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4章 魔法少女と人神の祠

110話 魔法少女はロアを家に送る

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「今までお世話になりました、フィシアさん。」
「お世話になりました。」
家の前で2人で頭を下げて、お礼を言う。

 今日でティランでの生活も終了で、昨日は冒険者のお世話になった人達(主にルリィ)に挨拶に行った。

 いや、話が飛び過ぎてるのは仕方ない。一昨日は釣りを終え、寝てるロアを起こさないように抱えて帰ってきた。
 そして昨日、挨拶に行った。
それだけって、……う、うん。それ、だけだよ?

 何が仕方ないかって、仕方ないものは仕方ない。だって、仕方ないじゃん。

 あー、仕方ない。あーあー、仕方ない。

「かえってしまうのですか?」
「また会いましょう、ハリア様。」
弟を見るかのような目で、笑顔で手を振った。

 頭を撫でようとしてたけど、身分の違いの関係か躊躇していた。

 帰る時、フィシアさんにまた来たら寄るように言っていたので、その時はまたお世話になることにする。

 そこは少しでも遠慮しておけって?人の好意を踏み躙ってはいけないんだよ。

「それじゃあ帰るよ、ロア。」
「分かりましたー。」
私達はフィシアさん家の庭(家と門までの長い道)から出て、街の門まで向かう。

 フィリオの家みたいに、街の門から遠くないからありがたいね。
 フィリオも引っ越したらいいのに。門の近くに。

「あ、あの?ソラお姉ちゃん?その、どうやって帰るんですか、馬車も見当たりませんけど。」

「そのための秘密兵器があるんだよ。昨日こっそり作ってたんだよね。」

 そう、ほんとは昨日帰ってもよかったけど、よく分からないノリで、この秘密兵器を作ったのだ!

 私はステッキからあるものを取り出す。

「なんですか?これ。車輪があるように見えますが……2個しかありませんよ?」
「それでいいんだよ、そういう乗り物なんだし。」
不思議そうにそれを見てるを脇目に、私は実際に跨ってみる。

 フォルムは全体的にスリムな感じ、色は黒を基調にしようとしたけど、何故か可愛い色になってしまった。
 ……これが、魔法少女の呪いッ!というのは置いといて、まぁバイク。

 私はバイクの乗り方も免許も無いけど、この世界ならそんなものは気にしなくてもいい!
 標識もなければ免許だっていらない!信号も何も無いから、気にするのは他人と魔物だけ!それならは、私だってバイクに乗れるのでは?

