魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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5章 魔法少女と魔物襲来

138話 魔法少女はギルドに連行される

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 昨日はあのまま帰宅した。まぁまぁな時間になったから、エリーに謝ってから貰ったパンを齧った。

 以下がその後の一部のやり取りだ。

「エリー……明日起きられる自信ないから、起こして。」
「え、そんなこと言われても……」

「かかってるんだよ?」
「なにが?」
「いいの?かかってるんだよ?エリーに8割ぐらいかかってるんだよ!?」
「だからなにが!?」

「エリーに、この街の、大半が、かかってるんだよ!?」
「どうしてそうなるの?」
「いや、それは言えない。」

「急な冷静……」

「お願い!ほんと、明日めっちゃ大事なの。」
「はぁ……別にいいよ、ソラの頼みだしね。」

 これだ。

 これで私はなんの気兼ねもなく眠れるぅー!

 明日は、魔物討伐に極振りした依頼を半ば強制的に受けさせられる。

 ゆっくり眠れるっていうのは精神にいい。

 じゃあ、おやすみぃ…………zzz


 それから、翌日の朝。

「………………!………らー!……ソラー!時間だよ、自分で言ってたでしょ?」

「あぁ………ん……あと5分……」
「それ、起きないやつだよね?知ってるよ?」
エリーが私の布団を揺するが、起きたくとも起きられない。だって、眠いもの。

 あと3分、3分だけ………

  段々とゆする勢いが強くなってきて、エリーの怒りを感じ取る。私はすぐさま飛び起き、お礼をした。

「ほんっとありがとう!起きれる時と起きれない時の差が激しいから、今日ほんと危なかった……」
「大丈夫だから、これだけでも食べていって。」
歩きながらでも食べられるような、お手軽サンドイッチを渡してくれた。時間も時間だし、受け取って宿屋を出た。

 早くしないと遅れる……あんなシリアスな雰囲気なのに、遅刻でもしたらフィリオになんて言われるか分からない。

「奇跡的に宿屋からギルドが近くて助かったぁ……あ、美味しい。」
サンドイッチをはむりながらギルドに駆けた。それと同時に、新たな言葉が生まれた瞬間でもあった。

 はむりながらって、気の抜けるワードだね。

「って、今気が抜けたらダメじゃん。」
そんなこと言ってるうちに、いつの間にかギルドが見えてきた。

 遅れてないよね?大丈夫だよね?

 恐る恐るギルドの扉を開くと、何人かの貫禄のありそうな冒険者の方々と、数人の魔法使いらしき人が立っていた。

「……魔法使いか?領主様もどれだけ魔法使いを呼ぶんだ?」
「おい、お前知らないのか?あいつは〈非情のソラ〉という通り名がつくほどの冒険者だぞ!」
「声がデカい!気づかれたらヤられるぞ!」

「魔物を苦痛に沈めてから殺すのが趣味だって噂を、俺は聞いたことがある。」
「そんなにやばいのか、あの女……」

「は、話を変えよう。あと何人ぐらいだ?」

「あと数人じゃないのか?」
「時間になったら強制開始だろ。」
などなど、さまざまな会話が聞こえてくる。

 いや、ヤらないから。私はそんな悪辣非道な人間じゃないよ。

 っていうかなに?非情のソラってなに?文字だけでいうとかっこいいけどさ。
 苦痛に沈めてない!苦痛だろうけど普通に倒してるだけだよ!

 ほら、そんなこと言うからみんな、私を危ない人を見るような目で見てるよ。

「あ、ソラちゃん。久しぶりね。元気にしてた?」
お淑やかさと活発さを両方兼ね備えた不思議な声が、後ろから聞こえてくる。

「エリカ?」
「そうよ。……もしかして、忘れたとか言わないわよね?」

「忘れてないよ。」
苦笑して答える。

 実際、ちょっと忘れてた。しょうがないよね?最近ずっと会ってないんだし。

 この女の子はエリカ。スネイク討伐の時にお世話になった1人、もう1人はゼンって巨漢の人なんだけど……いないみたいだ。

 後の2人は、私がぶちのめしたってのは覚えてる。あれは爽快だったね。
 もう1回くらいやってみようかな?嘘だけど。

「ねぇ、ゼンはいないの?」
「それが、今回は私だけなの。領主様は魔法使いを集めてるらしくて、私だけに招待状が送られてきたの。」

「へぇ………」
確実に私のせいだ……と思いながら、目を逸らしておく。エリカは目を瞑って、「魔物3万匹となんて、いくら補助でも魔力が足りないわよ」と愚痴っていたので見えていない。

 確かに。
 水竜さんが言ってたけど、人間は魔法とは適合してないから、少量の魔力しか操れないって言ってた。3万の魔物相手なんだし、補助が追いつかないと思う。

 2人でそんな話をしていると、どこからか高らかな宣言が聞こえる。

「皆!遅れてすまない。僕が来たからにはもう安心だ!僕は神に選ばれた勇者!この聖剣《ファリス》がその事実を物語るッ!」
天に高々と剣を掲げ、そんなふうに叫ぶ。

 なにあの人……ん?魔力反応?

 私は人神の魔力が混じった魔力に変化した。そのため、いろいろ細かな仕様も変わったりしている。
 神にしか見えない目線というものなのか、そういうのも見えるようになっていた。

「神の反応?あの人転生者?多分エディレンが転生させて剣を持たせたんだろうけど……」
「どうしたの?」

「あっ、いや。あの人なんなんだろうって思って。」
「そうよね。なにが神なのかしら。」
笑っちゃうわ、とくすくす笑みをこぼす。

 エリカ、私もアレの上位互換だけど、同類なんだよ。

「でも、力としては本物だと思うよ。」
「え?ソラちゃんがそんなこと言うなんて……あの人の実力ってどれほど?」
その私への異常な信頼感をやめてほしいけど、もう遅いと知っているので諦めた。

 勇者ってのは嘘、実力的にはルリィと互角。剣術を極めればそれ以上の見込みがある。
 アレは完全に剣に頼り切ってる。肉体が追いついてないけど、そこは神様仕様。丈夫な作りだ。

「君たち魔法使いの子猫ちゃんを、ちゃんと守ってみせるよ。」
ウインクをしてくる。微妙に整った顔立ちから、ウザさが5割増しだ。

 魔法使いは女しかいない。モテようとしてる、こいつ。

「おい、集まったな。」
ギルマスが奥から歩いてきて、手を鳴らしパンパンと鳴らしながらこっちまで来た。その音を聞き、全員が静かになる。

「今回はこのメンバーでやってもらう。戦闘メンバーはわかっていると思うが……」
「もちろんぼk………」

「ソラ、お前が指揮を取れ。防衛の第一線は、お前に任せる。」

「え?「は?」」
私と転生者の声が被る。

「どうしてですか!?ここで1番の実力者は僕ですよね!?」

「なに言ってるんだ?お前は第二線の指揮を取ってもらう。いくらソラの後ろだからって、危険なことには変わりない。2に期待しているお前に、その役目を任せる。」
「そんな」という、肩を落とすような声が聞こえてくる。

 ざまぁ。

 流石に聞こえてしまったら可哀想なので、心で呟いてあげた。私ってば優しい。

———————————————————————

 また転生者が現れました。イキリ転生者に、ソラは心でほくそ笑んでます。

 聖剣程度でイキられてもwとか思ってます。
ソ「勝手な妄想やめて。」


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