魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
126 / 681
4章 魔法少女と人神の祠

122話 魔法少女は変人と会う

しおりを挟む

 ———日本には、天国と地獄という概念がある。なんでそんな変な言い方なのかは、単に事実である証拠が無いから。
 神や天使、悪魔の概念もあり、色々な生命体を人々は想像により生み出していった。
 いつしか人は、自分で作ったその想像上のキャラクターを崇めるようになる。———

 私はこんな考えをしていた。別にこれを意識しているわけじゃないけど、ほわわんと、そう考えている。

 でも、異世界に転生し、神様の力に触れて考えは変わる。

 少し飛ばして今の状態を見よう。

 というか、なんでこんな真面目な感じに始めたかというと、さっきも言った通り今の状況を見てほしい。

 あら、綺麗な花園。紅茶でも飲みたい。
 あらあら、神秘的な神殿。壮大そうだね。
 あらあらあら、危険そうな生物。逃げたい。

 何を言ってるか分からないって、うん。私も分からない。
 言ってる事も分からないけど、これじゃ理由も分からないって?そんなの現実逃避のために決まってるでしょ!

 あんな考え適当だよ!机上きじょうの空論だよ!

 さっきも例えたけど、天使と悪魔を足して神で割った感じ。

 黒い翼だけど、天使のようにふさふさ。黄色のツノに、紅めの尻尾。
 神みたいなオーラを放ちながら、武器は鎌。禍々しい。

 俺の最強キャラ(厨二病オンリー)とかに出てきそうな殺伐な感じ。

「厨二病って、悪魔の方強くしがちだよね。知らないけど。」
感情の篭ってない、目に光が無い。

 ……ちょっと見てるだけで臓器をかき乱してくるような、そんな不愉快な気分になるね。
 オーラが強い……

「守護します。守護します。守護します。守護します。守護します……………」
同じ言葉を繰り返し、女性のような声で悠然な態度をとる。
 
 姿で分からなかったけど、女の人……なの?

「チョットワカラナイナー。」
私も真似して、落ち着いたカタコトを放つ。

 そうじゃないって?私だって、こうなるとは思ってなかったんだよ!私だって、私だって……

 私の超絶完璧演技に、全米が泣いたところで戦いましょうか。
 ここまで時間を結構使ったし、こんなところでごちゃ混ぜ変人(にも慣れなかった生命体)に時間を食われるわけにはいけない!

 まじまじと鎌女を見てみると、今まで脳が見ることを拒否していたものが見えるようになる。

 この鎌女、見る人全員が視認するのを拒否するようになっている。
 私にはその力は効かないけど。

「それが、どうしたって話だけどね。」
私と同じようにフードを深く被った鎌女は、私を見定めるような視線を向ける。

「常識を逸脱しています。守護します。守護します。守護します。……………」
同じことを淡々と繰り返し、感情の抑揚が掴めない。

 一歩、一歩、鎌女は近づいてくる。カシャン、カシャン、と鎌を引きずる不気味な音が鳴る。

「私、怪しくない。私、安心安全神様印の魔法少女。私、襲っても何も出ない。」
神殿は膜に覆われていて外に出れそうもない。入る専用だったみたいだ。

 一歩下がるたび、一歩近づかれる。より大きい歩幅で。

「あのー、この人ヤっちゃっていい?言っておくけど正当防衛だからね!?」

「守護します。守護します。守護します。………」

 いつまでそんなこと言ってるの?ちょっと、静かにしてくれない?

 魔法動力で見た感じ、この鎌女は暗殺に特化してるみたいだ。

「こんな風にねっ!……ッ!」
ステッキから刀を取り出し、逆手で持って後ろからの鎌を防ぐ。

 突然後ろに出現して、一瞬にして消える。これがこの鎌女の能力だと思う。
 分かった理由?体に流れる魔力が薄過ぎる。あんなんじゃ、私のパンチで簡単に崩れちゃう程弱い。

 こんな守り神みたいなのが、弱過ぎるなんておかしいから、暗殺系だと思っただけ。

「私だって直前にしか分からない。威力も凄いから、防ぎ切るのがやっと。……どう一撃を入れよう。」
防御力が低過ぎるが故の一撃必殺、攻撃力が高過ぎるが故の一撃必殺、2つの一撃が交差する。

 ギィィンッ!………ギィィンッ!ギンッ!ギィィィィィッ…………ガギィンッ!

 刀と鎌が何度もぶつかり合う。私が振り向けば、そこには鎌女がいる。
 鎌女が鎌を振るえば、背後に回られる。

 少し広い神殿の中は、もう闘技場のようになっている。

「このままじゃ埒が開かない!一旦戦略的撤退。」
鎌をギィンッ!と弾き、その勢いで後退する。

 さっきから戦闘続きで、魔力はあっても精神力が保たない。
 戦いで使うのは、魔力と体力だけじゃないんだから。精神面のケアも必要よ、戦闘では。

「守護します。守護します。守護しまぁ、、、…」
「うるさぁい!なんか言えば気がすむの、その言葉!要らないから!1回言えば分かるから!黙ってて!」

 戦闘続きのストレスは、こんな感じで発散しよう。私の場合は独自合金を投げつけたよ。

「守護、し、ま、……す。……………………」
機械が壊れるかのように、プシューと音が鳴り、膝から崩れ落ちる。

「・・・へ?」
そんな情けない声が大きく漏れ、目が点になってパチクリと瞬きする。

 ………………………………え、待て待て待て待て待て待てーい!なんでやねん!いや、なんでやねん!

 エセ関西弁である。

「え?は?ん?」
いきなり鎌女が倒れたことで、戸惑いを隠せない。

「……あ、投げた。当たった……」
そこで私は、鎌女の脆さと合金が当たったことを思い出す。

「……納得できない。手応えがなさ過ぎるよ。折角いい感じの戦いだったのに、私のストレス発散攻撃に当たって、倒れるなんて。」

 というか、本当にこの鎌女が人を襲ってたの?……いや、普通に襲えるだけの力はあったね。あの攻撃力なら、私でも当たったら血がプシャーするよ。

 この世界で、ほとんど血が出たことの無い私が保証する。

 この状況に呆然と立ち尽くすこと約5分。戦闘時間を含めれば10分も経っていない。

 こんな短い間に、意味不明なことが何回も起こるあたり、神様パワーを感じる。

「うわっ……え、キモっ。」
顔から不愉快な気持ちがダダ漏れる。「JKに言われたら傷つく言葉」暫定1位、の言葉がつい出てくる。

 仕方ないから描写すると、鎌女がドロドロに溶けて魔力塊になって、形がぐにゃぐにゃ変形して空間を切り取ったような通路を作っていく。

「これだから描写したく無かったのに……頭の中に、記憶が戻ってきて……」
顔色が少し悪くなった。

 そして私は思った。
 これ、絶対蘇生される系のキャラだ。

———————————————————————

 はい、次もまた戦闘です。戦闘続きで参っちゃいますね。
 それはそれで尺が稼げるので問題ありませんが、敵が多い問題が発生してます。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...