 バイクってなんかかっこよくない?ちなみにこれの動力なもちろん魔力だから、匂いも音も気にしなくていい。
 隠密性に長けてるから、気づかれにくいね。

 ほら、仕方ないでしょ?これ作ってたんだから、話が飛躍しちゃったんだよ。

「ほら、後ろに乗って乗って。2人乗り用に作ったんだから。」
後ろの空いてるところを指差して、跨るように言う。

 移動手段が、神速しかなかったからさ。こうやって便利な道具があると移動とかもしやすくなるね。

「こ、こうですか?」
「そうそう。しっかり捕まっててね、落ちちゃうかもしれないから。」

「はっはい!」
私の腰をギュッと抱きしめられ、温もりを感じる。

「よし、出発進行。進め進めー。」
手に魔力を込めると、どんどんバイクが加速していく。

「おー、速い速い。」

 でも魔力量をミスったらそのまま森に突っ込みそうだね。気をつけよう。

「速すぎますよー!」
後ろから絶叫が聞こえてくるけど、慣れるはずだ。頑張ってもらおう。


「これって時速何キロくらいなんだろう。馬車よりは確実に速いけど、どう思う?」

「どう思う?じゃありませんよー!速いですよ……」
「喋ってたら舌噛むよ?危ないから口閉じててね。」

「スピードを落としてください。」
そう何度も文句を言われたので、魔力の調節をしてまた走りだす。

 馬車よりはだいぶ速いかな?くらいのスピードしたけど、これならセーフのラインらしい。

 このバイク、魔力をめっちゃ使うからみんなは乗る時、しっかりと魔力を貯めてこようね。
 まぁバイクに乗るだけの魔力量があればだけど。

 誰もこんなバイクを使うことはないと思うけど、一応の注意をしておく。

「使うことは無いというか、使える人がいないの間違いだけどね。」
「どうかしましたか、ソラお姉ちゃん?」

「いいやー、なにも。」
そのまま夕方を超えるくらいまで走り続けていると、見慣れた地形になってくる。それはロアも同じみたいで、バイクの速さにあんぐりとしていた。

 バイクは馬車と違って休む必要もないから、その分時間が短縮できる。

 テレスさんに挨拶に向かおうかとも考えたけど、それはまた今度にしよう。だってもう夜だし。
 今度手土産と一緒に挨拶にいきますか。

「もうすぐ着くから、準備するもの無いけど準備しといて。」
「はい。………なんだか、久しぶりですね。この景色も匂いも。」

「何週間も向こういたしね。潮風の匂いとかこっちではしないし。」

 ロアは初めてこの街から出て、不安とかもあったんだと思う。

 門が遠くに見えてきたので、私達はバイクから降りて門を通る。

 「こんな暗いんだから早く帰りなさい」と門番の人からお叱りを受けたけど、軽くスルーしてロアの家に向かう。

「長旅で疲れると思うから、今日はご飯食べてすぐ寝てよ。」
「ソラお姉ちゃんも、体に気をつけてください。」
そんなやりとりをしていると、すぐにアパートに着いていてロア達の部屋をノックする。

「テレスさん、久しぶりです。ロア返しにきましたよー。」

「あ、ソラさん。ありがとうございます。ロア、ちゃんと楽しめた?」
「うん、楽しめたよ。お父さん。」
そこにサキがやってきて、「お姉ちゃーん」と言って抱きついてた。

 久しぶりに姉に会えて嬉しいみたいだ。ロアは優しくよしよししてて……スマホがあったら連写してたね。

「あ、テレスさん。これ。」
この間作ったスペアステッキの存在を思い出し、ステッキから取り出して渡す。

 これでいちいち私が持って来なくてもよくなって、心に余裕ができるね。

「あの、これは?」
「ん?スペアステッキ。この中に食材が入ってるから、好きに出して。ほら、電気つけるみたいに魔力込めて。」

「こ、こうですか?」
「そうそう。」
すると中からいくつか野菜が出てきて、焦っていた。

 いやー、さすが親子。よく似てる。慌てた様子とか、言葉遣いとか。ロアとよく似てる。

 というか、まだ敬語使ってるの?テレスさん。そろそろタメ口でもいい気がするけど、本人がこれでいいんだからいいんでしょう。

「これで、ソラさんの手間が少しでも減りますね。」
「別に手間とか気にしなくていいのに。私がしたくてやってるんだから。」
そろそろ私は邪魔者かなと部屋を出て、いつもの宿屋に行く。

 久しぶりのエリーのご飯を貪るように食べて、お金を払っていつもの部屋のベッドにダイブする。

「いや、エリーが『いつもの部屋、空いてますよ』とか言い出したのには驚いた。」
驚いたと言いつつ、クスクスと笑いをこぼす。

 なんか私は常連のお得意様みたいになっていて、部屋をとっておいてくれたみたいだ。

「明日も早いし、今日はさっさと寝よ。」
上着を脱いでポイッと床に放り投げる。

 あ、やばい。今までの疲れが、一気に、、
……………すやぁ。

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 なんか今回グダグダしてる気がするんですけど、気のせいですよね?
 唐突のバイク。無理矢理話を作ろうかとも思いましたが、絶対文字数が足りなくなるのでやめました。






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