魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

文字の大きさ
上 下
81 / 681
3章 魔法少女と水の都

79話  魔法少女はお屋敷に泊まる

しおりを挟む

 私は今、門の前から移動して屋敷の中にいる。

 部屋は白や水色といった、水の色を基調としていて、ネルの屋敷とはまた一味違っていい感じ。
 通された部屋は、リビング?的なくつろぐスペースになっており、ソファや机、だいぶ奥にキッチンがある。

「本日はお忙しいところ、誠に感謝申し上げます。」

「こちらこそ、遅れて申し訳ありません。」
ユウランさんは、さっき門の前で話していた人にそう謝罪の言葉をかける。

 リデールアさん、だっけ?確か、ユウランさんが電話口……じゃなかった。じゃあ何口なんだろう。
核石口?でいいや。核石口で話してた。

「それと、今日は皆様ぜひ泊まっていってください。部屋は、空き部屋を使っていいですよ。」
リデールアさんは、私達の方を見てそう言う。

「い、いいんですか?泊めてもらって。」
「私達、その、庶民ですし。」
ネルの家に行ったことがあると言っても、流石に泊まるなんてのは私としてもキツイ。(心の方が)

「ネル様のお友達ですから。」
その一言で、全てが片付けられてしまった。

 そこで断ったら、言外に「私達はネルの友達じゃない」って言ってるようなものだから、断ることが出来なかった。

「では、私は退出しましょう。」
ゆっくりお話しして行ってください、とだけ言って、部屋から退出した。

「では、私も。ネル様、粗相の無いように。」
ユウランさんも、同じように退出する。

 それから、ネルとハリアは適当に話をして盛り上がり、次は私に話が振られた。

「それで、ソラお姉さまは他にどんな魔物と?」
ハリアは質問攻めをしてくる。

 そんな一気に話されても、答えられるものも答えられないよ。

 目を輝かせるハリアの手を退けて、はははー、と薄く笑っておいた。

 そろそろ日も沈みかけていて、もう観光はできないな……と私は少し落ち込んでいた時、部屋のドアが開く音がした。

「ハリア、ただいま。」
若い女性が入ってきて、ハリアに一言かける。

 その女性は手慣れた手つきで紅茶を淹れ、私たちの元に来て飲み始める。

「ネル、久しぶりね。フィリオ様はどこへ?」

「お久しぶりです。お父様はお仕事が忙しく、また後日お伺い致します。お爺様の誕生日までには来ますから、大丈夫ですよ。」
礼儀正しく振る舞い、いつものネルとは全然違った雰囲気がある。

 やっぱり、腐っても貴族だね。いや、別に腐ってはないよ?

 1人で謎の訂正をしているうちに、話題は私達にズレる。

「2人は私の友達です。左から順に……」

「ろっ、ロアです!」
「空です。」

「ロアとソラね。わたくしはフィシアと申します。もうじき夕食ですから、食べていってください。」

 さすが貴族といったところか、他人との接し方が分かっている……

 輝かしい笑顔を見た私は、心の中でそう感じた。

 言われた通りにフィシア様についていき、食事の席に座ることになった。

 私のメンタルは、そこまで弱くない。なんとか耐え切った。でも、ロアはダメだった。
 少し顔色を悪くして、ゆっくりナイフを動かしていた。

 ご飯自体は今まで食べたことないほど美味しく、貴族クオリティに圧巻させられた。

 ちょっと、シェフを呼んできて。
……何言ってるんだろうね、私。

 そんなことはどうでもいいとして、こんなご飯をご馳走になったからには、何かお返しをしようと思いたった私は今、キッチンを借りているわけですよ。

「とは言っても、何作ろう。」

 小説や漫画では、こういう時どんな料理作ってたかな?

 思い出せ~、軽くて簡単に作れるもの。出てこい~。……デザート系でいこうかな?

