魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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4章 魔法少女と人神の祠

105話 魔法少女はネルと別れる

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「よーし、早く海行くよ。ロア。」
「はっ、はい!」

「はい!じゃないです!」
と、どこか聞き覚えのある金切り声で、後ろから怒ったように叫ぶ。

 あれ?この声って……

「ネル、まだ帰ってなかったの?」
「酷くないですか?私、要らない子ってとですか?ソラさん、私を嫌いなんですか?」
おーいおいおい、と泣いたふりをしながら悲しそうなそぶりをみせる。

 あー、帰ったと思い込んでたけど、帰ってなかったんだ……なんか申し訳ない。

「ごめんごめん、ちょっと勘違いしてて。嫌いじゃないからね?」
「本当ですか?」
「うん。本当。」

 うーん、じゃあロアと一緒にお見送りでもしてあげれば満足するかな?
 ネルだし、満足しそう。

「そろそろ行くぞ、ネル。まだ……仕事が溜まってるんだ、誰かの所為でな。」

「え、誰のこと?」
「お前のことだ。」
目を細めて私の方を睨むように見てくる。

 わー怖い。私は何もしてないよ。ただ私は、交易路を作るれるように許可取りしただけだよ。
 え、その後が大変だって?知らないよ、そんなの。

「交易路が完成したとはいえ、まだ商人が馬車で行き来できる程でも無ければ、トラブルだって少なくない。」
その辺りの対応が遅れてるからな、と頭を抱えるように唸った。

「お見送りしたいから、行くなら早く行ってほしいんだけど。」
「お前には人の心は無いのか?」

「魔法少女の心ならあるけど。」
……はぁ?と、呆れ返るフィリオは私を無視してさっさと馬車に乗り込む。

「それじゃあ、また今度お会いしましょう!」

「バイバイ、ネル。」
「はい、また今度!」
馬車の窓から手を出して振る……ことは流石に無く、窓越しに手を振っていた。

 一応貴族だもんね。ネルはその辺りを分かってるから、行儀の悪いことはしない。
 ちゃんと周りに目を向けて、細かいことに気づこうとしてるし、その心がけは将来絶対役に立つ。

「行っちゃいましたね。」

「そうだねー。」
今度こそ気を取り直し、私達は海の方に向かう。

 途中で小腹が空いてしまった私は、屋台で軽く食べたのは、まぁどうでもいい話だね。

 海を目指して、街をゆっくり観光しながら歩いてると、いろいろ気づくこともある。

 例えば、私達の街との服装の違いだったり、出回ってる食料、会話内容だって海の話がよく聞こえる。

 人間って視覚と聴覚が1番大事とかって、どっかで見た気がする。
 唐突な話だけど、やっぱりこういうことをしてるとふと考えちゃうものだね。

 実際無くなったら、生活が出来そうにない。魔力感知があるからといって、それで人の区別がつくわけじゃないし。

「ソーラちゃん!」
「……ッ!!」
突然後ろから肩を叩かれて、一瞬死んだかと思った。

「偶然だね、ソラちゃん。」

「えっと…………あぁ、エリカ。」
「その間は何?私のこと忘れてたの?」
「ソ、ソンナコトナイケドー。」

「絶対忘れてたでしょ!」
酷い酷いとポコポコ私を叩いてくる。

 もう肩叩いたんだから、それ以上叩かないで。

 確か、最後にあったのは試食会以来だっけ?っていうか、なんでこっちにいるんだろう。

「何か依頼でも受けたの?ゼンは見当たらないけど、どっか行ってる?」
私の中の疑問を2つぶつけ、エリカの返答を待つ。

「ちょっと護衛の仕事でね。街を移動したいときは、こうやって護衛の依頼をするのが一石二鳥でいいのよ。ゼンは今別行動中。」
ソラちゃんは?と逆に聞き返されて、別に言って困るようなことでは無いので素直に答える。

「私も同じで、護衛の依頼でこっちに来たんだけど、暇だからロアと遊んでるの。」
「久しぶりです、試食会に来ていた冒険者の方ですよね?」

「そうよ、ちゃんと覚えててくれたのねー。」
嬉しそうにロアの頭をポンポンと撫で、私に向き直る。

 ロアには優しいんだね。まぁ、自分のことを忘れてる同業者と、自分のことを覚えてる子供に対する接し方が変わるのは、当然といえば当然だけど……

 しょうがないよ、私の記憶力は穴が多いざるだからね。

「ちょうど今日この街に着いたから、依頼を探すついでに観光してるの。」
「へー。」

「反応薄い……」

 じゃあどう反応すればいいんだろう。私には難しいことは分かんない。

「ソラちゃん最近依頼で忙しいみたいだから会えなかったけど、こんなところで再開できて、嬉しかったわ。ゼンに自慢しよう。」
「自慢できる事じゃないと思うんだけど」といいたかったけど、口が縫われたように動かなかった。

「それじゃあまた、パズールで。」

「またね、エリカ。」
「さようなら。」
笑顔で手を振って、ルンルンになって道を歩いてる。

 やっぱり、冒険者で知り合いに会えるっていうのは、だいぶ嬉しいんだね。
 生死も分からなければ、死んだんだとしてもいつどこで死んだのかなんて分からない。

 生きてるのが分かるだけで、嬉しいんだね。

「エリカさん、あんま変わってなかったね。」
「まだ1ヶ月くらいしか経ってませんよ、ソラお姉ちゃん。」

「あれ、そうだっけ。」
「そうです。」
そんなバカみたいな会話を進めてるうちに、海の堤防が見えてくる。
堤防に沿っていけば、泊地とか浜辺とかが見えてくるって風になってるらしい。

 堤防って案外高いんだね。私がジャンプすれば届くかな?
 うん、普通に届きそう。

「どうする?漁船の方か浜辺の方、どっち行きたい?」
ロアに選択権を与え、どっちに行きたいかを聞くと、人差し指を顎に添えて「うー」と可愛く考える。

「……漁船の方が、…いいです。」
「オッケー、漁船ね。」
手を握り直して、漁船が見える方向にまたまた歩く。

 なんか歩いてばっかだ。

「釣りとか漁って私、やったこと無いから出来るか聞いてみようかな?」
「私も無いので、やってみたいです。」
意気込むようにそう呟いて、私を見上げる。

 ゲーム以外で釣りしたこと無いし、頑張って漁師さんに聞いてみよう。

 「社会体験です」とでも言えばやらせてくれるのかな?

「ソラお姉ちゃん!見えてきましたよ。」
はしゃぎ気味のロアが差す方向には、船が少し停まっているのが見えてきた。

 ここだけくり抜くと、異世界感が全く無いね。

———————————————————————

 ソラさん、今度は海に行くそうです。

 そろそろ帰らないと、もう2週間近くフィシアさんの家に泊まっているのでやばいですね。










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