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3章 魔法少女と水の都
97話 魔法少女はお守りを作る
しおりを挟む今日はハリアのためのプレゼントを用意するため、市場に繰り出していた。
水竜戦で疲れてないと言えば嘘にしかならないけど、やっぱり1年に1度のことくらい、ちゃんとやった方がいいしね。
「ソラさーん、この飾りなんてどうですか?」
ネルが市場の一角で、布の広げられたテーブルを覗き込んで言う。
ネルとロアも私と一緒来ていて、プレゼントを探していた。
「ハリアは男の子だし、違うのの方がいいんじゃない?」
「そうですか……」
ネルは悲しそうにこっちに戻ってきた。
ちなみにロアは、私と一緒に歩いてる。
あぁ、やっぱりロアは可愛いね。私の妹にでもなってくれないかな?
まぁ、そういう夢物語は置いといて。
でも、貴族の男の子へのプレゼントなんて、何にすればいいかなんて分かんないし……
私には兄も弟もいないから、男の子への誕プレなんてさっぱりだよ。
なら、こうさ。実用的なもの作ってみるとかどう?私の魔力使ってさ。
お守り作って、もし何かに襲われた時は魔力で防げるようにするっていうやつってどうかな?
それなら、特別感もあってお得だね。
「ねぇロア、ネル。探すより、作ってみない?」
「作る、ですか?」
「たしかに、どこかで値の張るものを買うより、心を込めた物を渡した方がいいですね!」
いいアイデアです!とネルは張り切ったように体を跳ねさせる。
ネル、スカートの時に跳ねたらパンツ見えちゃうよ。どんな輩がいるか分からないところで、美少女がスカートヒラヒラさせてたら、見る人いるでしょ。絶対。
「ソラお姉ちゃん、何を作るんですか?」
私を見上げて、こくんと首を傾げる。
ふっふっふっ、いい質問だね。
「まぁお守りとか作って、ハリアを守る的な感じで、お守り作ろうかと思ってるけど。」
どこかで、お守りを渡してもご加護が受けられないとか聞いたけど、それは買ったらの話で、加護を与える側になってしまえば問題は無い。
「お守り……いいんじゃないでしょうか?」
「お守りに魔力でも付与しておけば、それはそれで魔道具としても使えるし。」
私は、ここぞとばかりに実用性があることを強調する。
中身を数個に分ければ、防御と付与の2つに分ければいい。
私のはそれでいいとして、ネル達のは……私が魔法を使って健康祈願とかでもしてもらおう。
「そうと決まれば、早速やりましょう!誕生会は明日なので、急がないといけません。」
そう言ったネルは、市場で布を3枚買ってくる。
行動が早いね、流石領主の娘だけある。でも、大人になったらもっと慎重に行ってほしい。
私が言えた義理じゃない気がするけど。そこはどうでもいい。
と、いうことで、私達はフィシアさんの家に戻ってきたわけだけど。
「ハリア様、いませんよね?」
「見た限りいなさそうだけど……ネル、このセット先に部屋に持ってっといて。」
「了解しました。」
そそくさと部屋の扉に入っていき、私達も後退り気味に部屋に入る。
ここでバレたら、元も子もないしね。
「ふぅ、余計な気をつかって気疲れしてしまいました。」
「しょうがないでしょ、誕生日なんだから。」
私はジュースを取り出してコップに注ぎ、氷を入れて冷やして渡す。
アイスショット、ショットとして使ったことが無いんだけど、これでいいの?
ショットとしての存在意義を教えてほしい。
「ありがとうございまーす、ソラさん。」
ゴクゴクと飲んで、はぁーと一息吐くネルを脇目に、私は作業を始めることにする。
魔法少女メイキングの始まりということで、ミョルスカイ以来だね。
まず、私のうろ覚えの知識で、お守りの作り方を教えよう。
まず用意する物。
適当な大きさの布、そして結ぶための紐、中に入れる魔力を付与する物……媒体は何にしよう?じゃなかった。
あと、ハサミセットと印つけるペン、定規くらいで十分。
ミシンとかは要らないのかって?あると思う?私が魔力でくっつけるに決まってんじゃん。
あとは折ってくっつけて、切って裏返して、折って穴開けて紐をつけて中身を入れて閉じる。
はい完成。
私はその事を、実践してみて2人に教えた。
そこの描写はって?めんどくさいんだよ、いちいちお守りの作り方を口で説明するのは。
その中には、防御作用のある魔力を込めた紙(結局紙にした)を入れておいた。
この世界の人達は、魔力が無いわけではない。ただ魔法が使えないだけ。
だから、あんなめんどくさい詠唱を長々と唱えている。
まぁそれはどうでもいいとして、2人にも布を繋ぎ合わせる方法だけを伝授し、回復系の魔力を込めた紙と、元気が出る系の魔力を込めた紙を渡した。
私はって?のんびりお昼寝……は流石にしないけど、ゆったりと過ごしますよ。
お茶でも飲もうかな?茶葉はいつでも作れるし、(魔力は使うけど)お湯は魔法で簡単に作れる。
よし作ろう。お守りと言ったら神社、神社と言ったら日本、日本と言ったらあったかいお茶。
日本ではあんまり飲まなかったから、この異世界で楽しもう。
ちゃちゃっと湯呑みを作り、お茶を淹れる。
ズズズ、ズズズ、はぁ~……ズズ。
「やっぱお茶は美味しいね。日本人の舌に訴えかけてくる何かがある。」
2人が一生懸命お守りを作っている中、私はお茶を飲んで安らいでいる。
うっ、罪悪感が……でも、私はもう作ったし……
「ソラさんソラさん!完成しましたよ……って、何飲んでるんですか?ソラさん。」
「んー?お茶だよ。飲む?」
「なら一杯ください。」
何がならなのかは分かんないけど、今の私はのほほんとしているので気にならない。
「ロアも飲む?ほら、お煎餅もあるよ?」
「ソラお姉ちゃんが言うなら……お煎餅ってなんですか?」
危ない危ない。田舎のおばあさんが出てきてしまった。私の中のお婆さん像が露わになったね。
チラッと机の方を見てみると、2人ともいい感じにできていて、魔法の使い方もいい感じだ。
うんうん、ちゃんと効果も出そうだね。
「色が不思議ですが、美味しいですね……何かつまむものがあればいいんですが。」
「無いよ、そんなもの。」
その日は、部屋から謎のズズズと言う音が聞こえてきたということで、フィシアさん達が驚いてしまった。
どこで驚いてるんだろう。驚くポイント、おかしくない?
———————————————————————
誕生会が終わり、また誕生会が始まります。
ソラさんは何故かお守りの作り方を知っていますが、そこはまぁそっとして置いてください。
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