魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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3章 魔法少女と水の都

80話  魔法少女は3人を見送る

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 朝起きて、私は昨日の夜に案内されていた洗面台で顔を洗う。

「綺麗な水で顔を洗うのは、やっぱり気持ちいね。」
フィシア様の話だと、この水は屋敷の後ろを流れる川から引いてると言っていた。

 昨日、言葉遣いを緩くしていいって言ってたし、様も取ろうかな?もし、指摘されたら付ければいいし。

 呼び捨ては嫌だから、(っていうか失礼だし)さんはつけることにしよう。

「それにしても……フィシアさん、ほんとにハリアさんのお母さんなのか……」

 あの後、私はあって無いような脳をフル稼働させて考えてみたけど、どんなに記憶を遡っても、「お母さま」と言っていた。

 驚きと驚きを胸に、私は朝食を摂るために昨日のテーブルに行く。

「おはよう、ソラちゃん。朝食?」
女性にしては低い声を響かせて、昨日より少し軽めに接してくれる。

 最初は、声とも合わさって怖い印象もあったけど、フェロールさんと同じような感じで接しやすいね。

「はい、目が覚めたので。」
そう言うとフィシアさんは、隣の席に手を向けた。

 隣の席に座れってことなのかな?

 今思ったけどフィリオの家系って、フから始まる名前多くない?
 ……ほんと、今更な話だね。

「それじゃあ失礼します。」
「ええ、どうぞ。」
私が席に座ると、リデールアさんが食事を運んでくれる。

「お召し上がりください。」
「ありがとうございます、美味しそうですね。」

「昨日いただいた卵を使用しておりますので、よろしければなにか感想をお願いしたいのですが。」
料理長にお伝えしたいので、と少し体を折った状態で聞いてくる。

 料理長ね。やっぱり貴族の料理って、そう言う人が作るんだ。
 じゃあフィシアさんは、料理って作れるのかな?

 趣味程度なら出来るのかな?部屋にキッチンもあったし。ほら、貴族の嗜み、的な?

 気を取り直してご飯を食べるため、ナイフとフォークを握る。

 フレンチトースト?お洒落な朝食って感じだね。知らないけど。

 ナイフで切り分けて、それをフォークで刺して口に運ぶ。
 ……美味しい。

 昔、一回作ってみたけどあんまり上手く出来なかった。美味しくなかったわけじゃないけど、ちょっと焦げちゃったり色々アレだった。

 アレって何って?アレはアレだよ。

「味付けも丁度いいし、美味しいです。」

「それはよかったです。」
そう言って。もう一度頭を下げてから去っていった。

「ソラちゃん。昨日食べた、プリン。だったかしら。もう一度食べたいのだけど……」
少し恥ずかしそうにしながら、手で口元を覆って小声で伝えようとする。

 この顔を見たら、怖いなんて気持ちが0を超えてマイナスになったよ。

 ギャップ萌えっていうやつ?実際見てみると、何割も増して良く見えるんだね。
 しかもフィシアさんの顔は、世間一般で言う美人に当てはまるものだ。

 かっこいい感じだけど、中は可愛いとなると人気が出そうだ。

 フェロールさんとはまた違った綺麗さっていうか、なにかがあるね。

「ありますよ。よかったらレシピも教えましょうか?卵が手に入ったとき、作ってみてください。」

「レシピは料理人にとって、とても大切なものでは……」
驚いたように目を見張って、申し訳なさそうに言葉を続けた。

「別に私は料理人じゃありません。私は、美味しいって言って食べてくれる人に、いつでも食べられるようにしたいです。」
そう言いながら、ちゃっちゃとレシピを紙に書き写し、机の上に置いといた。

 プリンはこの世界にはなさそうだけど、それを誰にも教えないなんてことはしたくない。

 食事は人を幸せにするし、3大欲求の1つにも入っている。
 だから、みんなに幸せになってほしいってのもある。

 でも実際には、別に私はそんな殊勝こと思う人間じゃない。
 だとしても、身の回りの、私の目の届く範囲なら助けたいと思うし、それが人情ってものだと思う。

「リデールア、これを料理長の元へ。このレシピは、一切の漏洩を禁じます。」

「かしこまりました。」
机に置いた紙切れを丁寧に取り、言われた通りに調理場に行く。

 フィシアさんは非常に満足した様子で、「感謝します」と一言言って立ち上がった。

「そういえば、ネル達の姿が見えないね。」

 朝起きてから、まだ3人とも見てない。
ネルは寝ていたとしても、ロアが寝てるなんてことは無い。

 だって外で寝てた時も、私より早く起きてたし。
寝れないことはあっても、寝過ぎることはないと思う。

「ハリアとネルとロアちゃんは、今日は出かけると言って、部屋で準備をしていますよ。」
爽やかな笑みを頬につけながら、私に教えてくれる。

 今は部屋に篭ってるってことか。そりゃ姿が見えないわけだね。

 じゃあ、3人のお見送りでもしたら私も観光に行こうかな。

 私は3人が出かけるまで待つことにした。

 途中で暇になったから、リデールアさんを引き止めて話し相手になってもらったりしたけど、迷惑だったかな?

 話の途中で「ソラ様。あの様子だと、フィシア様はあなたのことを相当気に入ってらっしゃいますよ」と言っていた。

 冗談でしょ、そんなの。だってただの平民が、貴族の人に気に入られるわけないもん。うんうん。

 1人でしょうもないボケを挟んでいたら、3人分の子どもの足音が聞こえる。

「お母さま、行ってまいります。」
「えぇ、気をつけて。」

「お二方の言うことは守って、気をつけて行ってきてください。」
玄関先で、ハリアにそう言葉をかける。
その一方で、ネルとロアは私の元に来て「行ってきます、ソラお姉ちゃん」「お父様には内緒ですよ」と言った。

 ネル、それ関係ないよね。っていうかフィリオに言わなくて大丈夫なの?

 流石に歳的には大丈夫だとは思うけど、身分とかそう言う面でとか。
 まぁ、バレなきゃ犯罪じゃないという言葉もあるくらいだし、いいと願う。

 一応、魔力感知に引っかかるようにしておこう。

「行ってらっしゃい、2人とも。」
私は笑顔を作って、2人をお見送りした。

 そうすると、笑顔で「はい」と返してくれて、元気よく外に出た。

 若いってのは、いいね。

 そう、何度目か分からないボケを言いそうになった。

———————————————————————

 次こそソラの観光……にはなりません。
今度はロア達のお出かけの話です。

 少し短くなりそうな雰囲気が自分の中であるので、頑張ろうと思います。





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