125 / 681
4章 魔法少女と人神の祠
121話 魔法少女は再認識する
しおりを挟む「あ゛ぁ~~、極楽ー。」
アニメとかだったら、かっぽーんっみたいな効果音が鳴りそうだなぁ、と思いながら目を細めて温泉に浸かる。
こんな変なところにある温泉に、変な魔法少女が警戒心0で入ってるって……
「側から見たらどう思われるんだろうね。まっ、気持ちいいんだから大丈夫だ。」
逆にここで私が負けることはまず無い。理由?レールガンをいくらでも撃てからに決まってるじゃん。
「手袋はめて、ミョルスカイを持って、このままドーン、と。」
やることは無い、というのは言うまでもないことだ。
うん、やっぱり強行突破が最強だ。理不尽には理不尽が効果的ってことが、よく分かったね。
あ゛~~きもちぃ………
「……………………………………………………はぁ……」
体の汚れが溶かされて、最近ずっと満タンになっていなかった魔力が、どんどん満たされていく。
あー、魔力がマックスになるって、めっちゃいい。凄くいい。とってもいい。
語彙力も一緒に溶け出てる気がするけど……このとろけた脳みそでは思考が出来ない。
「もう少しー、あと1時間ー。」
溶けきった脳みそ、乱れきった髪の毛、とろけきった顔。モゴモゴと口を動かし、意味不明な供述をする。
私は犯人じゃないぞー。
「ま、冗談はここまでにしてそろそろ出ようかな。」
エアリスリップ(水無いバージョン)を私の周りに出現させ、水気を綺麗に飛ばしていく。
あばばばばばばばば………さっ、寒い……
調整……ミスった……はぁ、はぁ、はぁ………
「………魔力も回復したし、もう行こう。」
くしゅん、とくしゃみをして服を着る。
魔法少女服に慣れてしまった私は、もう手遅れなのかもしれない。
「サッパリしたところで、壁の向こう、行っちゃいますか。」
あっち側にゴールがあると信じて、疑わないようにする。疑ってしまったら、レールガンまで撃った意味が無くなる。
そう思って穴の空いた壁を目指して歩く。
いくつか先を超えた時、数枚の壁が重なったところがあり、その1つ先の壁に微かに光が差し込んでるのが見えた。
「あれ?レールガンでも壊れて、ない……?いやいや、あの壁の材質だったら、レールガンで壊れないなんておかしい。」
コンコン、と壁を叩いてみても、別に違和感は無い。意味が分からず考えあぐねる。
1発ステッキでぶっ叩いてやれば壊れるかな?
欠けて、光が差し込んでいる部分に向かって「ていやー」とステッキを叩きつけた。
すると、ドガッと鈍い音が鳴る。
「ここから先はボスの部屋ですって?そのくらい硬いよ、この壁。」
今の私ならダイヤモンドでも潰せると思ってたけど、「私にも壊せないものがあったなんて」と驚く。
……よく考えよう、あともう少しで通れるようになる。うん、壊せないわけでは無いから。
ツルハシのようにステッキを持ち、何度か叩いてようやく壊れた。
「ふー。こ、壊せた………い、いや、よ、余裕だったし?」
言い訳をするように強がり、空いた壁を見上げる。(片膝を床についてるためだ)
「え。」
それが、光の先を見た私の言葉だった。
もう1度確認しよう。ここは海、それも深い海底。そこに大きく構えられた祠の中、それが今私のいる場所だ。
本来、光なんてあるはずの無い場所。
「なに、これ?えっ……?」
目の前の光景に戸惑い、自分の目を疑う。何度も目を擦り、その度に目が丸くなる。
そこは、光の壁で覆われた場所。燦々と照りつける太陽と、一面に咲き誇る草花。1番奥には物々しい雰囲気を放つ遺物のようなものが1つ。
その途上には、優雅に紅茶でも飲めそうな日傘付きのテーブルがあった。
短く言い表すなら、花園と、神殿だ。
「なんか、最後って感じだ。」
あの神殿に人神がいるのかと思うと、少し緊張気味になる。
お、お、落ち着こう。まず、紅茶でも飲んで落ち着こう。
何故かポツンと置かれたテーブルにあったティーセットを掴み、カップに注ぐ。
手が震えてこぼれまくるけど、全く気にしない。口に運ぶ頃には、もうほとんどなくなってる。
「……過度に怯える心配は無い。私は、普段の私でやればいい。」
両頬をぺしんっ、と叩き、顔を引き締める。
ふぅー、はぁー。落ち着け、私。いつも通りの私を取り戻せ。神様相手だからって緊張を隠せなかったら、呆れられちゃう。
「この神殿、何も無いなぁ。」
軽く見た感じ、何も無くて首を傾げたけど、実際に見ても何もない。あるのはなんか凄そうな神殿本体のみ。
この番組を見ている皆さん!今ならイチキュッパでご購入できます!
