魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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3章 魔法少女と水の都

86話  魔法少女は逃げる

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 もう啞然ごっこも飽きたから、3人をこっちの世界に引き戻すことにする。

「おーい、みんな?この間に水竜なんて現れたら、大変なことになるよ?」
私はステッキの柄の部分で、ツンツンとルリィをつついてみる。

 あれ?思ってたよりも硬い……?私ほどでは無いけど、(どこで張り合ってるんだろう)ふわふわな感じで可愛い武具は、思ったより有能みたいだ。

「……っ、なにしてるの?なんでルリィの体、つついてるの?」

「あっ、意識戻ったんだ。」
つつく手を止めた私は、今の状況を軽く説明すると「確かに面白い光景」と一言呟いた。

「あはは~、ほんと何やっても動かないね。そんなにソラちゃんの強さに驚いちゃったのー?」

 ルリィもさっきまで、こうだったのを完全に忘れてるね。

 当然といえば当然だけど、ルリィが叩きまくったおかげで2人はこっちの世界に戻ってきて、「なんだあれ?」「精霊術みたいな物なのか……?」と疑問の声を上げる。

「魔法だよ。魔法。」
仕方なく教えることにする。

「はぁ?そんなわけないだろ。魔法は弱いもんだ、魔物なんて倒せるもんじゃねえ。」
私をギロっと睨み、ドスを効かせて言ってくる。

 えぇ、そんな強く言わなくても……事実なんだし。

「こればかりはディッシュの意見が正しいと思うな。魔法は補助程度にしか使われることは無い。」

「ふーん。分かんないけど、強いんだからいいんじゃない?」
ルリィの呑気な一言のおかげで場は一旦収まり、少しの休憩を挟むことにした。

 信じてくれないなら、別にいいよ。信じてほしいわけでも無いし、好きにきてって思う。

「足手まといかと思ったが、思わぬ戦力だったな。」
「まぁボクは、そんな感じなんだとは思ってたよ。ルリィがそうだったように。」

「突然のびっくりが面白いんだよー。」
「それにしてもいきなり過ぎだ」とディッシュが、過去を思い出すように言った。

 何かあったのかな?話しぶりからして、昔に何かトラブルがあった風だけど。

「…………」

「…?ちょっとディッシュ、なに固まってるの?」
急に動きを止めたディッシュに、一言文句を垂れるルリィ。

「……なぁ、ルリィ。……突然のびっくりっていうのは、……あんなのも面白いのか?」
震える声で、震える手を海の方に向けた。

 まさか、ねぇ。そんなのありえないよね。

「なにが?」
くるっと半回転すると、ルリィから大量の冷や汗が溢れ出す。

 そこには、そう。がいた。

「グギャァァァァァ‼︎」
さっきの魔物なんて比べ物にならないほどの咆哮をあげ、私達にその巨大な顔を覗かせる。

「……みんなっ!逃げるよ!」

「んなこと言われても!って、おい!」
「ベルクはソラちゃんが!」
ディッシュを抱えて飛び去ったルリィに、そんな謎のお願いをされる。

 ベルクさんを抱えて飛べって?抱えて飛んだことなんて、エリカさんにしか無いよ。

 私はベルクさんを抱えて、ルリィの後を追う。

「ねぇ、ルリィ!なんで逃げるの?」
いきなり逃げ出したルリィに追いつき、疑問をぶつけた。

「ルリィに追いつく?……まぁいいや。勝てるわけない。こんな状況じゃ、勝つのは無理。もう少し態勢を立て直さないと。」

「そんなことしてたら、水竜がどっか行っちゃうんじゃないの?」

 ルリィの言った、「勝てるわけない」ってのは正論だ。あんな魔物に苦戦していたのに、不意打ちされて勝てるわけがない。

「いかないよ。水竜は、一度自分の姿を見られたら死ぬまで追いかけてくるから。完全に有意な立場に立てたら……」
「出来るよ。」
私はルリィの願いにそう答える。

 有意な立場、それって居場所を把握していい立ち位置につくってことだと思う。
 だから、それは魔力感知でなんとかなる。

「ほんと?」

「ほんとほんと。」

「お前ら!俺の話を聞け‼︎」
ディッシュが激おこぷんぷん丸な感じなので、仕方なく下ろしてあげることにした。

 まったく、命の恩人にそんな態度取るなんて……助けたのはルリィか。

 2人を下ろして、作戦会議を行うことにした。

「ちっ、いきなり過ぎるだよ。」
「何か一言かけてくれてもいいだろう。」
そんな不満の声を、「逃げるって言ったでしょー?」と言って切り捨てた。

「まず戦力になるのは、ルリィとソラちゃんだけだよ。2人は使えなーい。」

「「なんだと?」」
2人の声が重なる。

「実際そうでしょ?だから、私が遠距離から、ソラちゃんが近距離から主軸攻撃をする。」

「俺たちは?」

「んー、あそばせといて。」

 いや、どこの美容院に行った男子中学生だっ!
「適当にあそばせておいてください」「ここをあそばせて、こっちも適当に……」とか、すごい偏見だけど。

「好きにやらせてもらう。」
私の意見を通すこと無く、勝手にどんどん進めていく。

 水竜の姿、ちらっとしか見えなかったけど、とんでもない大きさだった。
 どうやって隠れてたんだってほどの、ビッグサイズ。

「ソラちゃんが、水竜の居場所がわかるみたいだから、お願いねっ。」
キランッと効果音がつきそうなポーズをとって、私に託してきた。

 なんか、殴ってもいい?殴られてもいい顔だよね、これ?

 殴りたい気持ちを必死に抑え、私は魔力感知で、辺りを感知する。 

 水竜は、……ッ‼︎‼︎
睨ん、でる?だとッ!……あまりの驚きで、キャラが崩壊してしまった。

 水竜が、ジッと魔力を放って睨んでくる。

「これ、無理かも。」
その時、私は特攻を決意した。

 私達を睨みつける水竜相手に、どうやって隙を見て攻撃すればいいの?不可能だよ?

 だって、目線が追いかけてきてるんだもん!

「作戦なんていらない!っていうか立てても意味ない!」

「ちょ、何言ってるの?ソラちゃん。」

「もういいから、行くよ!」
そう言って私は、今まで勝手に決められていたことに対する憂さ晴らし的な感じで、自分勝手に水竜に向かって特攻する。

 こうなりゃやけだね。やったりますよ。

———————————————————————

 仕方なく水竜と戦うことになったソラ、やけになったソラさんの力、見せてやりましょう。

 ちょっと無理な展開になってしまいましたね。






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