「デザートって、結構めんどくさいんだよね。」
後片付けとか、工程のことを考えると辞めたくなってきた私は、ボウルをくるくる回転させていた。

 うーむ、なら私の作りたいものを考えよう。
……それなら、プリンかな?前も言ってた気がするし。

 お?いいんじゃない?プリンならそこまで難しくないし、普通に美味しいし。

 プリンアラモードとか作っちゃう?よし作ろう。


 SORA'Sキッチンにようこそ。

某料理番組のパロから始まる料理って、なに?
 そんなことを思った私は、ボウルに材料を入れる。

「プッリン~プッリン~。」
私は泡立て器もどきで卵と砂糖をかき混ぜる。

 この世界にはあんまり卵が無いから(保存が出来ないから)プリンは希少料理になりそうだね。

 プリンが希少料理……お手軽な、プリンが……

 なんか急に笑えてきて、混ぜながら笑いを堪えるという非常に大変な時間を過ごした。

「えっと、確かここにミルクを。」
ミルクは比較的安いので、買ったものだ。

 お店に私が渡してる食材は、ほとんど魔法で作ったものだけど、買ったやつも混じってる。

 理由は単にめんどくさい。
お客様のことを思って、一つ一つ丁寧に作らなきゃだし、地味に魔力持ってかれる。

 1ヶ月分だと、私の全魔力と半分くらい。
だから、普通に買えるものは買ってる。

 っと、そんな話をしている間に全部混ぜ終わった。

「あとはフライパンに熱湯入れて、蒸し焼きにしたら完成。」
貴族サイズのフライパンに5個容器を入れ、蒸し焼きにする。

 ちなみに、それをもうワンセットやってる。
自分でも、「さすがに作り過ぎたかな?」って思ったもん。

 この工程はカットで。

 そして固まったそのプリンを、次はキンキンに冷やさせてもらいます。

 普通に冷蔵庫に入れてもいいけど、今回はSORA'Sキッチン。私の料理は一味違う。

 アイスショットとウォーターを掛け合わせ、即席私専用冷蔵庫の完成。(私の魔力生のため、温度は超低温)

 アイスショットは遠距離の敵の目とかに刺して、動きを止める魔法だし、ウォーターは飲み水を作る魔法。
 それがこんな風に役に立つなんて、さすが魔法少女。格が違うね。

 そして、冷やし終わったプリンをちゃんとした器に移し、フルーツを乗っけたら完成!

「10個、作り過ぎだね。」
机の上に乗った大量のプリンを見て、私はため息をこぼす。

「ソラお姉ちゃん、それなんですか?」
私がジトっとそのプリンの山を見ていると、ロアが指を差して聞いてきた。

「プリンだよ、プリン。お礼にと思って作ったけど、作り過ぎちゃって。」

「そうなんですね……」

 ステッキにプリンを収納し、(器は後でちゃんと返すよ)フィシア様とハリアを呼ぶ。

 2人とも寝巻きに着替えていた。

「今日は泊めていただかせてもらう上に、料理までご馳走してくださり、ありがとうございました。」
私は出来るだけ礼儀正しくなるよう、細心の注意を払って頭を下げる。

「ソラちゃん、堅苦しい言葉遣いでなくいいのよ。」
フィシア様はそう言ってくれたので、私は少し言葉遣いを緩めることにする。

「お礼として、プリンという食べ物を作りました。」
どうぞ、とステッキから5つ出して、その場にいた私を含めネル、ロア、フィシア様、ハリアに渡す。

 フィシア様とハリアはスプーンでプリンを掬い、匂いを嗅いで食べる。

「「……っ‼︎」」
さすが姉弟、反応がとんでもなく似ている2人は、とても面白かったかわいかった

「……美味しいですっ、‼︎」
「そうね、甘くて食感もいいわ。作り方は…リデールア、分かるかしら?」

 うんうん。好評、好評?……お母様⁉︎
えっ、姉弟じゃないの?

 なんか今日、疲れてるのかな?
私の耳は、腐ってる。そういうことにしておこう。

———————————————————————

 今回、やりたいことが多くて無理矢理詰め込んだせいで、大変なことになりました。すいません。

 あの後の説明を簡単にすると、好評をもらったソラは、それを見た後自分達も食べる。ロアもネルも喜んでくれて、自分の耳の頭を休めるためにすぐに寝た。

 こんな感じです。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

実家から追放されたが、狐耳の嫁がいるのでどうでも良い

竹桜
ファンタジー
 主人公は職業料理人が原因でアナリア侯爵家を追い出されてしまった。  追い出された後、3番目に大きい都市で働いていると主人公のことを番だという銀狐族の少女に出会った。  その少女と同棲した主人公はある日、頭を強く打ち、自身の前世を思い出した。  料理人の職を失い、軍隊に入ったら、軍団長まで登り詰めた記憶を。  それから主人公は軍団長という職業を得て、緑色の霧で体が構成された兵士達を呼び出すことが出来るようになった。  これは銀狐族の少女を守るために戦う男の物語だ。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...