お電話番号は………へぶっ……誰かに殴られた気が……?気のせい?
「それにしても何もない。何が目的で作られたんだろう?あぁ人神のためか。」
疑問を自己解決していくスタイルを決め込み、ゆっくり目を閉じる。
最後の疑問。本当に、ここに人神がいるのかを魔法動力で調べる。
「魔力の流れが荒い。ひとつひとつが濃いし、正解かも。」
道中色々あったけど、ここに人神が……頑張った甲斐があったね。
何か変わるかもと思い、神殿に足を踏み入れる。透明な膜を破ったような感覚があり、振り返る。
「……気のせいじゃないよね。」
さすがの私も、そこまで鈍感では無い。眉を顰めて辺りを見回す。
何がある、何が無い?どこに違和感があって、どんなふうに感じる?
こんな場所、突然現れたんだとしたら都合が良すぎる。元は地上にあって、それを持ってきたと考えるべきだ。
そして、何も無い。そんな神殿を不審に思った。人神なんて大層な神、なにか祀るための絵や文字、それと一緒に高価なものも贈られるはずだ。
誰も来られないから?いいや、違う。
「こんなところに祠があるのに、それにみんな気づかない。隠蔽と言っても意識を逸らさせるだけで、あそこを歩けば落っこちる。」
最初から違和感をかけ集め、1つの推論を出そうとする。
知ってるのに、行かない。知ってるのに、調査はされない。行こうと思えば普通に行ける。特殊な魔法でも使えば、なんとかなると思う。
攻撃魔法が弱いだけで、普通に軽い支援魔法なら結構存在してるし。
噂があるってことは、誰かは行ったはず。誰かは帰ってきたはず。
「人神を、避けている?」
自分で出た推測に、自分で首を傾げる。
アトさんみたいに、知ってる人もいる。人神なんて神を、他者に伝えないのはおかしすぎる。
なんで避ける必要があるの?人神を。人間が避けること。恐怖、不安、絶望、悲しみ……死?
「太陽に背き、月に従う獣。」
突然そんなワードが思い浮かび、その獣の末路を思い出す。
私の、ステッキの中。死体となってる。
太陽が表。月が裏。表裏一体の関係?
表に背くと、獣のような未来が訪れる。すなわち死。
「人々は死を恐れ、間接的に人神を避ける。人神を、恐ろしいと思った人物がいる。」
ハッとしたように前を向き、目を見開く。
我ながら酷い暴論だとは思うけど、今回はそんな解釈も掠ってそう。
同じ人間でも、表から外れる者は排除される。私に殺された、獣のように。
目の前には、死神と天使が混じり合ったような、巨鎌を握った者がいた。
———————————————————————
ソラさんの上着をリニューアルしようかと思っている今日この頃。
ソラさんの想像、スケールデカすぎます。本当に掠ってるだけですよ、ソラさんの考え。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる