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4章 魔法少女と人神の祠
116話 魔法少女は宝玉を集める 1
しおりを挟む「グル゛ウ゛ゥァァァァァァァ゛!!!」
「ちょっ、動き速いって!」
私は横にステップを踏んで大きく躱し、攻撃を無事やり過ごす。
この戦闘が始まったのはほんの数分前。私は意気揚々と反応のあった場所にやってきた。
そこにいたのは、異世界に来て初めて見た魔物、ケルベロスを数段大きくして、凶暴化させたような到底イラストとは一致していない姿をした犬だった。
驚いたね、あの時は。まるで私を待ち構えていた兵隊のようだったよ。
鋭く黄色い瞳孔を光らせて私を見る犬が、涎を垂らして唸る。
体は漆黒で目は黄色って、なんか怖い。
「毛並みだけは綺麗なんだけどねっ!誰か躾けてくれない?このままだと、人死んじゃうよ。」
ジグザグに走ってきた犬を、華麗なバックステップで躱した後に、小さめの跳躍をする。
今回の作戦はこうだ。
私的にはあの毛皮、普通に欲しい。家を作ったときに飾りたい。
だから、燃やすなんてのはNGだ。
水竜戦の時も言ったけど、どんな生物でも内側は弱い。
いくら強くたって、耐性も何も無い状態で炎とか飲んだら、そりゃあ死ぬ。
それと同じように、内側からドカンだ。
これは魔物だからやってることであって、人や動物にむやみにやっちゃダメだよ。
私はそう、空の向こうの日本の人々に注意する。
「グル゛グワ゛ァァァァァァァァァァ!!」
「……ッ!?子供を呼んだ?」
そんなお遊びをしているうちに、犬は行動を起こした。叫びに呼応したように、変な空間から子犬が(だいぶデカいし凶悪な顔だ)やってきた。
「「「「バクゥゥゥンッッ!」」」」
「超音波?頭に響く………厄介だね、早く対処しないと。」
海の中でいつもより速く動けない中、壁を蹴り上げて体を捻って回転させる。
水の中でも速そうな魔法……雷は私も終わるから、アクアソーサーなら使えそう。
アクアソーサーを子犬と同じ数の4つ出し、不規則な動きで正確に子犬を捉えた。
「そう簡単に避けられると思ったらいけないよ。私の魔法は、そんな雑魚な作りじゃないから。」
くるっと着地すると、小さな歩幅で2歩ほど下がり、ステッキを振るう。それに呼応するように1つのアクアソーサーが真横に飛んでいき、綺麗に首が刎ねられた。
「バグゥワア゛ァァァァァァ……!」
子犬の断末魔が響き渡り、血の匂いと相まって「ゔっ……」と口元を抑える。
「これを後3回……うっ、ちょっとめまいが。」
倒れそうな演技をして、子犬の誘導を続ける。3体全部を壁際に追いやり、同時にアクアソーサーで首を切り取った。
……やっぱり顔はどうあれ、生物を殺すのは精神にくるね。
こういう死ぬ直後に何か叫ぶ系の魔物は更にね。
「子供も討伐完了っと。あとは、こいつだけだ。」
ステッキを真っ直ぐ犬の顔の方に差して、黒い巨体を持つ犬と対峙する。
先手必勝。まずは私から動いて、どうにか口を開かせる。
この犬、海の中だっていうのに陸地の魔物なんかより、よっぽど速い動きをする。これを傷をつけずにどう倒すのよ。
口を開かせて魔法を飲ませるくらいしか方法は無い。小さい生物だと無理だけど、ここまでの体躯なら大丈夫だと思う。
「牽制だけど———万属剣!」
「グワオォォォォッ!!」
そんな雄叫びをあげた犬は、高速で辺りを駆け回り四方八方に飛ぶ万属剣を避けた。
ふっ、私の掌で踊ってるのに気づかずに、必死に避けて。もしここで避けなかったら、私の心にダメージを負わせられたっていうのに。
毛皮が傷つくっていう意味で。
