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3章 魔法少女と水の都
89話 魔法少女は水竜と戦う(本戦)1
しおりを挟む「何か策があるの?」
私のバシッと決まった決め台詞に、ルリィがそう聞いてきた。
もちのろん。これが成功したら、だいぶ……いやめっちゃ。戦いが楽になる。
「あるよ。」
「成功確率は?」
「フィフティーフィフティーかな。」
「なにそれ?」
「半分くらいってこと。集中するから、ちょっと攻撃防いといて。」
「おっけー。任された!」
ルリィがいれば100人力ー、と胸を張って前を向いて防御の体制を取る。
実際、ルリィはこの世界に来てから初めて私と渡り合える人間で、とても頼りになる。
私の命を預けても、問題ないくらいの強さを持ってると思う。
「水竜、ここにルリィがいる限り、ソラちゃんに手出しはさせないよ。」
今度は八芒星を描き、左右に4つずつの炎が灯る。
なんで星の名前を知ってるかって?そのはまぁ、ね。察して。
「グガァァァァ‼︎アァァァァァァ!」
水竜は天に水を吐き、雨が降り出す。
よくよく魔力感知で見てみると、その1つひとつが強力な攻撃になっている。
「契約の精霊よ、ルリィの想いに従って動いて!点と点が広がり、繋がって!」
すると蒼白い炎の海が現れて、雨を消していく。
なんだっけ、蒼撃の大精霊……だっけ?この精霊の攻撃って全部蒼白いね。
私は私のやることをやるため、ステッキに魔力をゆっくり流していく。
ステッキの効果の1つ、錬成。1時間の間、好きに魔法を作れたり、1から物を作り出したりできる。
今回使うものは魔導法、物質変化、復元、錬成。
魔導法で、力が同調するものを線で繋げる。1つだけだと全く足りないので、復元と錬成を同時に使って、鱗を増やす。
壊れたものを元に戻す復元、物を1から作り出す錬成。これら2つを同時に使うと、対象のものをコピーみたいなことができる。
魔法って不思議だね。いろんなことが出来る。
それも全部魔導法で繋げ、最後に魔力を流す。
その魔力には、物質変化を施す。
今はその物質変化を流している最中だ。
ここがほんっと難しい。比べると……言っちゃなんだけど、子供のお遊びと戦争くらいの違いがある。
魔力を魔法にするってことは、魔力を流してる途中に魔法が発動するようにしなきゃいけない。
魔導法が無かったら、不可能なことだね。
魔導法様々だね、と言いそうになったけど、ルリィが隣にいるからやめておいた。
「よし、出来た。完成だ。」
私はようやく一息ついて、前を向く。
「契約の精霊よ、炎をもたらし、ルリィの周りを回転して!」
ルリィが叫び、それと一緒に炎が6つ現れた。
おぉ、ルリィ。まだ戦ってくれてたんだ。でも、そろそろそれも終了だね。
終了と言っても、攻撃をやめたら倒せないけど。
「ありがとう、ルリィ。守ってくれて。」
「どうしたの?いきなり……」
私の言ってる意味が分からないように、眉を顰めた。
酷くない?せっかく久しぶりに、人に感謝したっていうのにさぁ。
え?なに?私はそういう言葉、言わない人だと思われてたってこと。
侵害だなぁ、と呟きたくなるけどそんな暇は無い。
「準備が整ったよ。」
「……!分かった。あとは任せるよっ。」
私よりも一歩後ろに下がって、ルリィははにかんだ笑顔を見せる。
私は全身に浮遊する鱗達を一瞥してから、目の前の水竜に目をやる。
「もう、どうにも出来ないよ。手遅れってやつ?」
水竜の鱗には力を阻害する、特別な力がある。それは神に近いから、という理由なんだと思う。
でも、1つだけ弱点がある。
完全無欠で、弱点なんてない様にも見える。
だけどやっぱり、内側は弱かった。
「どれだけ大きい体をしてても、内側まで強い生物なんて、ほとんど存在しない。」
鱗と鱗に、魔導法で繋いだ線を通して魔力を送る。
「物質変化!」
「グガァァァァ?ガァァァ!!」
何かを感じ取ったのか、それを振り払おうと無作為に動き回る。
さっすが、頭がいいだけある。いや、勘がいいとも言うかもね。
魔力の感覚にも敏感なんだね。でも、遅いよ。いくらやったって、私の魔の手から逃れられることは無い。
「足掻け足掻け足掻けっ。今までこんな風に悪役じみたセリフ、初めてだね。」
「ほんと、悪党みたいだよ。ソラちゃん。」
苦笑いと一緒に、呆れたようにも聞こえる声で私をなじる。
でも、これで。
「物質変化で、水竜の鱗はただの飾りになった。それこそ、デコピン1つで壊れるくらいにね。」
私は後ろにいるルリィに、さっきのセリフとは全く似つかわしく無い笑顔で言う。
「そんな笑顔で、水竜にとっては地獄のようなこというって、サイコパス?」
「ルリィ?覚悟は出来た?いろんな意味で。」
「ごめんって~。」
特例で見逃すことにして、水竜を倒すために接近する。
「攻撃が弱くなったわけじゃないから、気は抜かないでね!」
「そんなの、分かってる!アテック、炎を星に、星を炎に!」
九芒星を手早く描き、中心に光が見える。
「燃えすすめ!」
その言葉と共に9つの炎が瞬く。
私も私で、攻撃しないとね。任せっきりは良くない。
「グワァァォォォォー‼︎」
水竜は私に恨みでもあるかのように睨み、私めがけて一直線に口を開く。
口に魔法陣のようなものが浮かび上がり、ホーミングレーザーが打ち出される。
なんでホーミングレーザーか分かるかって?そんなの……
もう追いかけられてるからに決まってるでしょ!
こうなったら、鱗を最大限利用させてもらうことにするよ。
「鱗の魔法線を切ろう。この手にある鱗だけ、元に戻せば完了。」
鱗を盾がわりにして、反射させるように攻撃を躱す。
その時に一応、追跡機能を消してやった。どうだ、魔法少女の力は。結局は、神様の力だけど。
「今度こそ、私のターンでいいよね?」
ステッキに、ありったけの効果と属性を付与させて……トール‼︎
槌のような形をとったトールは、バチバチと雷鳴を轟かせながら水竜に迫る。
後ろからはルリィの蒼い彗星、前からは私の雷の槌。
さぁ、水竜はどう動く?
警戒も怠らず、私はキッと目を細める。
———————————————————————
弱2人組がいないから、話がスムーズに進みますね。
あの2人がいたら、ソラとルリィの邪魔をしていたと思うので、退場させて正解ですね。
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