魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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5章 魔法少女と魔物襲来

137話 魔法少女は説明を受ける

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 もうすぐ完全に陽が沈む。エリーのご飯も食べられていないため、お腹が空いた。

「悪いな、来てもらって。」
「悪いと思うなら早く言って?」
私はジトっとフィリオを睨む。

 あの後、フェロールさんに案内されて応接室みたいなところの椅子に座らされた。
 美味しそうな匂いのする紅茶を淹れられたけど、あんまり飲む気になれない。

「言ったら言ったで怒りそうだがな。」
苦笑いをして、1度咳払いを挟む。

 なに?最初から不安にさせないでよ。

「まぁ簡単にまとめるとだな、大量の魔物が迫ってきている。」

「は?「えっ?」」
私とネルの声が重なり、目が丸くなる。どういうことかと問い詰めようとすると、「待て待て」とフィリオに止められる。

「水の都、ティランで、水竜が現れるという事件があった。ある少女2人が討伐を成功させ、そのうちの1人は精霊術師。もう1人は、青髪のフードを被った少女だったとか。」

「………な、なんのことかなぁ?」
「え?俺はお前のことだなんて一言も言ってないんだがなぁ。自覚があるようで何よりだ。」
「ちょっ、騙した!?」

 酷い!酷すぎる!?フィリオに嵌められた……

「ソラさん!?す、す、すっ、水竜を倒したんですか!?」
「そこ、驚かなくていいから。」
そろそろ反応するのに疲れたので、一旦冷静になる。

「それで、続きは?」
「そう急かすな。」
紅茶を1口飲み、喉の渇きを潤していた。呑気なことだなぁ、と思った。

「水竜の魔力に寄せられ、魔物が多く発生した。森の奥から、強力な魔物たちが現れた所為で移動も困難となっているらしい。」

「交通手段絶たれてるのに、どうやって得たの?その情報。」

「核石からの通信だ。」
ここもずいぶん便利な世界だな、と思う今日この頃。

 やっぱり魔法っていうのは偉大なんだね。それだけで科学と肩を並べるとは……魔法って……末恐ろしいね。

「話を戻すぞ。その魔物が、この街に侵攻してきているらしい。その防衛に、幾らかの有力な冒険者を呼んでいる。」

「で、そこで私の出番と?」
「そういうことだ。」

 魔法少女使いが荒いね。魔法少女はそんな簡単には動かないよ?
 それなりの報酬が……

「勿論、働き具合に見合った報酬の各自に用意する。」
「やります。」

「現金!?」
「何言ってるのネル?私はお金じゃないよ。」
「知ってますよそんなこと!」
何かワーワー聞こえるけど、頑張った分ご褒美が貰えるっていうのはやる気が出る。

 死ぬほど頑張って金を搾り取ってやろう。

 くっくっくっ、と陰でニヤリと笑う。

「ソラさん、顔に出てますよ。」
「あ、そう?」

 バレてた。

「話を最後まで聞け。」
呆れたように私を見つめ、ため息を吐く。

 なに?別に私何にもしてないじゃん。ただ、提案に乗っただけじゃん。問題ないでしょ。

「道中で数は減ったとはいえ、数千の規模じゃない。観測できる限りでは、魔物の群れが3万ほどいるらしい。その中のボスが、竜という噂もある。」

「竜?」
「あぁ。だから経験のあるお前にやってもらいたい。交易の件でも、あの村が侵攻対象に入る可能性もある。なんとかしなければならない。」
それでも、頼まれてくれるか?と、試すような視線を向けられる。

 そんなこと言われても……3万なんて想像もつかない数字、魔力問題もあるし……

「少量だが、回復系や補助系の魔法使いも用意した。核石から抽出した、回復薬も作った。」

「なら魔力問題は解決かな……?」
小声で聞こえないように呟く。顎に指を添え、考える。

 マイホーム計画もあるから、ある程度の貯金は欲しい。今でも買える金額は持ってるけど、それで使い果たしたら意味が無い。

 3万なんて数が侵攻してくるんでしょ、それならめんどくさいなんて言ってられない。この街が、あの村が、ロア達が死んじゃうかもしれない。
 それなのに、力を持つ私が行動を起こさないっていうのは違うと思う。

「別にいいよ。やるよ。っていうか、これ拒否権無くない?」
「よく気づいたな。」

「勝てない戦に挑まされてたわけね……」
フィリオの策にまんまと引っかかった私は、元からやることは決められていたようだ。

「今回の魔物達は、知能を持つと言われている。気を引き締めて挑んでくれ。危険と思ったら、すぐに退いて構わない。避難はできるようにしている。身の安全が一番だ。」
街なら、復興すればいいだけだしな、と自分の街よりも市民を優先している。

 フィリオはいい領主だね。

 確かに、死人は生き返らせることはできないけど、街なら復興は可能。大事な市民を守るのは、領主の役目なんだろうけど、ここまでする人はなかなかいない気がする。

「作戦だが、できるだけ防衛に徹してくれ。魔物の動きを錯乱させ、後ろからティランの冒険者で叩く。挟み撃ちにしていれば、圧倒的な力の差が無ければなんとかなる。」
話すだけ話し、一気に紅茶を煽る。

「いきなりですまないが、明日早朝、冒険者ギルドでメンバーを集める。その後に配置についてくれ。」

「はいはい。やりますよ、やったりますよ。」
その代わり報酬は弾んでよ、とも言いたかったけど、お金にがめつすぎるとは思われたくない。特にネルに。だから、いい止まる。

 もしも、この話がなかったとしても私は私で動いてたと思う。
 3万だろうが、30万だろうが、ロア達のために頑張っていた。

 その結果が死でも、何か役に立てたなら本望だよ。

 死んだとして、転生もできなかったら……そこは責任持って天国に連れてって欲しい。

 そして、生まれ変わる先はこの街がいい。ただの平民でいい。力も無くていい。

 私は、この街が好きだ。

 それが、私の守る理由。それだけで十分だ。

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 久々のソラの真面目回が見れました。フィリオの話は、大体章の名前でバレバレですね。







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