「どうやっても私には勝てないんだから、潔く倒れてくれたら助かるのに……まぁ、そんなに世の中甘く無いよね。」
高すぎない程々のジャンプを犬の前でして、顔の上あたりで下降が始まる。
ここからが本番、快進撃の始まりでもあるよ。
「グルワ゛ァァォォォッ!!」
力強い雄叫びと共に大きく口を開き、私を捉えた。
それと同じタイミングで私をほくそ笑み、口角が上がる。
私のお望み通り、口を開いてくれてありがとう。
手のひらの上で魔力が荒れ狂い、(海の中のため扱いづらいからだ)魔法を起動させていく。
これが、私の新しい魔法。水竜に言われて気づいたけど、魔導法には新しい技術の補正がかかるようになってる。
なら、新しく魔法技術が作れないかと思って漫画で見たような魔法を再現した。
それがこれ。レイタースタート。直訳すぎてダサいけど、私のネーミングセンスでは仕方ない
普通、魔法っていうのは、自分の手や媒体になる物、空気中で魔法を完成させて放つもの。でもこれは、起動してる途中の魔法を投げて、空気中の魔力を取り込ませながら投げる物。
これは魔法には分類されないし、空気中の魔力も使うから、魔力も少なくていい。
速度にも捉われなくて、連射性にも優れてるから、めっちゃ強いと自負してる。
「じゃあね。その毛皮はありがたく受け取っておくから、安らかに眠って。」
レイタースタートで作られたトールを3つほど用意し、思いっきり口の中に放り投げた。
何が起こったか分からなそうな顔をしているので、一発顎に蹴りを喰らわせて口を閉じさせた。
私?その蹴りの勢いで着地したけど。
「グルゥゥゥゥゥ?………グギャグゥォワァァァァァァォォ!!!」
体をビクビクと痙攣させ、悲痛な叫びが響き渡った。
ここは洞窟。音はよく響く。
「グギャ、ワ、ォォン……———」
最後に犬らしい鳴き声をあげて、息を絶える。
体内でトールが組み上がり、それで電撃死したんだと思う。
死んでしまった犬は、外側は綺麗に残っていて、もうただの黒い毛の塊にしか見えなかった。
「子犬も次いで回収しとこう。少なからず儲けにはなるでしょう。」
犬を全てステッキに収納し終えると、ステッキが拒絶するように何かがこぼれ落ちる。
黄色の宝玉だ。綺麗に光って、宝石のように見える。
「これ、かな?綺麗……じゃなくて、穴の大きさとも丁度だし、これを嵌め込めば終わりだ。」
これを後3回繰り返すわけだけど、時間かかりそうだ。
「一応鑑定眼にかけてみよ。何か分かるかもしれないし。」
鑑定眼を発動させ、その宝玉を見る。
扉の鍵
とある祠の鍵の一部。光を当てることにより次の道は開かれる。
「光を当てる?」
少し意味が分からなかったけど、直感を信じてライトで光らせる。すると宝玉は、光を吸収したように光を溜め込み、次第に光の吸収は止まる。
……なんだったの、今の。なんか意味あったの?ただ綺麗に見えるような演出?
意味が無かったと落胆して宝玉を握ると、次は光が手からこぼれていた。
「次から次へと……今度は何?」
鬱陶しそうな表情で宝玉を摘むと、斜め上あたりを宝玉の光が差していた。
貫通してる……次の道?そうだ、次の宝玉の場所を示してるんだ!
「そうだったら早く言ってよ。なんでそんな溜めるの。そんな重要なことは、後から言っちゃダメじゃん。」
とんとん拍子で話が進んでいくけど、日頃の行いがいいからだよね。
問題無い問題無い。
———————————————————————
このまま1話ずつ進んでたらグダグダになりそうなので、ちょっとまとめます。
1話で1体半倒すくらいの勢いで行きます。
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