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5章 魔法少女と魔物襲来

146話 魔法少女は手伝う

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 核石を回収しながら歩く私は、やっぱりため息が出る。

 地龍のことは言わないほうがいいよね。余計な心配かけたって、精神的に滅入るだけだし。

「あっ、そ、ソラさん?か、帰ってきたんですねっ。」
少し嬉しそうに、あの時の魔法使いさんが手を振っていた。

 おー、ただいまー。

「タオルですかっ、回復薬ですか?それとも……わた………」
「おっとー、それ以上はダメだ。」
お口をそっと手で塞ぎ、笑顔の圧で止める。

「あっ、名前を教えていませんでしたねっ。私はフェイルですっ。」
塞がれた手をもろともせず、その腕に抱きついてきた。

 なっ……私の防御を掻い潜った?いくら10分の1の力も使ってないとはいえ、これが、愛の力……?

「フェイルね……じゃなくて、ただ疲れたからこっちを手伝いに来ただけ。」
「そうですか……」

 なにがそんなに悲しいのか分からないけど、強く生きて。

「おい、またサボりか?」
またディーが不遜な態度で言い放つ。

 くっ、うざい……なんて言い返してやろうか。

「私が来る度、ずっといるけど……何?そんなに暇なの?」
「ゔっ、黙っとけ。」
「はっ。」

 勝った。勝ちましたよ、勝っちまいましたぞ。
はっはっはっはっはっ!

 はぁ……なんて低俗な戦いなんだろう。

「手伝いに来たんだから、素直に手伝われとけばいいでしょ。はいはい、散った散った。」
手で払って、私も一緒に向かう。

 さてさて、こっち側はどんな感じなんでしょうね。視察してやろうかな?

 そんなうわついた気持ちを持って、こっちの戦場に入ってしまった私は、仰天した。

「なにこれ?掃き溜め?」
4人しかいない冒険者の中、3人がダウンしていて、魔物がどんどんと進行してきてきた。

「いや、悪い。嘘ついたのは謝る。だからその冷めた目はやめろ。」

「いや、うん。なんか、ごめん。こんなクソ雑魚どもと一緒に……ねぇ。」
ディーと一緒に武器を振り下ろし、魔物の首を刎ねた。

 うん、ディーはだいぶ強めの冒険者だと思う。流石に1発で魔物の首を切り落とせるのは強く無いとできない。

「いや、俺こそ助けを求めたほうがよかったな。お前の反応で分かった、やっぱりこの状況はやばいんだな。」
私とディー、初めて意見が合致した。

「わ、私に手伝えることは……?」
「フェイルは待機しといて。戦闘は私達でなんとかするから。」
これは忙しくなりそうだ、と思いながら持ち場に着く。

 戻ってきてよかったのか悪かったのか、全然分かんない。働きたく無いけど、このままだといつか崩れ落ちる。

「よし、やろう。」
「あぁ。」
ディーは剣を持ち、私はステッキと刀を握る。魔法を撃つから連携しようという旨を伝え、ディーを前衛に走り出す。

 ここは私が前でよかったと思うんだけどね。まぁどっちでもいいけど。

 ディーが目の前の魔物に一撃加え、跳躍。私がその隙に万属剣を打ち込み、トドメを刺す。
 そのまま前衛と後衛を入れ替え、刀を振り下ろした。魔物の残骸を蹴り、他の魔物に当てる。

 よろめいた魔物を、ディーがすかさず剣を刺す。

「案外いいコンビネーションだな。」
「不服だけどね。」
「不服を強めるな。」
ったく、と舌打ちながら剣を抜いた。

 なかなか強いのは間違いない。だけど私にとってはまだまだだね。
 え?チーターと比べちゃダメって?私チートなんて使って……使いまくってるね。

「あんまり離れすぎても魔物がバラつくだけだから、開けても隙間は10メートルでね。」
「へいへい。」
億劫そうに左手を挙げ、投げやりな感じで言う。

 なに?文句があれば言ったら?とは言えなかった。私だってめんどくさいし。

 出てくる魔物をステッキで殴りつけ、私はそのまま後ろに飛ばす。

「てめっ、いきなり投げんな……まだ処理してんだろうが!」
と、キレていた。

 仕方ないから、優しい私は後ろには投げずにパンチやキックで動きを止めておいた。
 その数瞬後に全員焼け焦げ、即死する。

「えげつねぇ……」
そんな声が聞こえた気がするけど、どうせ気のせいだろう。

 最近耳の調子が悪いんだよね、会話がうまく聞き取れない。老化かな?

 ぴちぴちの17歳なのになー。

「このくらいしないと、魔物は倒せないよ?」
刀に付いた血を払い、頬についた血も腕で拭く。その行為をしながら後ろを向いたため、サディステックな感じが満載だ。

 これを何度も繰り返した。
さて問題です。先にバテるのは誰でしょう?シンキングタイムはありません。ノータイムです。
 はいぶっぶっー。こんなの火を見るより明らかだよ。

「ディー、バテるの早く無い?」
「はぁ…はぁ…はぁっ……お前が、おかしい、だけだろうが……!」
さっきよりも勢いを落として、息をぜぇはぁ切らして腰を落としている。

 さっきより魔物の数が落ち着いたとは言え、数自体は減ってない。

「こっちには魔物が少なくなった。危険だと判断したんだと思うよ。はぁ、魔物も頭がいいものなんだね。」
「これどうぞ」とフェイルがタオルを差し出してくれたので、額を拭う。

 やっぱり私も疲れてる。いくら魔法少女服を着てようが、疲れるものは疲れる。

「この期に私も休もうかなっ、と。」
さっきの切り株に腰を下ろし、私は一息をつく。

 何でこんなことになってんだろうね。核石が原因なのかな?配置的に、絶対故意だと思うんだけど、証拠も無いしね。
 回収しようと思ったけど、ここも結構重症。

 あの人達を回復しても、意味ない。だったら、少しでも魔力を温存するのが得策だ。

「気配?」
休憩中でもお構いなしに、万能感知に強い魔力反応を見つけてしまうを

「どうしたんですか?ソラさん?」
少し慣れたのか、流暢になり始めた。声には心配の色が滲んでる。

「魔物の気配を感じて。ちょっとやばいのかもしれない。」

 魔力を温存したいって言ってからこれだよ。フラグ回収しちゃったよ、ちゃんと。

 そうだ、ここはディーに任せよう。そう思ってディーに回復薬をぶっかける。(かけても良し、飲んでも良しの回復薬だから問題はない)

「……っ!つっめてぇぇぇ!!何してんだお前!」
すごいキレられた。

「ディーに任せようと思って。」
「もっと別の方法があったろ。何でよりによって回復薬を頭からかけるんだよ。」
そんな文句は華麗に無視し、私は先に歩く。

「っ、先に行ったら元も子もねぇだろ。」
眉を寄せて立ち上がり、嫌々ながらも走り出す。

 ちゃんとやってくれる辺り、人は良いみたいだ。

「案内しないと戦えないでしょ?」
そう言って、私は振り向かずに歩いた。

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 ここからは消化試合的な感じです。残った魔物達を適当に吹き飛ばすだけの、簡単なお仕事ですよ?
 みなさんも働いてみましょう。

 お電話番号は……へぶっ
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