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4章 魔法少女と人神の祠

103話 魔法少女は諦める

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 ステータス確認と諸々が終わり、お腹がぐぅ~っとなってしまったので、海のレストラン的な店に入店した。

「いらっしゃいませ。お席はどうしましょう?」
「……?席とか選べるの?」
店員さんの言葉に、疑問をぶつけてみた。

「はい。外にも席がありますので。海も見えますから、そちらにします?」
「……うーん、じゃあそこで。」

「はい。では、ご案内いたしますね。」
そこで海の見える席に案内され、適当に貝の入ったパスタ?を注文した。

 ………うん?うん、うん。うんうん。

「何で私はここにいるんだろう。」
誰も聞こえないような小さな声で、ポツリとこぼす。

 えっ、私、お金貰ってギルマスに人神について聞いて……出たね。ギルド、出たね。
 他の冒険者に聞きたかったのに……完全に忘れてた。

 ステータスチェックの流れで普通にギルド出ちゃったよ。
 ……明日出直そう。

 そう考えていると、頼んでいたパスタがやってくる。

「お待たせ致しました。」
「あ、はい。」

 パスタを食べた感想だけど、普通に美味しかった。貝なんて久しぶりに食べたから、めっちゃ懐かしいね。
 今日はもう、さっさと帰ろう。


 翌日。
私は気を取り直してギルドに行くことにする。

 ギルドに失礼すると、ギルマスはもちろんいない。でもその代わりにいつも通りだけど、みんなの視線がグサグサ突き刺さる。

 まぁ、そんなの気にせず声かけるんだけどね。
まず初めに、目の前の机にいる人に聞き込みをすることにした。

「あのー。」

 そんなこんなで聞き込み調査完了。初対面の人と話すなんて、私には高難易度すぎるミッションだったね。

「SAN値がゴリゴリに削られた……」
今日も昨日と同じ店に食事に来て(食事とは言うけど頼んだのはジュース)意見をまとめようとしてる。

 してる。そう、してるんだけども。

「もう、する必要無いよね。」

 結論から言うと、何の情報もありませんでした。
人神と聞くと、反応は「人神?」「なにそれ?」くらいなもので、知ってる人なんていない。

 冒険者も知らないんじゃ、やっぱりこの海には無いのかな、人神の住む場所って。

 水竜なんていたくらいだし、可能性はあると思ってたんだけど……

「やっぱダメかー。」
ジュースをゴクゴクと飲み干し、お会計をしてから家に戻ることにする。

 そろそろ街に帰った方がいいかな?ネルはフィリオの事情で明日に帰るっていってたけど。

 フィリオは、「まだここにいるつもりなら、俺は別の冒険者を雇うから気にするな」と言っていた。

 お言葉に甘えるつもりではいるけど、フィシアさんの家に居座り続けるのもね。
 あと3日くらい……うん、そのくらいなら。

「そう、スペアステッキも作らないとね。」
誰に言ってるか分からない言い訳をしながら、帰路に着く。

 人神の件は一旦諦めるとして、私は私のしなきゃいけないことをしよう。

 家に戻ると、「おかえりなさい、ソラお姉ちゃん」とロアが迎えてくれて、私は「ただいま」と答えるワンセットを行う。
 そのまま部屋に入り、さっきも言ったようにスペアステッキの製造を始めることにした。

 何と言うことでしょう、魔導法で繋げてあげれば、ステッキの中身を一部共有することが出来るのです。

 すごい便利だね、魔導法。こんな強い魔法を生み出したつもりなかったんだけど、下方修正とか喰らいそうで怖い。

「まずは丈夫な方がいいし、安全面も考慮しないとだよね……」
魔導法で繋げるからステッキを作ることを始め、材質を決めようとうんうん唸る。

 物質変化使う?変化させるための物質が無いし、それは無理…………丈夫、物質変化、魔導法。なにか聞き覚えのあるワードだ。

 ほんとに最近、なんかで使ったような……

「そうだ、鱗があったじゃん!」

 あれなら魔方面での強化もしやすいし、盗まれないよう工夫もしやすい。
 過去の私、模造品作ってくれてありがとう。

 私の腕力で力ずくでやった部分も無いとは言わないけど、なんだかんだでスペアステッキ(仮)が完成する

「硬さは……殴り甲斐のある硬さだ。軽さは、持ちやすいし軽めだ。流石は水竜の鱗。」
軽くて丈夫とか、完璧すぎる、と思いながら完成したスペアステッキ(仮)をベッドに置く。

 うーん、悪く無いんじゃない?あとはステッキをスペアステッキ(仮)に近づけて、食品用に分けた部分を魔導法で繋げる。

 感覚的に、あれ。学校の渡り廊下的なさ。

「私に説明を求めた方が悪いんだよ。」
自分の説明力の無さに、つい独り言を漏らしてしまう。

 スペアステッキ(仮)はスペアステッキに進化した!と言うことで、繋げ終わりましたっと。

「ちょっとテストでもしようかな?」
リンゴ、もといリンの実を取り出す実験をしてみると、無事に成功。そのリンの実は私によって綺麗に切り分けられ、皿に乗る。

 これはロア達にあげてこよう。

 皿を運んでリンの実を渡すついでに、「明日海にでも行かない?危険も無くなったみたいだし、最後の観光として」と遊ぶ約束を取り付けた。

 フィシアさん達にもお礼言っとかないとね、もうすぐ帰るんだし。

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 皆さんの誕生会も無事に終わり、私はようやく一息をつきます。

「はぁー……」
つい、ため息が漏れてしまいます。

 ソラお姉ちゃんのために買った、この指輪。まだ渡せていません。
 明日こそ、明日こそと思っていましたが、恥ずかしくてなかなか渡せていません。

 今日こそ絶対。と思っていたんですが、ソラお姉ちゃんが海に遊びに行こうと言って、タイミングを見失いました。

 明日、遊びに行く前に渡しましょう。

 あ、お魚の方は、その日しっかり食卓に並びました。美味しそうに食べていて、嬉しかったです。

 ソラお姉ちゃんにはお世話になっているので、絶対に感謝を伝えたいんです。
 この前、お父さんも言っていましたが、冒険者という職業柄、いつ旅に出ても、いつ死んでしまってもおかしくありません。

 ですから、笑って話せる今このうちに、感謝の気持ちを伝えたいんです。

 指輪の箱をぎゅっと両手で握り、貸してくださった部屋の机の隅に置きます。
 明日は絶対に渡します。何が何でもです。

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 まだロアは指輪を渡せていなかったようですね。頑張れーロア!ファイトー。












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