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3章 魔法少女と水の都
95話 道連れ誕生会 (ロア視点)2
しおりを挟む領主様のお父さんのその一言で、誕生会が始まりました。
貴族の皆さんは、その言葉を待っていたように皿に少しずつ食事を取っていきます。
どれも美味しそうで、私も食べいですけど好きに取っていってもいいんでしょうか?
「ロア、取り分けてきましたよ。今聞くのもなんですが、嫌いなものとか無いですか?」
「いっ、いえ!ありません。」
おどおどしている私のためか、ネル様は取り分けてくれていたようです。
本当に優しい方です、ネル様は。でも、貴族の令嬢にやらせていいことなんでしょうか?なにか、罰せられたりしないでしょうか……?
ライナ様も、あったばかりの私に色々話を振ってくれます。
別の方とは話に行かず、私と一緒にいてくれます。
私に構わず、好きに話しにいってもいいのに……と思ってしまいます。
「気まずそうですね。別に、わたしたちに気を遣わなくともよろしいですよ。」
「あっ……いや、その。」
「ふふっ、やっぱり緊張してるじゃない。」
右手を口元に添えて、おかしそうにくすくすと笑います。
なにかおかしなことをいいましたか?
私はおろおろしながら、首を傾げます。
「ライナ様の言う通り、気なんて遣わなくてもいいですよ。今回は、私が無理を言ってロアに着いて来てもらったんですから、ロアを放ったりはしません。」
パッと花を咲かせるように、ネル様は大きくはにかんだ笑顔を見せてくれます。
そうですか……そうですね。気を遣い過ぎては、逆に迷惑をかけてしまいますから、私も出来る限り気をつけたいです。
「優しいですね、ネル様は。」
私はああ言ってくれたネル様に、感謝の気持ちを込めてそう言いました。
「何言っているんですか、ロアの方が優しいですよ!今回だって、私のために……」
「ふふふっ。」
「なんで笑うんですか?ライナ様。」
自分の言葉に、堪え笑いをしたライナ様を見上げるネル様は、ジーッとライナ様の目を見つめます。
「だって、2人とも面白いもの。こういうものは、一緒にいるだけで楽しいものね。」
小さく微笑み、高級そうなジュースの入ったグラスを傾けたライナ様は、とても様になっています。
やっぱりそこは、貴族様なんだなと思いますね。
そういえば、ハリア様達も来ているはずですが、どこにいるんでしょうか?
私がキョロキョロ辺りを見回すと、フィシア様の後をピッタリとついていくハリア様がいます。
ハリア様も初めてなんでしょうか?初めてだと、やっぱり皆さん緊張するんですね。
……あれ?私と同じように、緊張してるハリア様を見ていたらなんだか緊張がほぐれてきました。
「まだ一口も食べてないじゃない。ほら、少しは食べないと体壊しますし、折角のパーティーですもの、楽しまないと損ですよ?」
グラスにライナ様は自分と同じジュースを注ぎ、「乾杯でもしましょう」と誘ってくれます。
「ライナ様、私も乾杯します!」
飲みかけのグラスを差し出し、ニコッと笑みをこぼします。
ここまでしてもらって、やらない方が迷惑ですよね。
ソラお姉ちゃんも、前に似たようなことを言っていた気がします。
「分かりました、私も乾杯します。」
グラスを手に持ち、落とさないかと心配になりますが、なんとか気を落ち着かせます。
「じゃあ、乾杯。」
「「乾杯」です。」
ゆっくりグラスを近づけ、小さく音が鳴ります。
緊張が解けた私は、お皿のご飯を話しながらゆっくり食べていきます。
ライナ様はよく話題を振ってくれて、学園での話だとか、家族の話だとか、色々聞かせてくれました。
するとネル様は、どれも少しオーバー気味に反応して、盛り上げてくれます。
そこで私がクスッと笑って(失礼かもですが)ライナ様も笑う。
これでワンセットです。
誕生会も終了が近づき、領主様のお父さんの最後の一言が始まりました。
「今日は忙しいところ、俺なんかの誕生会に来てもらって感謝する。これからも皆に、平和が訪れることを願おう。それじゃあ、好きに解散してくれて構わない。」
そう言うと、皆さんは一声かけてから出口の方に向かって言ったり、話を再開させたりしていました。
「どうだ、楽しめたか?」
領主様が優しそうな表情で近づいてきて、そう声をかけてきます。
「お父様!それはもう、とってもです。ね、ロア。」
小首をちょんと傾げて聞いてきます。
「はい。その初めての経験でしたが、その。楽しかった、です。」
「なら良かった。」
安堵したように微笑み、ライナ様に目を向けます。
「ライナも相手をしてもらって、ありがとう。ダクールの爺さんにもよろしく言っておいてくれ。」
年下のライナ様相手にも、しっかり頭を下げて感謝を伝えていて、さすが領主様だと感じます。
「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございます。お祖父様には、しっかり伝えておきます。」
ライナ様は「それでは」と挨拶をして、去っていきました。
「それでは、私たちも帰りましょうか。」
ネル様は領主様の後を追って歩き出し、私もそれを追うように歩き出します。
そうして、フィシア様の家に帰ってくると、そこにはお手伝いさんがいるだけでソラお姉ちゃんはいませんでした。
そのお手伝いさんは、領主様とフィシア様に耳打ちをして、驚いたような顔をしています。
「あいつはどれだけ俺の仕事を増やせば気が済むんだ……」
「街から危険が去ったんですから、そう言わなくてもいいじゃないの。」
2人はそう言って、「少し出かけてくる」と領主様が出かけていきました。
またソラお姉ちゃんが、何かやったんでしょうか?今度聞いてみましょう。
気になることもありましたけど、無事に誕生会が終わってよかったです。
……そういえば明後日は、ハリア様の誕生日でした。
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ロアは誕生会のスキルを覚えました。(覚えてません。)
これで次の誕生会は余裕ですね。
ロア「全然余裕じゃありません!」
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