魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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4章 魔法少女と人神の祠

132話 魔法少女はそろそろ帰る

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 宿屋にて。

 ドンドン、ガンガン、シュッ、ガタガタガタガタ、そろそろ起きてくれ、時間がねぇんだよ!

「…………………………………………………………」
私は不機嫌そうな顔を隠さず、ベッドに横たわっていた。

 あぁぁぁ、うるさい。本当に本当に、うるさい。ほら、今何時だと思う?

 感覚にはなるけど、深夜の3時くらい。

 早いわボケ。あ、口が滑った。

「おい!そろそろ起きろ———」

 ここで、私の何かがプツッっと切れた。

「あぁ!ほんッッッとうるさい!ちょっと怒りに行こう。そうしよう。」
私は布団をかなぐり捨て、扉をドンッと音が鳴るほど勢いよく開けた。

「うるっさぁぁぁぁぁぁ、い……?」

 一時停止。

 なんでここで、疑問形になるかを順を追って説明したい。うん、私が理解するためにも。

 私が、思いっきり扉を開ける。すると目の前には、何やら見覚えのある男性方が。確か名前はディッシュとベルクこと、弱2人組。

「え、ソr……」
ガチャン。ゆっくりと扉を閉めた。

「おい!開けろ、なんでここにお前がいる!」
ゴンゴンと叩かれる。見間違い。そう、見間違いのはずだ。

 うん、ここにあの人達がいるわけない。うん、もう1度開けてみよう。

 そう思って、私はゆっくり扉を開く。

「……………………」
「「…………………」」
目が、バッチリと合う。

 間違いじゃなかった……現実だった。

 悲しい現実を噛み締めながら、そぉーっと扉を閉めていた。

「もぉーうるさいなぁ~。せっかく寝てたのに、起きちゃったじゃん。」

「起きちゃったじゃん、じゃねぇ。もうそろそろ依頼に行かないと、目的の魔物を見つけらんねぇぞ。」
「そうだ。リーダーの自覚を持ってほしい。」
うるさいは私のセリフだ、と言いたいけど……厄介ごとは避けたい。ここで完全に扉を閉めた………

「あ、ソラちゃんじゃん。」
寝起きだからか、留められてすらいないボサボサになった橙色の髪の毛を振りながら、扉の隙間に足を忍ばせた。

 行動が早い!なんでそんな的確に突いてこれるの?これが単体でランクAを超える精霊術師の力……?

「え、あ、ん?そ、ソラって誰?たたたっ、他人の空似ってやつじゃない?」

「ソラだけに?」
「違うっ!」
扉を閉めたくとも、ルリィが邪魔して閉じれない。

 くそっ!くそっ!どうやってこの状況を打破すれば……!

「ソラじゃん。帰ったんじゃなかったっけ?」
寝起きなのに、なぜか凄く頭が回ってるルリィに驚きながらも、諦めた。

 っていうか眠い。寝たい。どうでもいいから、安眠したい。

「あー、忘れ物をして?」
「ふーん。で、本当は?」

 ダメだ、逃げられないやつだ。

「ほんとにただの野暮用だから、気にしないで。」

「気にするなって言われてもな。どうやったらこんなスピードで行き来できんだ?」
ディッシュが久々に口を開く。

 まだいたんだ、この2人。もうとっくにギルドに行ったのかと。
 あ、依頼か。

「ほ、ほら?3人とも、今日は用事があるんじゃない?早く行ってきなよ。」
3人とも訝しげな視線を送ってくる。

 いや、怪しいことなんてナニモナイヨ。これ本当。

「ほんとー?まぁいいや。ルリィももう少し寝てたかったしぃー。」
「お前はもう寝るな!」
「痛い痛いー」と、ルリィが引っ張られていく。

「頑張れー。」
適当に声援を送る。

 はぁ~あ、眠い。早く寝よう。


 布団に潜った後は簡単だった。ドタバタは聞こえなかったから、ルリィ達が気を遣ってくれたんだろう。
 すぐに寝られて、このとおり。私は元気いっぱいの私に回復した。

 魔力は全快じゃないけど。

 そろそろ帰らないといけないわけで、今日はティランでの最後の食事となるわけだ。

「ん、パン柔らかい。」
思わず感想が漏れる。

 今日の朝ごはんはこんな感じ。パンに魚介系のスープ、煮物みたいなのだ。

 パンはふわふわで柔らかい。スープに浸すのが、もったいないくらいだよ。

 パンを食べてスープを飲んで、たまに煮物をつまみながら、パン、スープをループする。

 ご飯を食べ終わり、宿屋を出る。今日が最後だから、観光する……ことはない。もう十分だ。潮の匂いも嗅ぎ慣れた。

「う~~ん゛っ、そろそろ帰りますか。」
空に向かって大きく伸びをし、私は門の方に歩き出す。

 いつものように冒険者カードを渡し、いつものように森に入る。

「神速のが楽だけど、魔力が続かないんだよね。」
バイクをそっと出して呟く。

「それじゃ、出発進行!」
ブルルルルルッ、というようなエンジン音はもちろん聞こえず、馬車を超えるスピードで動く。

 低魔力でここまでのスピードが出せるって、効率のいい乗り物だね。

 馬車が近くに来たら、驚かせないように横道を通る。魔物がいたら、めんどくさいから避けて通る。

 そうしているうちに、夕方近くになっていた。街が近くに見え、バイクから降りる。ぶっ通しで走ったから、水しか飲んでない。

「色々あったね、ほんとに。」
夕焼けに照らされるパズールの街を見上げ、懐かしむように見る。

 ほぼ1日しか経ってないのに、こんなに懐かしい気分になるのはなんでだろう?

 明日からも、またいろんなことがあるんだろうなと想像し、頬が緩む。

「まず今日は、エリーのご飯を食べてぐっすり眠ろう。細かいことは後からだ。」
ゆっくりと、橙に染まる外壁を見ながら入り口を目指した。

 やっぱり、異世界はいいね。

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 今回はただただ帰る回なので、ふんわりしてました。それにしても、ルリィ達があの宿に泊まってるなんて、驚きですね。







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