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4章 魔法少女と人神の祠
123話 魔法少女と人神
しおりを挟む「ここが最後の面だといいけど……まぁ、あそこまであからさまなんだしね。」
今まで何人の人を殺してきたんだろう……?1人、2人?0人ってことはないと思うけど、何人か殺して、1人くらい逃したってとこかな。
「神様ー。見てるー?今から行くけど、用意しておいてね。ぶっ飛ばされる用意だけしてくれれば、思いっきりボディーブローするから。」
そう言って肩を回しながら足を運ぶ。力強く踏み込み、ニヤリと笑みが溢れる。
神様はどうせ私より強い、毛頭勝つつもりは無いけど、私だってタダで負けるつもりは無い。
1発食らわせて、いい思い出にして帰ろう。負けっていうのもいい経験だからね。
オンラインゲームだって、負けることは何度もあった。というか、初めの方は負け続きだった。
「そんなことはどうでもいい。神様に、ほんの少しでもダメージを与えられればそれで満足だし、質問とか出来たらすることはもう無い。」
————————————
———一方その頃、神の間では———
「なんなんだよ、この娘。なんで余の隠れ家にいるんだ?」
1人の少年が、頭をガシガシと掻きながらある少女の映像を見つめる。
彼の名はエディレン=メヴィス。一部の者から《人神》の名で恐れられている、人の神。
エディレンは他の神のように信仰されたり、崇められるのが好きではない。
故に、この辺境の地の海底に身を隠した。隠したと言っても、魔法は得意というわけでは無い。実を言うと面倒くさいから軽く魔力を流して終えた。
実際、それで隠れ家を1000年近く隠し通すことが出来た。
「どうして……?この入口を進むためにはあの子を倒さないといけないのに、余の守護者が破られた?」
訝しげな様子で少女を眺めるエディレンは、忙しそうに眼を働かせる。
過去、ここと繋がるあの神殿は地上にあった。だが、大量の人間が押し寄せたことにより海底に移した。
「どうやって余の隠れ家を攻略したんだ?」
エディレンは、絶対人間が侵入出来ないよう設計した。
過去、自身の庭園に闖入者が現れ、荒らされてしまった事があったため、守護者を設置した。
それすらも突破されたことに、戸惑いを隠せない。
「なんでこの娘は、余のティーカップを使って余の紅茶を飲んでたんだ?余のお気に入りなのだが…」
その幼い姿から、今のしゅんとしたエディレンを見て神と思うものはいないだろう。
「……この目鼻立ち、異世界者?でも余の反応には……あぁ、この娘から目を離したら何が起きるか分からないし……うぅ。」
少女は今も尚歩く足をやめない。魔力の消耗を感じさせない事から、エディレンが作った疲労回復の温泉に浸かったのだと予想がつく。
「逃げようかな?余が一娘のためにここにとどまる必要は無いし。」
その幼い体では考えられないスピードで荷造りを始める。
1000年経ち、ここの魔力はすっかり濃くなってしまった。
元はとても薄く、魔物なんて生息していなかったこの海も、今ではうじゃうじゃと存在する。
漁船を襲う者もいて、仕方ないからと居を移そうとしていた。
魔力が濃すぎて、とうとう水竜すら流れ着くほどになってしまっては、いくら怠惰な人神といえど退かずえない。
「ダメだ、どうやってもあの娘には勘付かれそうだ。余の逃げ道は無いのか……」
荷造りした物を放り投げ、画面を食い入るように見る。
自身の隠れ家を発見し、突破しただけでなく守護者を撃破した少女に、多少の戸惑いはあれど興味を持っているのもまた事実。
「もう余の元まで来てしまう……それなりの態度でもとった方がよいのか?」
顎に指を添え、考えるように呟いた。
彼は能天気な神。他者と関わらない事で、自然と会話の頻度も減ってしまう。
力としては絶大だが、他者との接触が全くの雑魚である。
誰かと共に何かを成したり、何かをするなどもっての外。
そんな中、実に1000年ぶりの会話の瞬間が来てしまうのである。
「何か神らしいことを……何かいい台詞などは……そうだ、余が転生させた人間たちの記憶からいい物を引き出そう。」
もう1つ、この隠れ家の元になっているのは転生者たちの記憶から発想を得た物だ。
「余は人の神、人神。名をエディレン=メヴィスという。余に恐れ、慄き、そして後悔するといい。」
完全な魔王である。
————————————
———その時ソラは、人神の戸惑いなど露知らず、「よっしゃー」と意気込んでいた———
「人神ってどんな感じなんだろう。手紙の感じを見ると、軽そうな神が想像出来るけど。」
あとはもう歩くだけなので、神様について軽く考えてみることにする。
辺りは真っ暗、道は一本道。することが本当に無いから、そんなことで気を紛らわせるしかないんだよ。
「戦う前に簡単に魔法の確認程度はしよう。」
レイタースタートもあるし、セットしておいて損は無い。
「レイタースタートの利点って、先に魔法の元を作って置いとけるってところだよね。めっちゃ便利。」
一応刀を腰に挿し、ステッキと二刀流出来る様にしておいた。理由はかっこいいからだ。
神様相手にふざけてたら、本当に殺されかねない。自分で転生させたんだから、そんなことないと信じたいけど無いとは言い切れないしね。
私の武器はこのステッキ、刀、ミョルスカイ。そして服と上着だ。
本気の本気で挑むんだったら、覚醒も使う気でいる。
「スキルの効果確認とかもしておいた方が、後で迷わずに済む。あと他にやることー……」
無さそうなので口を閉じる。
折角だし、神様に一言セリフを言って挑みたいね。
なんだろう、こう、いい感じに。
ん?ちゃんと説明しろって?じゃあ君、今日の朝ごはんの食べ方を教えてみて。無理でしょ?
そう言うことじゃないって?うるさい。
「私はあなたに転生させられた魔法少女。私をこんな格好にして転生させたこと、詫びてもらうよ!」
よし、こんな感じでいいよね。
———————————————————————
微妙に噛み合ってない2人、そして似た物同士でもある。
考えが少し似てますね、さすが人の神。人間の考えをよく知っている。
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