90 / 681
3章 魔法少女と水の都
87話 魔法少女は水竜と戦う
しおりを挟む「なんでそんなに急ぐのー?作戦立てるんじゃないの?」
「1人で突っ走ってんじゃねえ!」
「単独行動は、身の破壊を招きますよ。」
私に着いてきて、それぞれの言葉をかける。
説明してる暇は……少ししか無い。手早く説明しますか……
「水竜は何故かこっちの居場所が分かるみたいで、こっちを魔力ダダ漏れで睨んできてるの!」
私は走りながらも、今起こってることを掻い摘んで説明する。
我ながら、上手くまとめられてると思う。
「だから、隙なんて生まれない。1回見つかったらそれで終わり。もう終わったの。」
その言葉を聞いて、諦めたように私に言葉を浴びせるのをやめた。
「ボク達が、安易にテリトリーに踏み込んだ所為で……不覚だったな。」
いや、そんなこと言ってる暇無いから。喋る前にまず、足動かそう。
「でも、ルリィとソラちゃんが主軸で動くのは変わらないよ?」
精霊の力のおかげか、体を光らせながら私と並走してくる。
いくら加減してるからといって、まさか私の速さに追いつけるなんて……精霊術って、やっぱり不思議だね。
「ルリィは接近戦が苦手だから、うまい具合に移動させてね。」
「そんなこと言われても……」
私はステッキを握りしめ、被ったフードを取り外す。潮風が吹き抜け、顔を撫でる。
「ここだと被害が大きくなる、あっちの方に移動しよう。」
ベルクさんの提案を飲み、海岸線に沿って走り、さっきみたいに2人を抱えて小島のようなところに移動した。
これからはもう逃げられない。どれだけ逃げたいと思っても、ここまで来てしまったんだから、逃げることは出来ない。
ベルクさんの言う通り、綺麗な鱗をしている水竜だけど、それに似合わない形相をしている。
「行くよ。これに勝てなかったら、私達死んじゃうんだから。」
水竜にステッキを向け、構える。
「リーダーはルリィなのに!」
「いつの間にかリーダー感出してきたな。」
「そんなのどうでもいいだろう。」
3人で私になんか文句言ってきてるような気がするけど、よく聞こえなかった。
「どうでもよく無い!精霊よ、ルリィの呼びかけに応じて!ルリィ大精霊の加護を!」
そう言った途端、ルリィの体に蒼白い光がパッと灯る。
「やった、当たり!蒼撃の大精霊アテック!」
ルリィは、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ。
蒼撃の大精霊アテ……なんだって?よく分かんないけど、結局やることは変わらない。
「最終手段はミョルスカイっと。」
「何か言ったか?」
「なんでも」と答えて空をかけた。この光景にさっきので慣れてしまったのか、呆れた目だけを向けて攻撃の隙を見定める。
まずは、様子見でこれをっと。
「これはどう?万属剣!」
私の周りにはいつも通り剣が湧き出てきて、綺麗に並べられる。
「グギャァァァァァ゛‼︎」
巨大で細長い水竜は、四方に広がる水のレーザーらしきものを撃つ。
危ないっ!なにその技?チートだよ、チート!
それをチートである私が言うのである。
「ルリィの契約の精霊よ、ルリィの周りの水を、無害化して!」
レーザーがルリィに近づくと、ただの水に戻った。
これが精霊の力?超常現象にしか見えないんですけど。
「ソラちゃん!よそ見しちゃだめ!」
「あ、ごめん。」
私はもう一度、目の前の水竜と対面する。
いざ目の前にすると、ちょっと武者震いが……なんて、言ってられないよね。
「一斉に、放て!」
剣達は、風を斬りながら飛び去る剣は、綺麗な軌道を描いて水竜に突き刺さらんとする。
でも、その強靭な鱗を突破することは出来なかった。私の剣を、煩わしそうに尻尾を振って壊すていく。
はぁ?そんなのあり?まぁ、万属剣が効くとは一ミリたりとも思ってなかったけど、流石に完封は心にくるものがあるよ。
「契約の精霊よ、あいつに1発喰らわせなさい!ソラちゃんっ、これに合わせて攻撃して!」
そう言うと、ルリィの手から蒼白い炎が放たれる。
これに合わせろってこと?よし、トールでやってみますか。
私はトールをギュッと凝縮させ、はち切れそうなほど酷く雷が鳴り響く。
これをどこぞの螺○丸!みたいな風に、ドーンって当ててやろう!
「ギュゥアァァァァァァァァァ゛」
蒼白い謎の炎が当たった瞬間、その部分の鱗が剥げる。
私が驚いてると、「今がチャンスだ!」とか言ってディッシュが武器を飛ばした。
「ちょっ、邪魔!攻撃して来ないで。」
飛んでくる武器を足蹴りして、その勢いを使って水竜の鱗が剥げた部分に腕を伸ばした。
意外と役に立ってくれたね。攻撃には全く役に立たないけど。
「ギュォォォォォォォォ゛ォ゛」
トールを固めたその雷は、さっきの万属剣とは違って直撃する。
よっし、当たった!
……そして、精霊術の強さを知ったよ。
「ォォォォォォォォ゛ォ゛」
……いつまで叫んでるの、この水竜。
おーい、水竜さん?あ、のー、いつまで叫ぶおつもりで?
「ソラちゃん、伏せて!」
「伏せろって、どこに伏せればいいの!伏せる場所ないよ!」
「とにかく!あの弱2人組どうでもいいけど、ソラちゃんを失ったら勝てない!」
なに、弱2人組って。ディッシュとベルクさんのこと?確かに弱いけど、パーティーのメンバーを弱いとか言っていいものなの?
私は言われるがまま、すぐに空中歩行を解除して2人して地に伏せる。
「おい?なにやってんだ?」
「ディッシュが入るスペースは無いから。」
「だからなんのことだ。」
「ルリィ、独断で動きすぎだ。説明をしろ。」
「えー、そんな時間無いよぉ。」
そんな風にさっきみたいに口喧嘩をしてると、隣に伏してるルリィが、「目、瞑って」と言うので言う通りにする。
「水竜と戦うって言うのに、下調べも無しに挑むバカたちは、あそこで伸びてればいいのー」
弾んだようにそう口にしたルリィを、小悪魔系の人間なんだと感じた。
「おい、だからなんなん……ぁぁ……」
バタン、と2つの何かが倒れる音がする。
「目、絶対開けちゃダメだからね。」
「……分かってる。」
確認したい気持ちを抑え、私は眼をギュッと瞑る。
しばらくすると「もういいよ」と聞こえたので目を開ける。
そこには、よく伝説とかで聞くような竜が宙を舞っていた。
———————————————————————
水竜戦、始まりました。
即刻戦力外通知を送られたサブ2人、未知数な精霊術と、未知数なんてものじゃない魔法少女。水竜には勝てるのでしょうか?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
109
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる