104 / 681
3章 魔法少女と水の都
100話 ウバワレタモノ (転生者視点)
しおりを挟む「なんだよ、ここ。」
俺はだだっ広い平原に、いつの間にか突っ立っていて、そんな声がつい漏れてしまう。
だって仕方ないだろ。家にいたはずなのに、突然平原に立っているんだから。
俺は式家蓮。勉強もスポーツも他人よりも圧倒的に上で、そしてイケメンだ。
毎日のように女と遊び、親も金持ちで権力がある。学校も何も言えなければ、何股しようと女も金で黙る。
好きなように、好きなだけ物を買い、好きなように遊ぶ。全てが思う通りに動き、この世界は俺を中心に回ってると思えるほど、充実しきっていた。
今日は何しようか、左右に女を侍らせて学校に行っている。まぁ学校に行くのは女と遊ぶためなんだがな。
大抵のことは金と権力と顔でなんとかなった。
「チッ……金も権力も顔も、いざという時、何の役にも立たねぇじゃねぇかよ。」
そんな愚痴を吐くと、視界の端にアイコンのようなものが浮かび、ピコンと情けない音で鳴る。
なんなんだよ、本当に。早く家に帰らせろ、うっ……記憶が曖昧になってる……?
不審と不安といろんな感情がごった返していたその時、強制的に画面が開かれる。
蓮様へ
ようこそ、異世界へ。ここは私が創った世界、貴方は所謂異世界転生というものを果たし、今ここにいます。貴方は日本で死に、私が魂を回収したことによって、ここに転生させました。何も無いままだと死んでしまうと思うので、スキルを1つ差し上げます。
それじゃあ転生者•蓮、異世界を満喫してください。
神より
「は?……死ん、だ。この俺が……あ、そうだ。あのメンヘラ女に殺されたのか……」
俺は体目当てで1人の女を家に連れ込み、そのまま1夜を過ごした。
だが、俺が何股もしていることがバレ、逆上して包丁で刺された。
金で解決しようとしたが、聞く耳なんてまた無かった。メンヘラ女になんかに、あたってしまったのが運の尽きか。
その時思った。金も、権力も、顔も。全て、大事なところで無意味と化す。
そんなもの、いつか意味は無くなる。
この画面が消えると、更に文字の書いた画面が並んでいた。
名前 式家 蓮
年齢 16歳
職業 神定魔術師
レベル 1
攻撃100 防御100 素早さ140
魔法力350 魔力490
装備 神定槍
スキル 神定魔法 レベル補正
魔法 無し
SP 0
「ステータス……漫画とかのあれか?」
神とか言う奴に憤りを感じつつ、画面を見つめて俺はスキルをタップした。
「うおっ、なんなんだよ本当に……」
新に出てきた画面には、神定魔法の説明が書かれていた。
神定魔法
神の定めた魔法を扱うことが出来る。全ての魔法に神の力が宿り、通常の何倍もの威力に引き上げる。術者の腕次第で、大きく変わる。
どんな魔法か、肝心なところが書いてないじゃねぇか。
「チッ、使えない神だな。」
怒りからからか、恨み言が漏れ出る。
「別に俺は転生なんざ求めてなかった。どうして俺を転生させた、どうしてこんな変な物をくっつけて、こんなところに放り出した。」
そんなことを考えていると、怒りが抑えきれなくなるほど膨れ上がり、次第に腸が煮え繰り返るほどの怒りが溢れ出す。
俺は日本に戻る。何が何でも、日本人である式家蓮して、日本に戻ってやる。
このは魔法とやらがあるんだろ?しかも神定魔法ときた。
なら、そんなことは容易いんじゃないか。
そこで俺は決めた。
「神を殺そう。」
その瞬間、手には槍が握られた。
これで神を殺せっていうことか?神が自分を殺す武器を作るなんて、馬鹿なことだ。
絶対見つけ出して殺してやる。
あんなクソ神、俺が握りつぶす。
「まず手始めに、強くなって金を手に入れよう。」
どこか街でも探すため、俺は1人平原を歩き出した。
殺す、殺す、殺す、殺す。殺す、殺す、殺す。
殺す、殺す、殺す、殺す。殺す、殺す、殺す。
殺す、殺す、殺す、殺す。殺す、殺す、殺す。
殺す、殺す、殺す、殺す。殺す、殺す、殺す。
一歩歩むたび、何か失敗するたびに、神を恨み、憎んだ。
奪われた俺の日常、奪われた俺の生活。
全てを奪われた俺には、もう失うものなんて無い。あとは全部を、壊すだけ。
旅をしている中で、冒険者なんて職業もあったが、カードをもらうだけで何もしていない。ただの通行証として使っている。
それからも俺は、神を恨みつづけて旅をする。
神定魔法というのは、思っていたより汎用性が高かった。
神が選ぶだけあって、御大層な魔法も多いな、魔法の量がそう沢山無いのが難点だ。
俺は今日も金を稼ぐため、不本意だが盗賊団に入ることにした。
何かあったらすぐ逃げて、顔を隠してバレないように細心の注意を払った。
その日の狙いは貴族の令嬢だそうだ。
その時の俺は、馬車に身を潜めていた。
ふと、鳥肌が立つ。
俺が今まで恨みつづけて、殺したいと願ってきた神が間近にいるような、そんな気分になる。
俺は今すぐにでも飛び出したいのを我慢し、夜になった。
気を落ち着かせるために森に入り、一眠りして馬車に戻ると、全員が縄で縛られていた。
何が起こった?神か……いや、神がこんな干渉をするか?
人間……?殺しに行くか。………やめておこう。
俺は思う。今はまだ早い、もう少し力をつけよう、と。
さっさとその場から退散し、次の街にでも行こうと歩み始める。
後々冷静になって考えてみると、神があんなところにいるはずがなかった。
でも、少しでも俺の心を安らげるためにも、代わりでいいから殺さなければならない。
「なんで俺がこんな思いをしなきゃいけない……ッ!クソが……」
俺のは式家蓮。リアルを充実し尽くす、イケメンの高校1年生、のはずだった。
今日も明日も明後日も、神を殺すためだけに、俺は歩き続ける。
———————————————————————
蓮が出て来ました。またなんかしでかしそう奴ですね。ソラさんにボコってもらいましょう。
というわけで、今回が丁度100話目となりました。皆さんの応援あっての作品なので、これからもソラと私の成長を見届けてください。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる