73 / 681
3章 魔法少女と水の都
72話 魔法少女と出発の日
しおりを挟むということで出発の日。
毎回毎回、テンポが速いんじゃないかってツッコまれそうだけど、これは小説でもなんでもない。作品じゃないんだよ。
そう言うのが欲しかったから他所に行って。私は私の人生、魔法少女生を過ごしてるだけだから。
とまぁ、いつも通り脳内で変な妄想をしていると、馬車がやってくる。
「ほ、本当に行くんですよね?あの、私、迷惑になりませんか?」
「ここまで来て、行かないなんて言う方が迷惑だよ。」
私は心配そうにしているロアの頭を、ぽんぽんしながら言った。
今はネルの家の前。
馬車を取りに行って、私達はここで待ってるのいうわけ。
実際にその日になってみると、なんか緊張するものだね。
テストとかでも早く終わってほしいから、「早く来て」とか思うけど、いざ来ると「やめろー」ってなる。
こうなるの、もしかして私だけ?
「お待たせ致しました、ソラさん。」
馬車の窓を開けて、手を振りながらニコッと微笑む。男の子ならイチコロな笑顔を見て、私も笑い返す。
この世界の女の子たちは、なんでこんな笑顔が可愛いんだろうね。
私とのレベルを比較するとちょっと悲しくなったため、すぐさまやめることにした。
「ソラさん、ロア、ティランに行きますよ。早く行かないと時間が無くなってしまいます。」
「分かってるよ。今乗るから。」
ロアの手を引き、庭道の途中で止まった馬車の中に入る。
馬車に使われてる木は、光沢があってめっちゃ綺麗。そして馬車の後ろには少しだけ荷物が置いてあった。
馬車のに入ると、中でちょこんと座るネルがいた。
ネルは少し控えめだけど、綺麗なドレスを身に纏ってた。
多分、街に着いた時のために来てるんだと思う。
「おはよ、ネル。」
「おはようございます、ソラさん、ロア。」
「お、おはようございます。」
ロアは初めての馬車だからか、キョロキョロと中を見回している。
「適当に座ってください。クッションに座ると、痛くなくていいですよ。」
ネルは両手に2つのクッションを持って、私とロアに渡した。
おぉ……ふっかふか。
ふかふか過ぎてふっかふかだぁ。凄い、めっちゃいい綿使ってるよね。高級だよ、高級。
「流石貴族、クッションまで格が違う。」
「ふわふわです……」
私達は動く馬車に揺られながら、もふもふとクッションを触っている。
あっ、これ凄いいい。嵌ったかもしれない。
「そ、ソラさん?ロア?危ないですよ、座らないんですか?」
席、空いてますけど……と力無く指差した。
忘れてたけど、ここ馬車だったね。座らないと、揺れでこかねない。
手に持ってたクッションをネルの隣の席に置いて、私はそこに座る。
ロアの方は、ネルの左前辺りにクッションを置いてた。
「大体どのくらいで、ティランに着くの?」
「大体3日ほどですね。」
私は一瞬固まり、思考がぐちゃぐちゃに飛び乱れた。
え?3日‼︎ブラジル行ったってそんなかからないよ、ティランって遠過ぎない?
この世界基準は分からないけど、まさかこれが普通なの?
いろんなとこ行きたいけど、こんな時間かかるなんて……自分専用の移動道具的な何かが欲しいくなってきた。
「ゆったり揺られてたら、一瞬ですよ。今はソラさんやロアがいるのでみんなで話していれば、きっとすぐです。」
今までネルは、1人でこの時間を過ごしてたんだよね、それに比べたら全然マシなのかな。
馬車の代わりね、魔法少女といったら……やっぱり黒猫じゃない?
でもどうやって乗るんだって話だよね……
大きくしてまたがる?
猫のイメージが崩れ去りそう。
猫バ○みたいに出来たり?
そもそも生物として確立出来なさそう。
悩むところだね。
そのままゆらゆらと馬車に揺られながら、ゆったりと話していたら、ほんとにいつの間にか夜になっていた。
言い方が合ってるかどうか知らないけど、御者さんが「今日はもう休憩しましょう」と言っていたので、ご飯を食べることにする。
「料理くらいなら、私が作るよ。」
「いいんですか?」
「別にいいよ。減るものじゃないしね。」
そう言って調理道具を次々と出していくと、やはりというべきか御者さんは驚いていて、そんなものを無視したロアは「手伝います」と取り出した野菜を切る。
「あっ、私も手伝いますよ!」
「大丈夫、気持ちだけ受け取っとくよ。」
「はーい」と両足を小さくパタパタとさせて、料理風景を眺める。
流石に護衛の料理を手伝わせるわけにはいかない。
今は護衛の依頼としてやってるし、お金も貰うんだから、そこのところハッキリさせないといけない。
今私が作っているのは、もちろんカレー。
こういう山とかで食べるものといえば、まずカレーが一番に出てくる。
明日の昼ごはんにカレーうどんでも作りたいから、少し多めに作っておこう。
私の収納に、収納できないものなんて無いからね。
いつも手伝ってるからか、ロアはテキパキと野菜を処理していき、その光景を見たネルは「凄いです…」と呟いてる。
切り終わった具材を軽く炒め、ウォーターで水を入れる。
そこにこれ、てれれれってれ~、スパイス~。
十何種類ものスパイスをパッパッと、たくさん入れてかき混ぜる。
その間に、ロアに飯盒炊爨をしてもらうことにした。
いい香りが漂ってきて、私は空腹のせいもあって 涎が出てきた。
「美味しそうな匂いです。カフェにもあった、かれー、というものですか?」
かれーって、なんか可愛い。
「そうだよ。まぁ手間がかかるから、盛り付けは普通だけど。」
そう言っている間にも米が出来上がり、私は御者さんとネルを呼ぶ。
カレーと米を囲うように座り、御者さんは「私もいていいのでしょうか」と言っていたけど、1日中あんなところに座って疲れてるだろうからって、一緒に食べた。
ちなみに御者さんは、30歳手前くらいの女の人。
ネルが乗るから、女の人の方がいいだろうというフィリオの配慮だそうだ。
仕事大変なのに、気がきくね。
仕事が大変なのは私のせいだったということを忘れ、私はよそったカレーをもぐもぐ頬張る。
日本のルーのカレーも、普通に美味しかったけど、自分で1から作ったカレーは、もっと美味しいね。
それから私たちは就寝することになって、それぞれが専用の寝袋?みたいなのに入ってた。
私の感想は、「貴族でも、そんなふうに寝るんだ」だった。
ネルのためにも、もっと速くてもっと快適な旅を届けたい。
いつか家でも作ろうかな?私なら、なんだかんだいって出来てしまいそうで怖いけど。
———————————————————————
馬車に乗っても書くことが無いので、いっそ馬車に乗る時間がほとんどなければいいんじゃないかと考えたので、いつか高速な乗り物を手にします。
世界観とかは気にしません。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる