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3章 魔法少女と水の都

71話  魔法少女は頼まれる

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「へ~綺麗ですね。いいですね。」
エリーが緋色の羽をくるくると回しながら、息を吐いた。

 ピクニックの日から1日後、私はエリーに羽を見せてみたら見ての通り楽しそうに言っている。

「まぁ、色々あってね。」

 昨日、興味本位でその羽を鑑定眼で確認したところ、凄いことが分かった。
 それがこれだ。

神鳥の天翼

この世界を創造した神が生み出した、神が認めた者にのみ渡される神鳥の羽。
このことについて知れる者も、神が認めた者のみ。

 とのことだ。
いや、神、神、神、神。神が認めた者?転生者ってこと?それなら私は含まれると思うけど。

 御伽噺が実際に目の前で起こったのだけで、私のキャパは一杯一杯だったのに、こんな神がどうたらとか言われても……

「ピクニックで何があったんですか、ソラ?」

「まぁ、色々……」
「……言いたくないなら、言わなくていいよ。」
そう言って、私に羽を返してくれた。

 言いたくないなら…じゃなくて、色々なものは色々なんだよ。
 だって、歩いてたら降ってきたんだもん。色々としか言いようがない。

 まぁ、そんなことはどうでもいいね。

 そんな感じで、暇潰しのためにエリーと世間話に花を咲かせる。

 そうしてると、タッタッタッ、と足音が聞こえてくる。

 足音?だんだんこっちに向かうまできてるのは、気のせい?

「ソラさん、いますか?」
扉をゆっくり開け、一歩踏み出してキョロキョロ見渡した。

 ネル、なんでこの宿知ってるの?
えっ、誰から聞いたの?っていうか、勝手に家出てきていいの?勝手かどうかは知らないけど。

「ソラ、呼ばれてます……よ?ん、え?あ、」

「ちょっとネル!身分隠して、エリー困惑してるよ!」
私は服装とかがもう、貴族貴族してるネルにそう叫ぶように言う。

 エリー見てみて、『ん、て?あ、』って言ってるよ?壊れちゃってるよ。

「ね、ねぇ?ソラ。あの人って、そう、なの?領主様の、お嬢様?違うよね、きっと。うんそうですよね。」
エリーはあまりにも困惑したのか、現実逃避をし始める。
ずっと首を縦に振り、うんうん、と言ってる。

「エリー、正真正銘の領主の娘のネルだよ。」
「…………」

 エリーは黙りこくってしまい、頭を押さえながら裏の方にゆらゆらと歩いていった。
 なんかごめん、エリー。

 それからエリーたちのためを思い、場所を変えてネルと話すことになった。

「で、ネル。何か話でもあるの?」

「はい。お父様からお話を賜っています。」
それからフィリオの伝言をネルは私に伝えようと、説明し始める。

 まぁ、まとめるとこんな感じ。

今度、フィリオのお父さんの誕生日と、ネルの従姉妹の誕生日があって、2人は今少し遠い街に住んでいるらしい。
 フィリオは誰かさんのせいで仕事が忙しく、直前まで行けないそうだ。
 だから、誰か信用できる人にネルとフェロールさんの護衛を頼みたいということらしい。

「それを、私にと。」

「はい。ソラさんにです。」

 そうなっちゃうか……そうだよね、ネルとも面識があって、自分で言うのもなんだけどある程度実力も信頼もフィリオにあるし、そうなっちゃうよね。

「誕生会ね。貴族の誕生会って、どんな感じ?」
そもそもこの世界の誕生会すら知らないけど、貴族基準だけ聞いておくことにする。

「ある程度の身分の人は、色々な家の方々を呼び、料理やショーを見ます。」

「へー。」

「子どもの場合は、お友達を呼んだり、接点の多い家の方を呼んだりします。」

 だから、従兄弟の誕生会にも出席になきゃってことだね。

 それからネルは、ちなみにお爺様の誕生会は出ません、と言っていた。
 理由を聞いたらはぐらかされた。何か嫌な人でもいるのかな?

「それで、どこに行くの?行き先ぐらい教えてほしいけど。」

「それは、水の都、ティランです。」
「水の都……」

 水の都と言ったら、ベネチアしか思いつかないんだけど。

「軽く説明します。ティランは、海岸線に沿っており、魚介類が多く食べられます。そして大きな川が3つ流れていて、どれも透明で綺麗なんです。」
いいところですよ!と楽しそうに笑っている姿を見ると、私も断りにくくなってきた。

 それにしても水の都。そして魚介類。
1回だけこの世界でも魚は食べたけど、そこからながれてきてたのか。

 でも少し遠いって言ってたし、魚なんて鮮度とかの問題があるから無理なのか……
 諦めるか、何か策を講じるか。その場で考えてみよう。

「分かった、いいよ。受けるよ。」
「いいんですか⁉︎ありがとうございます!」
綺麗な姿勢で頭を下げ、嬉しそうにしているのを見ると私まで嬉しくなってくる。

 最近ネルとよく遊んでて忘れてたけど、こういう細かいところを見るとちゃんと貴族なんだなって思う。

「でも1つ、ロアも連れてきていい?」
「大歓迎です。」
むしろ来てください、と即答した。

 ごめん、ロア。道連れにさせてもらうよ。
旅は道連れ世は情け、意味が合ってるかどうかは分かんないけど、私だけが行くのはロアに可哀想。(それは建前で、本心は1人でたくさんの貴族と相手したくないからなんて言えない)

 それからこのことをロアに話すと、「なんで勝手に決めちゃうんですか⁉︎」と焦ったように言っていた。
 結局諦めて、一緒に行くことになったのでテレスさんに許可を貰いに行くと、「貴重な体験だし、ソラさんがいるから行ってきてもいいですよ」と案外簡単に許可が出た。

 護衛の仕事なんて初めてだし、馬車の長距離移動も慣れてないから不安もあるけど、楽しみも多い。

 水の都ティラン、早く行きたいね。

———————————————————————

 ここからようやく本題に入ります。
今回はミョルスカイの出番は少なそうですね。
いや、これは嘘かも知れません。っていうのも嘘かも知れません。






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