1人でやるしか無い。後ろには守らないといけない人はいないから、全力でいける。
「自分の身くらい、自分で守ってね。」
何か言われる前に、さっさと戦闘に戻る。
「トール!」
その場で、前のめりになってしゃがみ込み、地面に手を触れる。
初めてだけど、使えるかな?ステッキからじゃないから、少し火力は劣るけど。
手に触れた瞬間、雷が手の中で荒れ狂う。無理矢理それを押しとどめ、地面に流す。
それを波のように動かし、広範囲に広げる!
「——————っ!!……っ!」
なんか後ろからギャーギャー聞こえるけど、脳が意味ある言葉として認識しない。
「成功っ、よしっ!」
そのまま片手で地面を蹴り、飛び上がる。
「グリュゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!」
動きを鈍らせながら、なんとか咆哮を捻り出すような感じだ。ダメージは与えられた、と一安心する。
中ボスだ。私といい勝負ができてる。
フッ、と息を吐く。
「神速っ!」
空中歩行と合わせ、空を超スピードで駆ける。その最中に刀を取り出し、接近と同時に刀を振るった。
「クギュゥッッ!」
「防がれた?」
ゆるりと挙げた爪が、ギンッという力強い音を鳴らせて刀の動きを止める。
知能もそこそこ……普通の人間が太刀打ちできるような敵じゃないよね、これ。
「風?いや……魔力?何かが集まってるような……ッ!危ないっ!」
すぐさま刀を払い、神速で滑るように後ろに戻る。
その瞬間、業火が狐人を覆った。
「ギュルオォォォォォォォォォォォ!!!」
一瞬自滅したのかと思うけど、業火はすぐに収まり、狐人の体のあちこちに炎が纏っていて、狐人の能力だと悟る。
もたもたしてられないのにっ!
「炎上するなら鎮火もできる、エアリスリップ!」
魔力をごっそり奪われる感覚が襲ってくる。それを歯を食いしばって耐えながら、竜巻を発生させた。
回復薬っ……はぁ、危ない。この辺の魔法は結構魔力を消費する。連発は避けないと。
狐人の姿は次第に見えなくなり、影と水音と風の音しか聞こえない。
「ディー、回復薬取ってきて!足りない可能性があるから。」
今のうちに指示を出す。これは一応、休憩も兼ねている。
「は?戦闘役だぞ……」
「役に立ってないでしょ!早く!」
「お、おう……」
不機嫌そうな顔で後ろに走っていく。
「あ、持ってきたらまた向こう戻って、フェイルの護衛してきて!」
ついでにもう1つ頼み、前を向く。
「あぁ!もう分かった!言うとおりにすればいいんだろ!」
ヤケクソで答え、走っていく。私は私のやることがあるので、後ろ姿は見ていない。
もう少し時間がかかりそう。戦闘中にも今感じてる違和感が何かを考えないと……
脳を絞り、限界まで考えようとしたとき、竜巻が晴れる。
晴れた時の風は、生温かった。
「ギュルゥゥゥゥォォォォォォォ!!!」
炎が更に熱くなり、走ってくる。
は?さっきより早っ……!
考えるより早く、狐人は爪を振り下ろす。
「うっ、威力高い。」
ギギギギギッと火花を散らしながら、鍔迫り合いをする。
「万属剣!」
この至近距離なら、と5つの剣を生み出して射出する。それは業火によって阻まれ、消された。
何これ、さっきまではこんなに強くなかった…………確か、鑑定眼の表記には『能力の扱い方が違う』って書いてあった気が……
「人神魔力!身体激化!………………くっ。」
地面を踏み締め、思いっきり蹴る。
私には火雷超耐性がある。そこに激化を加えれば、更に能力が跳ね上がるっ!
スピードに身を委ね、拳を前に突き出す。それを爪で防ごうとするけど、流石に私のパンチには耐えられなかった。
爪にヒビが入り、後退した。
「はぁ、はぁ、やっぱり、身体激化は体の負担がデカい……」
筋肉を無理矢理魔力で膨張させ、強くする技だから、めちゃくちゃ筋肉が痛い。
例えるなら、フルマラソンした後に腹筋腕立てを100セットくらいした感じ。
やったことないけど。
「でも、分かった。」
人神魔力で力の流れを読み取った。
水竜之加護だと、地震に水竜の加護と、脈を感じることしかできない。普通に有能だけど。
人神魔力なら、もっと詳しく、浅く広く分かる。
多分、この力は人間が知るはずがない。水竜さんが教えてくれた、あの能力の改変版みたいなやつだ。
「その能力は———空力。違う?」
———————————————————————
消化試合と言いましたが、あれは嘘です。皆さん騙されましたか?
と言うことで、まだ中ボス戦は続きます。
今まで直球だったのに、今章は謎が地味に入れ込んであります。最初から入れろって話ですね。
はっはっはっ。もう取り替えしはつきません。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる