魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
94 / 681
3章 魔法少女と水の都

91話  魔法少女は本気出す

しおりを挟む

「ルリィは終わらせる。この戦いを。」
ルリィはそう言って、精霊陣を幾つも重ねる。

 沢山の星が円の中に描かれていって、ルリィは必死に制御する。

 これで防げなかったら、ルリィはどうなっちゃうんだろう?って思う。
 たぶん、ソラちゃんが助けに入ると思う。

 だから、ルリィが失敗するわけにはいかない。

 ルリィの作った精霊陣は、アテックの力によって蒼白く燃え盛った。

 それが直接、精霊の力で作られた導火線に燃え広がり、中央が蒼白い異空間のようになる。

「ルリィの精霊の力がある限り、どんな攻撃も吸い止める!」

 吸い止めるって、あんまりかっこよく無いなぁ。
でも、そのまんまだから仕方ない。

 次の大精霊は、創命の精霊とかがいいなぁ。この前来たけど、かっこよかったし。

「グアァァァァァッ゛‼︎」
ソラちゃんの撃った、よく分からない電気の攻撃が、継続的に放たれてるような気分だった。

 これが、水竜の命懸けの一撃。
水龍になりかけの水竜だから、ルリィ、勝ちたいな。

 そうすれば信頼も出来て、依頼を受けるのに役立つし。

「今はそんなことどうでもいい。ルリィには、やるべきことが今、目の前にある。」
水竜は溢れるくらい多い力を口に溜め、それを思いっきり吐き出した。

 それが何に見えるか、分からない。水に見えたり、何かの塊に見えたり、見え方が変わる変な攻撃。

 でも、防がなきゃいけないことには変わりない。
ルリィは更に精霊陣を大きく広げ、水竜の攻撃に備える。

————————————

 ちょっと待って、あれを防ぐ気?

 あの攻撃、私は全くもって知らないけど、とんでもないってことだけは分かる。

 形は竜の形。竜の息吹、的な?やつで、それは超強化された力の塊で形成されてる。
 魔力感知では微量な魔力しか感じない。

 でも、魔力だけじゃない何かがある。空気に漂う別に力、ルリィにもある通り精霊の力、とてもルリィ1人で対処できるものじゃない。

 でも。だからって、ルリィの覚悟を無下にしていい理由にはならない。
 そして、「私が嫌だから」そんな感情的な願いで、ルリィの覚悟を汚すことは許されない。

 だから、死なせないようにする。それだけを考えて動く。

 この攻撃を防げなかったら、そんな時にすぐに対処できるように。
 それなら、いいよね?

 大丈夫、秘策を用意しといた。用意したっていうから元からあったけど。
 そう、鱗だ。この鱗たちを使って、盾を作った。

 魔導法で線を繋いで、そこに一個ずつ繋げる感じでやったら、なんかくっついて盾になった。
 思わぬ発見で、戦闘中ながら声を漏らしてしまったのは、また別の話ということで。

 そんなことを考えてる間に、いつの間にか水竜の攻撃はルリィの精霊術とぶつかっていた。

 なんていうんだろう。蒼白いブラックホール、みたいな。そんな感じなので、攻撃の力を吸って防いでいた。

 不幸なことに、私が放ったレールガンから漏れ出た魔力があそこに入っていて、ルリィの負担になっていた。

 ごめん、ルリィ。そこまで考えが及ばなかった。
まぁ……なんとか、頑張って。

 もう頑張ってるルリィに言っても、意味無いと思ったから口には出さなかったよ。

「ア゛ァァァァァァッ‼︎」
水竜は呻き声のようなものあげながら、その息吹を吐き続ける。

 水竜が飛ぶだけじゃ飽き足らず、人の魔力まで浸かってそんなことするって、常識がないじゃないの?

「ルリィは、負け、ない‼︎!」
決死の形相を浮かべながら、水竜は に対抗してそれを吸い込み続ける。

 ブゥォォォーッと、擬音にしづらいよく分からない音が出て、私の危機感が煽られる。

 もうどれだけ経ったかなんて、誰にも分からない。ルリィの死ぬ気の防御は、なんとか形をとどめている。

 水竜の力が無くなるか、ルリィが力尽きるか。絶望的な確率につい、顔に憂慮の表情を浮かべてしまう。

 そろそろ本格的にやばくなり始めた……なにか、やっぱり介入した方がいいような気がしてきた。

 後悔先に立たず。後悔なんてのは、やってからいくらでもすればいい。
 やらずに後悔するよりかは、よっぽどマシだよ。

 私はステッキを強く、力強く握り締めて、空を駆ける。
 一歩一歩に魔力をこめて、思いっきり蹴り飛ばす。

 私に出来ることはなに?私が出来ることは、なに?

 私はこうして、空を強く蹴る脚がある。私は、考える頭がある。攻撃するための魔法もあって、魔法を使うための魔力もある。

 じゃあそれを、どう使う?

「そんなのもちろん、決まってる。」
私は水竜の真横にくると、小さくこぼす。

 ステッキには大量の魔力が込められ、さっき防がれたトールの槌の何倍も密度の大きい槌が形成される。

 これは、覚悟を無下にするわけでも、汚すわけでも無い。
 ルリィが、自分のしたいことを選択したように、私もまた、自分のしたいことを選択しただけなんだから。

「ルリィ!今助ける‼︎」
今まで無言を貫いてきた分、大声で叫ぶ。それに気がついたルリィは、目を見開いて、そして、

「しょうがない子だなー、ソラちゃんは。」
その一言よりも早く、私の魔法は飛んでいく。

 高速、いや違う。神速で飛んでいくそのトールは大きく回転して、目標である水竜を捉える。

 この状態では、避けることも防ぐことも、攻撃することも不可能。

「一方的なリンチっていうのは、楽しいものだね。」
ただ冷酷に、水竜にその言葉を突き付けた。

 その頃にはルリィはもうボロボロで、精霊術も消えたり付いたり、点滅状態だ。

 早くしないと、ルリィが倒れちゃう……

 そう危惧すると、私は更に魔力を増やしてスピードを速める。

 速く、速く、速く。そして、強く。

「グギャァァァァァ!!グァァァァァァッ‼︎!」
鼓膜を破らんばかりの、強烈な咆哮に立ちくらみを起こし、なんとか耐えて前を見る。

 そこには電気が纏わり付き、ビリビリと永遠に感電し続ける、哀れな竜が1匹。
 トールの直撃した部分の鱗は綺麗に消し飛ばし、他の鱗も原型を留めてない。

 体中いい感じの焼き色がついていて、サンマを七輪で焦がした時の匂いに似ていた。

 懐かしいな。あの人達、秋にはいつもサンマを焼いてた。
 庭先から煙が立って、その匂いで起きたこともあった。

 いや、そんな考え耽ってる場合じゃない!

 今、水竜は丸焦げになってるからいいとして、ルリィは力を使って気を失っている。
 と、いうことはだ。

 今は空。私の名前じゃないよ?空の上ということは、そこで気を失えばどうなるかなんて幼稚園児でも分かりきってる。

 そう。重力に任せて落下してる。

「ルリィー!そこで落ちたら死ぬよ!」
海にドボン。そんなことになったら、私だって引き上げられないかもしれない。

 私、泳げないよ?空中歩行の魔法は、その名の通り空中を歩行するから、海の中にいたら使えない。

 だから異空間歩行とか、そういう特殊なのにすればよかったんだよ!

 結局私は、変なところで後悔した。

 神速を使って、私はすぐさまルリィの体を抱き抱え、その場で一息つく。
 よくよくルリィの顔を見ると、童顔で、愛らしいと思った。

 こんな子が、あんな風に戦ってたんだね。
綺麗で夕陽のような橙色の髪の毛が、だらっと私の手をかかる。

「綺麗な髪……って、髪留め外れてるじゃん。」

 紐でサイドテールに留めてはずだけど、何かの拍子で切れたみたいだね。

 そんなルリィを、急いで地面に横にして寝かせる。

「ここなら安全、だよね?」
不安混じりに頷いて、私は小刻みに震える水竜の前に立ちはだかる。

「……ッ!グァァッ!ルゥァァァ‼︎アァァァァ‼︎!」
なにか喚いてるけど、最初ほどのうるささは無いから無視することにした。

 ここが水竜の墓場。ここが、私が初めて竜を倒した場所。

 竜を倒すってことは、ドラゴンスレイヤーとか名乗れちゃう?

「私のためにも、倒させてもらうよ!」

 あと、これ売れば家とか買えそう!いや、国ごと動かせそうな気がする。
 これが私の手に渡った場合、フィリオ。分かってるよね?

 すると、私の魔力に何かが干渉してくる。

 えっ、なんか気持ち悪い……ゾワってする。ゾワって。
 え?神様からもらったこの力に干渉出来るって……何者?

 でも、まぁ。まずは目の前の水竜を相手しないと……

 私はさっさと終わらせるため、ミョルスカイを手にした。

 相手は動かない。照準を合わせ、出力を増幅。120%、これでいい。

「手間取ったけど、これでお終いだよ。」
ミョルスカイのトリガーに指をかけた。

「待て!娘よ!」

———————————————————————

 長くしようとしましたが、ぎゅっとまとめました。
 めんどくさかったからではありません。本当ですよ?



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...