魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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5章 魔法少女と魔物襲来

133話 魔法少女は問い詰められる

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「エリー、おかわりー。」

「今日はよく食べるね、ソラ。」
「まぁねぇ。」
モグモグとシチュー的な、それよりもう少しあっさりしたスープにパンを浸しながら返事をする。

 魔力を使い過ぎると、何故かお腹が空く。昨日の朝は全然食べてなかったし、今日で一気に食欲が湧いてきた。

 3回目のおかわり。そろそろやめておこうかな。このままじゃ太る気しかしないから、散歩にでも行こう。
 テレスさんにスペアステッキの使い心地を聞きたいしね。

「これ食べ終わったら出かけるから、半日くらい宿には戻ってこれないと思う。」

「唐突……でも、ソラらしいね。分かった、楽しんできて。」
食器を素早く洗いながら、私と喋るという器用なことをしている。凄い。

「じゃ、またね。」
「またねって、半日でしょ?」

「まぁいいじゃん。」
手を振って宿を出る。笑顔も忘れずにね。

 水の都から帰ってきて翌日、あんな事件?があったとは思えない軽さで、散歩を始めた。

 誕生会を終え、すぐに戻ってくる。そして人神の祠に入って、色々知らされて、ぶっ壊れて。今ここにいる。

 たった2日程度。誰も私がいないことに気づかなかった……はずだった。

 私が歩いていると、私の行き先を把握しているかのように見知った少女が立っていた。

 お淑やかそうだけど、少し気の強そうな女の子。髪の毛は青っぽい、可愛い女の子。

 ネルだ。

 私がカフェにでも顔を出そうと、少し遠回りをして歩いていた。そんな私の性格を読むように、道に立っていた。

 さすがにボディーガード的な、お付きの人はいるみたい。
 いなかったら誘拐されちゃう。身代金とか、そんな感じで。

 その場合、私に依頼が来そうなのは杞憂では無いと思う。

「ソラさん!いつの間に帰ってきていたのですか!」

「げっ、ほんとにネルだ。」
「げっ、ってなんですか、げって。」

「いや、空耳じゃない?」
「……まぁいいです」とフッ、と息を吐く。

  ちょっと聞きたいんだけど、なんで私が帰ってきてから、またどっか行ったこと、知ってるの?

「一昨日の昼に、お父様から伝言を受けて宿屋に行っても、ソラさんはいないと言われてしまったんですよ。ロアはいるのに、一体どこに行ってたんですか!?」
頬を膨らませて、可愛く怒る。

 全く怖く無い。可愛い。

「ちょっと、ね?冒険者してて。」

「嘘ですね。ソラさんはそんな面倒なことはしません。疲れた翌日は、だらけています。」
「ゔっ……」

 何この子、怖いっ!なんで私の生活リズムまで把握してるの。冒険者業なんてめんどくさくてあんまりしたく無いってこと、なんで知ってるの?

 観察眼?これも貴族観察眼の力なの?

「お父様から少々急な伝言が入ったので、ソラさんにお伝えしたかったのに、肝心のソラさんがいなくてどうするんですか。」

「いや、その、そうだ。人には人の自由ってものがあるんだからさ、詮索は無しってことで……」
「そうだ。って口に出てますよ。」
「あ、口が滑った」と、小声で呟きながら口を両手で塞ぐ。

 この子、ほんと凄い。流石領主の娘。フィリオの教育の賜物かどうかは知らないけど、いい教育してる。

「えっと、カフェにでも行かない?私もカフェに用事があるし、ね。行こう?」

「はい、行きますっ!って、話を逸らそうとしてません?」
「してないしてない。ゆっくり話そう。話せば分かる。」
情熱的な刑事が、立て籠りしてる犯人に言うセリフ(そんなのあるか知らないけど)みたいなので誤魔化す。

 顔が引き攣ってた気がするけど、気のせい。うん。気のせいでしょう。

「一応許可ももらいましたし、早く行きましょう。」
「うん。」
しっかりしてるけど、こういうところはまだ子供だから、ひっかけやすい。

 私は悪い大人だ。え?そもそも私は大人じゃない?うるさい。誰がなんと言おうと、私は大人だ。

 そんなどうでもいいことを考えてると、いつの間にかカフェについている。

 ギルマスの娘ことティリーに案内され、星テーブルに座る。

「何頼みます?」

「私はクリームソーダかな。」
「どれだけ頼むんですか、胃の中泡だらけになりますよ。」
何それ、とツッコみたくなるけど、あえてスルーしておく。決してめんどくさいとかではないと、先に言っておく。

 そして奢らされそうになってる。ま、ここは大人の役目ということで、お金くらい支払いますよ。

「ネルは何頼むの?貴族様だから、やっぱり紅茶?」

「ソラさん、私は領主の娘ですが、私は全く偉くありません。多少の融通は効きますが、私は平民と変わりありません。」
一旦私のクリームソーダと、リンの実のジュースを頼む。

 嘘だよね。平民と同じとか、絶対嘘だよね?

「ネルはフィリオの娘なんだから、守られるべき人間だよ。その血を引いたネルは、今だって(まだ子供っぽいけど)しっかりしてるし。」
本音は隠して言う。そこの部分は、隠して煽ててあげよう。

 今から煽てられる気分を味わっておこう。その経験は、役に立つかもしれない。
 煽てられて調子に乗って、やらかしちゃったら危ないしね。うん。そういうこと。

「ですが、私もまだまだ半人前。お父様のように、思考し、判断し、決断する力がありません。」
「お、おぉ……」
なんだか難しい言葉を使うネルに嘆息を漏らし、ついでに言葉も漏れる。

 なんかかっこいい。将来、ネルなら領主を任せられそう。
 その場合の結婚相手は、私も見させてもらうけど。

 小姑役を演じさせてもらうよ。ネチネチは言わない。ネルに嫌われそうだし。

「って、だから違いますって!一昨日、何をしていたって話でしたよね!」
また声を張って、眉を逆ハの字に歪める。

 くっ、忘れてなかったか。ならば、次の手段。

「はいはい、さっきも言った通り冒険に出てたんですよー。」
適当にはぐらかして、頭をわしゃわしゃする。

 これ、普通に捕まりそう。フィリオの信頼勝ち取れて、ほんとよかった。

 空色スカイブルーの瞳が開かれ、でも心地良さそうにする。

「可愛いねー。ほーら、よしよし。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
気持ちよさそうに笑い、いくらか経ってジュースを飲み終えたネルは、「また今度」と手を振っていた。

 よし、ミッションコンプリート。話を完全に逸らすことに成功した!
 いやー、私の会話術を舐めてはいけないよ。

 クリームソーダのアイスをスプーンで掬いながら、今回の成功に耽る。

「あ、私の用事も忘れかけてた。」

 ま、いっか。それはこれを飲み終わってからで。

———————————————————————

 今回はネルとのまったり回です。スペアステッキについてはあと少しだけ先です。







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