魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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4章 魔法少女と人神の祠

108話 魔法少女は釣りを楽しむ

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「アトさん、この辺でどうですか?」

「うむ、ベスも勘が冴えてきたみたいだな。マリもエサ撒きしといてくれー。」
「はいはーい。ふっ、アタシのエサ撒き術、見せてやるよ。」
そう言ってのエサの入った箱を片腕で持って、めっちゃ綺麗なポーズでサッと撒いた。

 ……うぉ、かっこいい……ポニーテールがゆらっと揺れるのもまた…あぁ、見惚れるところだった。

「……?なんでエサを海に撒いてるんでしょう?あの、無駄じゃ……」

「はははっ、エサを撒くことで魚を近くにおびき寄せてるんだ。」
ロアの疑問を、アトさんがビシッと教えてくれる。

 へー、なぜか撒かれる魚の謎がようやく解明されたね。

「はい、ロアー。釣り竿持ってきたよー。」
「あー、ありがとうございます!」
2つの釣り竿のうちの1本を渡し、私は残ったもう1本を私の物にした。

 釣りの方法って色々あるらしいけど、エサ釣り以外何があったっけな。
 修学旅行か何かで、テンカラってやつやった気がする。

 テンカラって川とかでやる毛鉤の釣りだったよね?もう覚えてない。

「おーい嬢さん。リールとエサ、忘れてるぞ。」

「あっ、すみません。」
竿だけしか持ってきてなかったみたいで、リールとエサの入った皿?を貰う。

 そこでアトさんに教えてもらった、釣り竿のセットの仕方をど素人の私が、手取り足取りロアに教えてあげようじゃない。

「ソラお姉ちゃん、これの組み立て方知ってるんですか?」
「うん、知らないよ。だから教えてもらった知識をそのままロアに教えるよ。」
こんなところで嘘ついても、どうにかなるわけじゃないので、正直に言う。

 こんなところで時間を食ってはなんなので、パパッと神速で終わらせよう。

「まず、リールをリールシートに上から取り付けて、次は糸。」
「分かりました。」

「竿のカバーをとって、糸を取り出してこの下から通す。ベール?まぁ弧みたいなやつを起こして、ガイドに通す。」
「弧……?……これですか?」

「通した糸をこの金属の輪に入れて(以下略)」

 糸を結ぶのは普通に説明が大変だから、そこは自分で調べてね。

「出来ました!」

「1回教えただけでそこまで説明できるなんて、嬢さん凄いなぁ。」
「それほどでも……」
久しぶりに単純に褒められた気がして、少し嬉しくなる。

 魔法少女服の力かな?だとしたら、魔法少女服ってかなり都合いいよね。
 どうでもいいことだけは頭から抜け落ちていく。名前とか。

「セット出来たんなら、好きに釣っていいぞー。俺たちは後ろで適当に釣っとるから、何かあったら言ってくれていいぞ。」

「何から何まで、ありがとうございます。」
の基本である、お礼の気持ちをしっかりと伝え、釣りに向かう。

 途中で「アタシが教えてやろうか?」とマリさんが言ってきたけど、丁重にお断りさせていただいた。

 釣りってのはマイペースにやるものだよね。知らないけど。

「えっと、まずはベールを起こして、手首の力と魔法の力で……いっせーのっせっ!」
謎の掛け声と共に、竿がしなやかに反って糸がシュルルルルッと飛んでいく。

 射出の力も加えてみたけど、だいぶ飛んだね。いや、飛んで悪いことはないけど。

「ソラお姉ちゃんみたいに上手に投げられません。」
「私は魔法も使ってるしね、普通こんなものだよ。」
ロアを優しく慰めつつ、ゆっくりと待つ。

 5分後

「釣れませんね。」
「そうだね。」

 10分後

「釣れませんね。」
「……そう、だね。」

 あれ、おっかしいな。全然釣れない。後ろからはなんか釣れる音が聞こえるけど、こっちは竿がピクリとも動かない。

 そしてまた、10分後。

 そろそろエサでも変えようかと竿を見てみると、ロアの方の竿の方がピクピクと揺れは始めた。

「ロア、魚来てるよ。引きが強くなる前に構えといて。まだ食べては無いから、慎重に。」

「あっ、はい!」
期待と不安の入り混じった表情で返事を返し、ジッと竿を睨むように見つめる。

 ツン、ツンツン、ツン。

 その瞬間。

 グイーーッと竿が引っ張られ、グニャッと折れてしまいそうなほど曲がる。

「ロア、今!」
「オッケーです!」
急いで釣り竿を握り直し、リールに手を伸ばす。

「すごく、硬いです。全然、動きません!あっ。」
「手伝うよ!」
引き摺り込まれそうになるロアの体を支え、一緒に釣り竿を握った。

 これ、結構大きいんじゃない?引きもめっちゃ強いし。

 リールは回らず、竿と魚の引き合いが続く。

 動きが弱まったところで、糸が切れないようにリールを巻き、周りにも気を配りながら私は網を握って待機する。

「また引きました!」
「こっちから少し魚影も見えるし、巻いちゃっていいんじゃない?」

「ちょっと待ってください。ふぅー……、はい、準備できました。やってみます。」
1度息を吐き、気持ちを落ち着かせた。私もそれを見て、深呼吸でもしておく。

 そこから数分間格闘し、海面まで魚が見え始めた。

 大きさは……あれ?結構小さい。手よりもひと回り大きいくらい。
 重りとか、海の中だからかな?

「もう限界です、ソラお姉ちゃん……助けてください……」
「分かった、そろそろ引き上げるよ。」
そう言って私は、ロアに糸を引っ張るように最後に指示を出して、ちょっと浮いたところで魚を網に入れる。

「ロア、釣れたよ!」
「ようやく、釣れました……!」
疲労困憊な様子で、肩で息をして顔に喜びを滲ませる。

 魚を渡すと、ロアはビチビチと動く魚に驚いていた。

「よかったね、釣れて。」

「はい!」
苦労した後に味わう幸福っていうのは、より増して感じるようで、

 ———その笑顔は、あの時の笑顔を超えるかもしれないほど、麗らかな笑顔だった。

 その後、私も釣れたけどめっちゃ小さいヒイラギみたいなやつだった。
「プッ、アッハッハ。ちっちぇー、笑いもんだ」とマリさんが笑ってたので手刀をかましておいた。

 曰く、「アンタの手刀、結構洒落にならん威力だからな?」だという。
 私はそんな強くしたつもりは無いけどね。

———————————————————————

 どうも、終わりと始まりどころか、本文のレパートリーまで少ない作者です。
 悩みに悩み抜いた末、釣りは1話で済ませました。

 本当は釣り大会とかするつもりだったんですけど、すると釣り回が異様に伸びそうな気がしたのでやめました。
 そういうのはまた今度で。









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