魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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4章 魔法少女と人神の祠

104話 魔法少女は喜ぶ

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 今日はソラお姉ちゃんとお出かけの日。でも、その前にこの指輪を渡さなければいけません。

 ネル様は「もう少しここにいられませんか……?」と恐る恐る領主様に聞いていた様子を見てしまいましたが、すみません。私はソラお姉ちゃんにこの渡せていなかった、指輪を渡さないといけませんので……

「そ、ソラお姉ちゃん?今、大丈夫でしょうか?」
コンコンと扉を叩き、震えた声になってしまいましたが、しっかり言うことが出来ました。

「んー、ロア?」
「はい!そうです……!」

「うん。遊びに行く準備してるだけだから大丈夫だけど、何か私に用?」
了承を貰ったので、扉を開けてソラお姉ちゃんの前まで小さい歩幅で歩きます。

 緊張しますね……普段しないことをすると、やっぱり緊張してしまうものなんですね。

「あのっ、渡したいもにょがあるんですっ!」

 うぅ、噛んでしまいました……

「渡したい物?」
ソラお姉ちゃんは私が噛んだことをスルーしてくれて、そう聞き返します。

「はい。いつもお世話になっているので、これをプレゼントしたくて……」
私は後ろに隠していた手を出して、指輪の入った箱を渡します。

 喜んで、くれるでしょうか?

————————————

 部屋で海へ出かける準備をしていた時、扉が叩かれた。

 それからなんやかんなあって、今。ロアからプレゼントを渡されている。
 何言ってるか分からないって?大丈夫、私も理解してないから。

 嬉しいよ?めっちゃ嬉しくて舞い上がりたい気分ではあるけどね、唐突なことで驚いてる。
 途中で1回噛んだのも、これはこれで私的にポイント高いよ。

 魔法少女ポイント、略してMP。……それはもうマジックポイントだね。

「ありがとう、ロア。これ開けていい?」
渡された箱を受け取り、箱の蓋の部分に目を向けてからロアの方に目線を戻す。

 重さ的には……そこまでない。紙とかそういうやつよりかは重くて、小物?置物にしては軽い……

 うーん、謎だ。

「どうぞ!」
上目遣いでこっちを見てくるロアの頭を撫でてから、その手を箱に移す。ロアはその行動にキョトンとしていた。

 ロアはまだ誰にも渡さないからね?まだ親元を離れるのには早い。

 と、子供の私が申しております。

「……綺麗だね。」
私は、ラピスラズリのように青く輝く宝石の入った指輪を見て、呟いた。

「嫌、でしたか?」
「ううん、全然。私の髪と同じ色のにしてくれたんだね。」

「はい!その、気に入ってもらえて……良かったです。」
恥ずかしそうな大きな笑みを浮かべて、嬉しそうに「また後で」と言ってそそくさと部屋を後にした。

「は~、指輪ねぇ。」
ベットにガタンと座り込んで、指輪を掴んで空に掲げる。

 ロアが善意でやってくれたんだから、無下には出来ないし……これ、高かったんじゃないの?魔力がこもってる。
 魔鉱石とかそんな感じじゃないかな?

 竹林の村で見つけた核石もどきみたいな感じで、(これには危険性はなさそう)所有者の魔力に同調して、色が変わるっていうよくあるやつ。

 ……そういえば最近、魔法の知識がだいぶ溜まってきたから専門用語的なのも言えるようになったね。
 なんかカッコいい。

「効果は悪くないし、つけてて損はないよね。」
右手で指輪を掴み、つい薬指に嵌めそうになった。

「あっ、危ない危ない。この世界ではどうか知らないけど、薬指だと婚約か……」

 この指輪は指のサイズに合わせて指輪の大きさが変化する、ご都合タイプの指輪だったおかげで、どこにもピッタリ嵌るってのは、どうでもいい話だ。

 結局は中指に嵌め込み、窓から差し込む陽光に翳す。

 まぁ、細かいことを抜かせば普通に綺麗な指輪だし、気にせずに使っていこう。

 遊びに行く時間になって、少し気まずかったのは言うまでも無い。

 でもロアが、「嵌めてくれたんですね」と嬉しそうに指輪を見ているのを目にし、「かわいいなー、ロアは」と頭をわしゃわしゃ撫でてあげる。

 「なんですかーソラお姉ちゃん?」と2人で楽しくふざけ合った。

 この光景を、もしもう帰ってしまったネルが見たら「ずるいですよ、2人ばっかで楽しんで!」と言われそうだなと感じた。

「実際言われそうなんだけどね……」
「何がですか?」
「何でもない何でもない。」
独り言が漏れてしまって、いつも通りに誤魔化す。この光景も、もう見慣れた。

 異世界に来て、まだ2ヶ月経ったかどうか。それなのにこんなに楽しい時間が過ごせて、楽しい思い出がいっぱいで、日本にいた頃より楽しい。

 最後の心残りは、高齢の母と父(義理のだけど)だけど、あの2人ならきっと何とかしている。
 生命力の塊みたいな人達だったし。

「———ちゃん、——お姉ちゃん、ソラお姉ちゃん!」
「あっ、ん?どうかした?」
いつの間にか自分の世界に入り込んでいて、黙り込んでいた。

 心配させちゃったかな?気をつけないとね、私は、1回入り込んだら全然戻ってこないから。

「なにか、哀しそうな目をしていたので……」
「ごめんね、変な気使わせちゃって。」
私のせいでちょっとしんみりな感じになっちゃったので、話を変えることにする。

 えー、話題話題。あっそうだ!これから海に行くんだから、海の話をしよう。

「ロアって海は行ったことあるの?」

「海ですか?ありませんね。この間は、危険と言われて行けませんでしたから。ソラお姉ちゃんはどうですか?」

「昔に1回だけ。家族と行ったっきり。」
その家族は義理のじゃない、なんて到底言えないので、まぁ詳しくは除く。

「ソラお姉ちゃんにも、その。家族っていたんですね。」

 え?私はどうやって生まれてきたと思ってるの、ロアは。
 天からポッ、って突然ゲームのモンスターみたいに沸くと思ってたの?

 詳しく聞くのは野暮な気がして、聞くのはやめておいた。それは向こうも同じだと思うけど。

「じゃあ2人とも海はあんまり知らないんだね。」
だから楽しもう、と手を引いて小走りをする。

 今から遊びに行くんだから、哀しげな感じで終わらすわけにはいかない。

 よっし、スイカでも叩き割ってやろう。

———————————————————————

 ソラさん、また過去を思い出してしまいました。
ロアに悪気はないんです、許してください。

ソラ「よかろう」

ソラ(本物)「勝手にアテレコするな!」




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