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4章 魔法少女と人神の祠
111話 魔法少女はまた海に行く
しおりを挟む「おはよー……ふぁ~……」
「眠そうだね、ソラ。昨日早めに寝てなかった?」
「寝たけど疲れてるから……あ、サンドイッチでいいよ。」
いつもの席に座り、いつも通りの会話をして朝食を待つ。
ご飯でも食べたら、さっさとティランに戻らないとなー。
あー、でも動きたくない。寝たいし怠いし……そんなこと言ってたらだめか。
「はい、ソラ。ロヴォのいい肉、特別に入れたよ。疲れてるみたいだし、サービス。」
「ありがとう……この肉って、朝でも食べやすいさっぱりめな味でいいね。」
モグモグと咀嚼しながら呟く。
ロヴォっていうのは狼のお肉らしい。ロボみたいで硬そうだけど、実際は柔らかいお肉だ。
美味しい。
「食べてる途中に喋らない。ほら、パン飛んでるよ、ソラ。」
注意されてしまったので、ごっくんと飲み込んでから飛んだパンのカスを拭き取った。
ふー、美味しかった。
「ごちそうさま。」
「はい、おそまつさま。」
「あ、またちょっと戻って来れないかも。今日は絶対無理だと思うから、それだけ伝えとく。」
机に立てかけていたステッキを右手で軽く回転キャッチして、もう片方の手でいぇいと握り拳を作る。
「また?冒険者も大変ね。」
「じゃ、行ってきます。」
「うん。行ってらっしゃい。」
その挨拶から数分後。私はもちろん、街の外の森で準備運動をしていた。
意味は特に無いけど。
「目安時間は昼を越えるまで。流石に魔力の消耗具合とかも考えて、神速は連続で使えない。」
説明しよう。神速の魔力消耗は少しの移動では微々たるものだけど、長時間使用すると段々消耗量が増えていき、最終的にはとんでもないことになるのである。
「だからといって身体激化は使えないし、魔力超化で強化するしか方法は無い……バイクは流石に時間がかかる。」
ティランの方向を一直線に見据えて、走る準備をする。
体内の魔力に働きかけるぐらいだったら、魔力の消耗は避けられるし、魔力超化のおかげでより強力出来てありがたい。
「まだ疲れは取れきってないんだから、早く着いて休みたい!」
クラウなんたらスタートで走り出し、勢いよく飛び出した。
途中で出くわす魔物は、デストロイアンドコレクトでさよならバイバイだ。
何言ってるか分からないって、そのくらい考えなさい。
途中で水分補給を兼ねた休憩をして、時々神速を使って走る。
それを何回か繰り返した時。
「いや、流石に遠くない?竹林の村で神速で走ったけど、ここまで遠くはなかったよ。」
速さ重視にして、神速使っちゃうのもいいけどなぁ。でも、「危なくないよね」とか「私なら少ない魔力でも大丈夫」っていう慢心は良くない。
それで私は、1回死にかけたんだから。
「私は実際には強くない。強いのは神様とこのスキル。」
そう心に刻み込み、神速の連続使用は止めた。
昼頃になり、昼食がとりたくなった私は倒した魔物の中に美味しそうなものを探す。
……無い。どれも気持ち悪いやつ。逸れゴブリンだとか、虫系の魔物とか。
「……よさそうな魔物、探してきますか。」
適当な枝葉に火をつけ、焚き火を作って拠点の仮拠点を完成させる。
それから、私は跳躍して木の枝に乗って上から奇襲作戦を決行するべく、魔力反応のあるところにスタンバッておく。
1匹目、違う。2匹目、違う。3匹目、そう。
「って、そう!?」
慌てて枝から真下に落ち、アクアソーサーで首を切り落とす。
「自然に歩きすぎなんだけど。」
一応鑑定眼にかけておいて、普通にこの世界の猪(ハバリーって書いてある)だった。
この世界って変な名前の魔物多いよね。由来とか気になるけど、今はどうでもいい。
「よーし、調理しようっと。……うん?魔物って、解体しないといけないんじゃなかったっけ。」
突然そんな当たり前なことを思い出し、汗が垂れてくる。
「この肉、食べられないじゃん。」
解体すればいいって?それが出来ないから言ってるんだよ。
猪の死体の前で、orzの格好をする。側から見たら、猪肉に頭下げてるみたい。
変な部族かよって、ツッコみたくなる。
その後、食材生成を思い出し、軽く食べて走り作業に戻ったのであった。
昼食事件から少し経ち、まだ走りと神速を使い分けて走ってるけど、そろそろ走るのにも飽きてきた。
もういっそのこと、神速で一気にけりをつけたい。あぁ、でもそれはダメだし。
これといったハプニングもなければ、面白いことも何も起こらない。
「ボッチで砂浜歩くレベルでつまんないよ、これ。」
そう文句を垂れてしまう。
「どっかで大きい魔物とか現れないかな?そろそろ暇が暇すぎて暇になるよ。」
と、意味不明な言葉を垂れ流しつつ走り続ける。
負けないで、もう少し♪みたいな曲を流してくれたらやる気出るんだけどなー。
まぁ、出るわけないけど。
「魔力感知で見た感じ、あともう一息か……頑張ろう。」
ため息を吐きながらフラフラ走る。
その時。
ドスン、ドスン。ドスン、ドスン。なんか二足歩行の大きな足音が、私の方に近づいてきた。
最初は何も気にせずにいたけど、近づいてくると段々危機感を覚えてくる。
「え、この足音、私の方に来てる!?」
そう気づくのにはそう時間はかからなかったけど、魔力感知に映らなかったのが謎だ。
そのドスンドスンと響く足音は消えず、木すらも揺れ始めた。
この時私は悟った。
「あっ、ダメなやつだ。これ。」と。
仕方なく走る脚を止め、自分の魔力を確認してから嘆息する。
「魔力はあと半分。十分とは言えないね。未知なる敵に挑むのには心許ない。」
そんなこと言ったってどうにもならないから、ステッキを固く握って辺りを警戒する。
酷いことに今回はミョルスカイを使えない。地形の問題と魔力の問題で、今回は使用禁止の烙印を押された。というか押した。
もう魔力感知は意味無いと思い、観察眼を起動してキョロキョロと見回す。
木、木、木、木。草、草、草、草。花、花、花…
そうして1周確認し終わると、目の前に巨大な何かがあった。
そして表示された文字は、…………オグル。
———————————————————————
観察眼で確認した木とか草とか花、実際にはもっと細かい詳細とか大量に書いてます。
そんなことしたらソラ共々頭がパンクします。
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