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3章 魔法少女と水の都
99話 誕生会当日 2
しおりを挟むみんなそれぞれ誕生日プレゼントを用意していて、高そうなおもちゃ?やら、ぬいぐるみ(見ただけで分かる、めっちゃフワッフワ)をプレゼントしてる人もいた。
私達のお守り、なんかショボく無い?
ふと横を見ると、ネルが自信たっぷりそうな顔をしていたので、私も胸を張らなきゃと思った。
私達が前に出ると、「あの子達は誰?」「———の令嬢よ、きっと」「青いドレスの可愛い娘は誰かしら?」「綺麗ね」「可愛いわね。どこかの令嬢さん?」とヒソヒソと声が聞こえる。
私は緊張をグッと堪えて、プレゼントを出す。
ヒソヒソ話されてるのは、多分ロアとネルが可愛いからだろう。うん、そうに違いない。
だって、ところどころ可愛いという単語が聞こえてきたもん。私なわけがない。
「ハリア、私達からも1つずつプレゼント用意したよ。」
「気に入ってもらえるかは分かりませんが、喜んでもらえると嬉しいです!」
「ハリア様のため、一生懸命作りました!」
私達は1つずつお守りを出し、最後に私が仕上げをすることにする。
ハリアは「これで完成ではないのですか?」と不思議そうな顔をしてた。
別に大した変化じゃないけど、こっちの方がいいかなと思ったから、演出含めてプレゼントということで。
こういうのは、詠唱があった方がそれっぽいよね。
「1つが2つ、2つが3つ。今ひとつに繋がらん。魔力を与え、対象を守り、援助せよ。」
3つのお守りが光を放って、溶け込んで元の場所に戻るように、1つに繋がった。
よし、成功。詠唱したのなんて久しぶりだね。魔導書の時以来じゃないかな?
「ソラお姉ちゃんって、魔法を使う時に詠唱していましたっけ?」
耳元でロアが小さく囁く。
「演出だよ。こっちの方が印象に残るでしょ?」
私も小さな声で、ロアの質問に答えた。
実際、ハリアは私の魔法に目を輝かせている。
はっはっはっ、やっぱり私の考えは正しかったね。後はこのお守りをハリアに持ってもらえば、私の仕事は終了だね。
「ハリア、これを持って首にかけてくれない?」
「はい!」
私の魔導法がかかっているから、触れただけでハリアの魔力を吸収して、ハリア以外には効果は無くなった。
嬉しそうにそれを首にかけたハリアが、にパッと笑顔になる。
「何か、すごい力を感じます!すごいです、お母さま!」
フィシアさんの方に振り向いて、ハリアは首にかかったお守りを持って見せる。
うんうん、喜んでもらえて私も大変嬉しいね。
「喜んでもらえて、ホッとしました……」
「作ってよかったですね、ロア。」
「そうですね!」
ロアもネルも喜んでるみたいだし、私も案を出してよかった。
プレゼント渡しも終わり、私の初めての誕生会が終わった。
この言い方だと、なんか私の誕生日みたいだね。
後片付けとか、最後の挨拶とかでハリア達はまだ帰れないみたいだけど、私達は帰らせてもらえた。
ちなみに、フィリオは来てないよ。今日は確か……ライナのお父さんに会いに行ったんだってけ?
領主も大変だね。事実、地位と権力と財産とか、いろいろな物が手に入るけど、それ以上に仕事は忙しい。
上辺だけを見ていても、それは分かる。
なんてったって、私でも分かったんだし。
領主なんて信頼と信用の塊なわけだし、少しでも落ちればその地位から落とされることになる。
いつも領民のこと考えて、行動して、悩んで、解決して……こんな時でも、貴族として振る舞わなきゃいけない。
本当に、難儀な職業だと思う。
一方私は、魔法少女という職業名と見た目さえなんとかすれば、とっても楽だ。
強いし強いし強い。安全だ。
……そういう難しいことは置いといて、私はパッと着替えて、パッと魔法少女服に着替えて、一瞬で上着を着る。
「はぁ……実家のような安心感。」
「もう上着が、ソラお姉ちゃんの一部になってますね。」
苦情というかなんというか、そんな笑いが飛んでくる。
いいでしょ、別に。あんな恥ずかしい格好で、どう外を歩けばいいの?
最近脱ごうかなって思ったけど、やっぱり無理。
魔法少女だけだと温度は適温に保たれるけど、上着を着てると効果がある薄まる。
最近暑くなってきて、脱ごうと思ってやめている状態が、今の私だ。
「だって、これを脱いで知らない人が見たら、私は露出狂認定されちゃうでしょ。」
人によって感じ方は異なります、というのも忘れちゃいけない。(チャールさんやルリィ達のこと)
「可愛らしい格好だと思いますけどね、私は。あっ、ソラさん。明日から何して遊びます?」
私の悩みを吹き飛ばすネルに、ジトっと目を向けてため息を吐く。
せっかく海に来たんだし、何もしずに帰るのは良くないよね。
あと、やっぱりアレも気になるし。
海の底にいるという、神の存在。水竜までいた海なんだし、可能性は十二分ににある。
私のこのティランでの、やっておきたいことリストとか作っておこう。
まず、スペアステッキ。あったら食材とか、向こうで好きに出せるし。
それから釣りとかもしてみたいね。市場行った時、魚が競りに出させれてるのを見たし。この街では、ちゃんと魚は食べられてる。
海鮮丼とか食べたいよね。
で、出来るなら神に会おう。
そんな予定を立てていると、「今から遊びに行きません?お父様は今日、外出していますし」と笑顔で私とロアの手を引く。
ロアは困ったように、それでも嬉しそうに笑みを浮かべて私を見る。
「分かったよ。じゃあちょっと散歩にでも行く?」
「賛成です。」
「分かりました。」
可愛く敬礼したネルの頭を、わしゃわしゃ撫でた。
本来なら捕縛案件だけど、フィリオは私に、少なからず、小さからずでも恩がある……はず。うん。そうに違いない。
そうでなくても、ネルが一緒にいてくれるんだからそれでいい。
手を引かれるがまま、私達は勢いよく家を出る。
私が死んだのは、終わりじゃない。始まりだ。ロアとネルと、いろんな人と出会う、新しい人生の始まり。
私はそんな世界で、自分らしく生きていこう。
照りつける日の下、私は思った。
———————————————————————
第3章、完結です。
正確にいうと、まだ後1話ありますけど本編では無く新しい章に入るための、他の人の視点の話になります。
最終点としては、ソラと同じ「神に会う」です。(盛大なネタバレを仕込んでいくスタイル)
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