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4章 魔法少女と人神の祠
102話 可能性 (レン視点)
しおりを挟む俺は、ある街の冒険者ギルドの椅子に腰掛けていた。
この街に来たのは、あの盗賊の一件から数日間歩き続けて、歩き続けて……ようやく辿り着いたのは、5日後。
その日はすぐに宿を取って眠りに落ち、翌日(ろくに寝てなかったから丸1日寝ていたかもしれない)にギルドに向かっていた。
ギルドに行くと、ザワザワと何か騒がしかった。
聞こえるワードをそれぞれ分けると、「青髪」「少女」「精霊術師」「Aランク」「水竜」「討伐」と聞こえてくる。
そのまま繋げると、Aランク冒険者の青髪少女は精霊術師で水竜を討伐した。と聞き取れる。
Aランク……俺は今Dランク。一体何があったら少女がAランクになれるんだ?
そんな疑問が拭えない。
そんな時、深くフードを被った150cmほどの身長の女がギルドに入ってきた。
全員が一斉にそっちの方向を向き、俺も合わせて向くことにした。
フードの隙間からは、綺麗な青髪が揺れるのが見えた。
顔はよく見えなかったけど、これだけは分かった。
完全に、日本の女の顔だ。
この世界でも、俺は神定魔法とこの顔で女を好きなようにしていた。
そこで見てきた女達の骨格のそれとは違う。女冒険者の場合、もっと筋肉がついているはずだが、そんな様子は無い。
女を見る目については、右に出るものはいない。
それだけ女を抱いてきた。
この女が気になり、俺は神定魔法、「絶対聴覚」でその女の周辺の声に聞き耳を立てる。
この魔法があれば、世界の反対側にいようと場所さえ指定すれば音が聞ける。
「あのー、ギルマスっています?」
「……あっ、今、あの、呼んできます。」
ギルド職員がギルマスを呼ぶ。
「ようやく来たか。人様の大金をずっとここに置いておくのだって、気を使うんだ。早く持っていってくれ。」
パンパンに金の詰まった布袋を女に渡し、俺は多少羨ましく思う。
女も予想していなかったのか、顔を引き攣らせていた。
それから少し間があり、女が口を開く。
「ねぇギルマス。この街に、人神の噂とかって無い?ちょっと事情があって知りたいんだけど……」
そこで女の口から、聞き捨てならない台詞を飛び出させる。
神、神と言ったか?
俺の手は震え、意識を保っているのがやっとになった。
殺す、殺す、殺す、殺す……
「人、神?僕は知らないな。」
「ありがとう、ギルマス。」
「……何も答えていないのだから、礼を言われる覚えは無いぞ?」
「私がお礼を言いたいから言っただけなんだから、素直に受け取ったら?」
会話が終わり、女がギルドから退出する。
神、神、神、神。あの女は神と言った。どう言うことだ?何故あの女は神を知っている?
ほとんどの者は、神を知らない。なのに人神だと?
この街に、神がいると言うのか?
神に至る可能性、ようやく見つけた。ようやくだ、ようやく。
ふっ、ハッハッハッハッハッハッハ。
「……殺す。」
俺はギルドから出て、また街を徘徊する。
この街の全ての噂話に耳を傾け、全ての可能性について考えよう。
ようやく見つけた細い繋がりを、切らすわけにはいかない。
俺は蓮。式家蓮だ。神に無理矢理転生させられ、今こんな状態になっている。
待っていろ、神。今殺しに行く。
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流石に話がちょっと短くなりました。
レンはフードを被った青髪の女に目をつけたようですね。
ワーニゲテー。
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