魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
124 / 681
4章 魔法少女と人神の祠

120話 魔法少女はちょっとキレる

しおりを挟む

「んー、分からない。ちょっと読み返してみよう。」
読み返し戦法パート2を始めた。

 ふんふん、うんうん。回れー、オーバーヒートする前に終わらせないとダメなんだー!

 まず1つ。青の石は不正解だと思う。青は不正解は隣り合う。って言ってる中、青は不正解。と、不正解は隣り合わない。って言われてるんだから、青は嘘が書いてるってことだ。
 そこから導き出せるのは青。

「あと何個不正解があるかだけど……」

 確か壊すのは正解で……って、何で正解を壊すの?そこは不正解を壊そうよ。
 ……そうじゃなかった。

 私って、都合がいい頭してる気もしないでもないけど、そんな悲しい事実は無視に限る。

「こんなのパッと出てくる人なんていないよ。誰しも考えなきゃ無理、だから私の頭は普通。」
そんな言い訳を誰に聞かせるでもなく呟き、1人悲しくなる。

 ……あ。ふっ、なーんだ。簡単じゃん。
いや、これ気づいちゃった時さ、私の頭ってつくづく変な方向に向いてるなって思った。

 最初の文見たら、いきなり矛盾してた。赤が不正解、黒が不正解。
 1番上に不正解があるってことだから、上の黒か赤が不正解。
 最後にこれでもかって程、ヒントをくれてる。

 上の黒の下の赤は、上が不正解。下の赤は赤は不正解じゃなくて、左下だけ見ると怪しいけど……正解だと思う。

 だから、不正解は左上の黒の石と青の石だ!

「残りの赤と黒の石を壊しちゃえば、この面はクリアってことかな?」
面とか言ってるあたり、ゲーム慣れが出ている。ようやく2個目の謎を解けたことで、少し頬が緩む。

「石くらい魔法を使うまでも無い。ステッキで叩き割ればなんとかなるでしょ。」
1つ目の石の前まで来て、思いっきり振り下ろす。これを7回。非常にめんどくさくて、緩んだ頬が引き攣られる。

 確かステッキの能力に、スイングアップ的なやつがあった気がする。それのお陰で壊しやすくなってると思うから、楽で嬉しい。

「別に個人的な恨みは無いけど、私のために壊させてもらうよ。」
石の目の前でステッキを振り上げ、振り下ろすと同時にバァーンッ!!っと石が吹っ飛ぶ。

 お、おう。凄い、威力だね。

 残りの6個も同様にバァーンッ!!と、吹っ飛ばしていった。
 ちゃんと加減したため、後半の方は綺麗に割れた。

 最後の1個を叩き壊すと、なんか背後からゴゴゴゴゴゴガガッ!!と、変な音が鳴った。

「何っ!?」
バッと後ろを振り返ると、綺麗な長方形に壁がくり抜かれていた。

 やった、入口かな?次こそ神様がいたら嬉しいんだけど……私の頭みたいに都合は良く無いよね。

 あれ、なんでだろう。目から、汗が……

「……気を、取り直していこう。」
すん、と鼻をすすり、歩き出す。

 そして、2回目、3回目、4回目……と、何回か謎解きステージをクリアしていった。

 神様はって?うん、いないね。というか全然この迷宮的なところから抜け出せて無い。

「いつまでやればいいの!これ!?」
私は、謎解きのパズル的な何かを地面に叩きつけた。こう、ドシャーン!てな感じで。

 地面に減り込んだその何かを見て、私は今何をしているんだろうと虚しくなってくる。

「私は一体何をしてるんだろう。そもそもここ、どこだっけ?ちょっと待って、私って、何?」
なんか色々と疑心暗鬼になってきて、段々と自分が分からなくなった。

 ダメだーダメ。思い出せー。私は悲しい悲しい魔法少女。神様にこんな可愛い格好をさせられた、悲しい魔法少女。
 今日は神様に一言文句を入れるために、こうしてわざわざ足を運んでいる。

「だから、私はこんなゲームをするために来たんじゃない!!道を出せ!さもなくばこの祠を破壊するぞ!」
ヤケクソになった私は、魔力のことなど1ミリも気にせずに魔法を放とうとする。その時の顔は、悪魔のような顔だったんだろう。

 その顔を、私が見る事は永遠に無い。

 ほんとはミョルスカイでもぶっ放してやろうかと思ったけど、流石に可哀想だ。
 本音を言うと、そこまで魔力を消費する度胸が無いだけだ。

「……こうなったら、強行突破しよう。」

 魔力とか、どうせなんとかなる。ご都合主義で生きていこう。

 ステッキを腰に挿し、ミョルスカイを両手に抱える。
 魔弾装填、魔力充填、軌道調整、魔法調節、出力調整…………オールオッケー。

「トール!投擲!出力120%!」
引き金を引き絞り、轟音と共に弾丸が射出される。

 出力が高いお陰で、超高温となったトールの魔力は、壁と一緒に他の魔力を溶かしていく。
 弾丸の速度はいまだに衰えることはなく、遠くからドゴォ、ドゴォッ、と鈍い音が聞こえるを

 空気中に滞留したトールの雷が、徐々に隔たりを消滅させていく。

「久しぶりのレールガン、凄い、威力、だね。」
流石の魔力消費量で、少しふらついた。

 それでも壁には穴が開き、通れるようになっている。
 この先がゴールに繋がってくれていることを祈り、私は藁にも縋るような気持ちで壁を通り抜ける。

 カツ、カツ、カツ。ブーツの音がやけに響く。少し湿気ているような感じもする。

 壁の風穴を歩いてしばらく経った頃、外から風のようなものが吹いてきた。
 ここは海底にある祠、風が来るなんておかしいと思って走ってみたら、そこには予想外のものがあった。

「いや、ほんとにRPG?ボス戦の前にHPを回復させろってこと?」
いかにも魔力回復しますって感じの温泉が、何故かぽつんとある。

 室内、全方向石造り。何を思って設置したんだろ。バカじゃない?作った人。

 その先にはまだ弾丸の穴があったので、この先に人神がいるんだと思う。

「優しい設定だ、ミョルスカイ分くらいは回復させていこう。」
こんなところだ。絶対に人なんていないだろう、と高を括り、服を脱ぐ。

 私のインドアを示すような真っ白な肌に、筋肉なんてものを極限まで削ぎ落とした細い体が見える。

「見た目は痩せてないよ、脂肪があるし。」

 それはそれでダメでは?というツッコミは、ゴミ箱に丸めて捨てるからよこしなさい。

「ご都合主義は、やっぱり物語の主人公やってくるのがお決まりだね。」

 勝手に自分を主人公に置き換える、自意識過剰の私であった。
 まぁ、転生とか言ったら主人公の特権だしね。

 クラス転生とかいうワードもあるけど、今はほっとこう。

———————————————————————

 魔法少女と温泉と祠。全く合わない組み合わせとはこのことです。
 例えば饅頭に寿司を入れて、唐辛子をかけて食べるくらい合いません。(もしこの食べ方をしている人がいたらすいません)







しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...