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3章 魔法少女と水の都
92話 魔法少女は色々知る(後編)
しおりを挟む「え?」
水竜さんの一言に、思わず声が漏れた。
「空力とは、少し脈流法と似ているが、少し難解でな。汝ら人間には扱えぬ者が多く、途絶えてしまった。」
そんな恐ろしいことを、滔々と言ってくる。
ちょっと待って!それじゃあなんで人間は生きてるの?力が無くて、どうやって……
「ひっそりと過ごしているのだ。人は集まり、集団で安全に過ごす。精霊や妖精を除き、それをしているのは人間だけだ。」
「目立つ行動は、自然に避けるようになってるってこと?」
「そういうことだ。」
私の問いに肯定して、更に話を続ける。
「人間と魔族は似ているところも多い。だから人間は、多少の魔力を持ち、弱いながらも魔法が使えるようになった。しぶといものだな。」
一歩間違えば絶滅だ、とおかしそうに笑ってくる。
何笑ってるの?何も面白くないじゃん、殺られる覚悟は出来てる?
ステッキに魔力を込めて輝かせ、水竜を脅す。
「悪かった、だからその武器を下げてくれ!」
「じゃあ笑わない?」
「あ、あぁ。」
そういうことで、交渉(一方的)は成立して、話の腰を戻す。
「で、結局は何が言いたいの?」
「ここまで言って分からんか?」
「うん、分からない。」そう言って、純粋無垢な目を向けて水竜さんを見つめる。
「はぁ……」
ため息をつかれたっ⁉︎私何かおかしいこと言った?言ってないよね。うん言ってない。
そうだよ、おかしいのは水竜さんだよ。
「なんで人間のはずの汝が、我を打ち破る魔法が使える?」
「あっ、そういえば。」
思い出したように、ポンッと手を叩く。
そういばそうだ。私は魔法少女だったから忘れてたけど、この世界は魔法が弱くて私はおかしいのか。
となると、私がおかしい人だったの⁉︎orz……
今までネットでしか見なかったこの言葉、実際に出る物なんだね。
「転生者だから?」
「転生、者?まさか汝は、神から力を直接受けた者か⁉︎」
驚いて、食いつくように聞いてくる。
「う、うっん。多分そう。」
ほんとに近づいてきて鬱陶しいので、私の異世界に来るまでの話をした。
「それで、私はその神様に会うっていうのを目標にしてるんだけど。」
「そう言うことか……」
今日に細い腕を顎に添えさせ、これが人化したら映えるんだろうな……と思った。
「ならば、汝をこの世界に送ったのは、人神の可能性があるな。」
「さっき言ってたやつ?」
「うむ」と言って、大きく頷く。
人神……そうだよね。私を送ってくれたんだし、人間を人間に転生させてるんだから、人神くらいだよね。
魔神とか言っちゃうと、私は魔族ってことになっちゃうし。
……待って、魔法少女ということは、魔族ということもありうるのでは?
いぃや違う!断じて違う!私は人間だ!
アイアムアヒューマン!
「ねぇ、話脱線しすぎじゃないですか、先生。」
「だから先生じゃないと何度言えば分かるのだ……」
話を戻すぞ、と言ってようやく本題に入ることができた。
水竜さん、道を逸れても気づかず進むタイプでしょ。危ないよ、それ。
「まぁ近頃暇になったものでな、50年ほど寝ようと思ったんだが、間違えて500年寝てしまったのだ。」
「500年⁉︎寝すぎっ!なに?『冬は氷河期です』とかそんな感じ?」
「何を言っている。」
そんな感じでいなされて終わってしまった。
この世界の基準は知らないけど、これだけは言える。500年は、寝すぎだと。50年でも十分長いけどね。
「そのまま海底から流され、気が付けばここにいて腹が減ったもので汝らを食べようとした。」
「そこで、返り討ちにあったと。」
「面目ない話だ。」
今では笑い話かのように、カッカッカッと笑っていた。
「古竜だからと慢心していたのかいけなかった。汝のおかげで気づくことが出来た、礼を言う。……なにか詫びの品でもした方が良いか…?」
傷ついた体を器用に曲げ、感謝を告げられる。最後の言葉はボソボソ声で聞こえなかった。
だけど、ちょっとやりすぎちゃったかな?いや、正当防衛だよ?でも、さぁ。ね。正当防衛が殺人……殺竜になっちゃいそうになってたわけで。
だから、私が言うことはひとつ。
「その体、治そっか?」
「なに?」
驚くと言うよりも、疑問の方が強いようで、目を細めた。
やっぱり敵に治療させてもらうのは、プライドかなんかに引っかかるのかな?
「何を言われても、治療はするよ。」
「……感謝しよう。」
さっきとは違った感じに、重ねてお礼をした。
私はステッキに、残った魔力を注ぎ込み、ヒールをしようと水竜に近づける。
「ちょっと待ってくれ。」
水竜さんがそう言うと、ステッキには謎の魔法陣が浮かび上がり、クルクルと何十にも回転する。
なにこれ?なんかファンタジー。
「これが脈流法のひとつ、脈派だ。」
ステッキの魔力が脈派と言われた魔法陣に吸収され、増幅するのが見て取れる。
便利な魔法?だね。これが竜の力……
「これは汝でも使える。いや、もっと言えばだな……」
私が治療している最中も、そう言って話を繋ぐ。
「全ての力が使用可能だ。」
「は⁉︎」
再生が終わり、綺麗な体を取り戻した水竜さんが、そんなはちゃめちゃなことを言ってくる。
全ての能力?なにそれ、は?私魔法しか使えないよ?
「汝はかなり気に入られているようでな、神の力が大きい。そして汝、能力に技術系の能力があるのではないか?」
そう言われて、私はなんとなくピンときた。
それはよく使ってる魔法で、私も疑問を持ったあの効果。
別に私は望んだわけじゃないのについてきた、あの謎の効果についてが、今の私の頭の中に浮かんだ。
そう、魔導法。秘術等が覚えやすくなるとかなんとか。
神の力で可能性があった程度だったのが、この魔法があるから使えると言うことなのかもしれない。
「教えてやりたいところだが、すまない。時間がないものでな。最後にひとつ、質問に答えよう。」
最後の質問、私が今1番気になってるもの。
気になってる、やっぱり神様のこと。
その人神にも会いたいし、他の神にも会いたい。
我が儘を言うなら、創滅神にもあって見たい。
「神様たちの居場所を、教えて。」
「………うむ、分かった。」
悩むように唸るそぶりを見せる水竜さんも、最後は試すような視線で答えてくれた。
人神は、どこかの海底に迷宮を構えている。
何千年に1度だけ、移動をするらしい。
魔神は、どこかの地下に城を構えていて、流浪者で、気まぐれで、すぐに居を移すらしい。
霊神は、どこかの森の奥深く、ひっそりと村を作って暮らしていて、移動することは無く、移動するときはその森が使えなくなる時らしい。
龍神は、どこかの高い山の山頂にいて、いつもは空を飛んで移動しているらしい。
それだけを伝えて水竜さんは、「また会うことがあるならば」と言って文字が大量に書かれた、水晶というか、宝玉的なものを貰った。
「ありがとうございました!」
海の底に潜っていく水竜さんに、大声で感謝の言葉を投げかけた。
聞こえてたら、嬉しいな。
———————————————————————
水竜はお知恵をおちえてくれました。
くだらないギャグをすみません。
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