魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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3章 魔法少女と水の都

70話  魔法少女は鳥を探す

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「鳥さんさがしに行きたい!」
サキはネルの御伽噺を聞いたせいか、鳥さん鳥さんとウキウキした様子で言ってくる。

「サキ、鳥さんを探すのはいいけど、迷惑かけちゃダメだよ。」
「鳥さんいるもん!探すもん!」
そんなト○ロいたもん!みたいな感じで、私達に訴えかける。

 いや、ピクニックに来たわけだし……
でも、私も気にならないわけでもない。

 私は大人だ、この中では大人だ。だからここは、大人な対応を…といきたいところだけど。

「もうすぐ頂上だし、弁当食べ終わったらついでぐらいに探すんだったらいいよ。」

「いいの?やったー!!」
わーいわーい、と満面の笑みで飛び跳ねた。

 元気なことは大変いいことではあるんだけど、はしゃぎずると危ないよ。

「サキは元気ですね。若いって羨ましいです。」
「いや、ネルも十分若いよ。」

 更に私も若いじゃんと言われたような気がするけど、そんなものは無視する。

 サキは「早く早くー!」と先に走って行って両手を上げて言ってくる。

「そんな急ぐと怪我するよー!」
「サキー、早く言っちゃダメだよ。」
ロアは先を止めるために一緒に走り、サキも一緒に走る。

 なんか、すごい追いかけっこしてるみたいに見えるんだけど。

 頂上に行く途中、サキがこけかけてなんとかロアが受け止めたっていうことが起きたけど、それ以外はとても平和に進んだ。

 これも私の魔物を追い払ったおかげだね。
ナイス、過去の私。

 今、過去の私から『礼はいらない、未来の私』と聞こえた気がした。
 ありがたくこのピクニックを満喫させてもらうとしよう。

 その後、私達は無事に頂上に着いた。
別に高い山では無いから、足が痛いなんてことは無かった。

 頂上からの景色を見てみたり、そこにレジャーシートのようなものをひいて、みんなで弁当を食べることにする。

 この世界には、冷凍食品という超便利食材がないから、作るのは大変だったよ。

 みんなでワイワイと騒ぎながら、私の作ったお弁当を食べる。
 こんな、青春みたいなことをしたのは人生で初めてだね。

 私のお弁当はここまでということで、次はサキが探したがってる鳥を探すことにする。
 といっても言い換えればただの下山なんだけど。

「鳥さーん。どこかな~?」
木の枝を上下に降りながら、上機嫌に山を降りる。

 子どもは、このくらい純粋でいいのかもしれない。そっちの方が可愛いしね。
 めっちゃ理知的な子どもだったら、絶対に関わりは持ちたくない。

 それにしても、鳥ね。鳥くらいならいると思うけど、幸福を運ぶ緋色の鳥なんて、ネルの話した御伽噺でもない限り現れないでしょ。

 これがフラグになって……なんてことはもちろんなく、今は山の中腹くらいだ。

「鳥さん、いない…」
「幸福を運んでくれる鳥さんなんだから、そんなすぐ見つからないよ。」
少し機嫌を損ねるサキを、ロアはそう一言かける。

「サキ、これは御伽噺です…んぐっうぅ、うう…」
「あー、やっぱり山の空気は美味しいね。」
夢もへったくれも無いことを言い出すネルの口を両手で塞ぎ、さも何も無かったかのように深呼吸をする。

 いや、別に嘘じゃないよ。空気は美味しい。美味しいから美味しいと言ってるんだよ。

 美味しいものを美味しいと言って、何が悪いの?

 ……言ってることはこの前と一緒なのに、状況が違うとこうもバカみたいに聞こえるんだね。


 だけど、幸せというのは突然やってくるもの。
私達がこんな変なことをしていても、幸せはやってくる。

 何が言いたいのかって?見てたら分かるよ。

 突然私達の頭上から、中学生の時に習ったような管楽器のような、どう例えればいいか分からない美しい音色がに響き渡る。

 私達だけの世界を作り出すように、その音はぐるっと私たちの真上を回る。

「お姉ちゃん、鳥さんだよ。鳥さん、いたよ!」

「綺麗……」
ここにいる全員が真上を向いて、ロアはポツリとこぼす。

 太陽光のせいで色は判断出来ないけど、鳥ってほんとにいたんだね。

「……いました。本当に、いました。」
目を大きく開き、その音に聞き惚れるようにこぼす。

 3人とも、感想のような言葉を小さく言っているのに、私は何も言ってない。
 何か言わなきゃダメかな?

 私は内心あたふたしていると、空から3つの光が降ってくる。
 鳥はありえないほど高度を上げ、あっという間に光だけしか見えなくなる。

「鳥さん!待って~。」
ぴょんぴょん空に向かって手を伸ばすけど、あんな宇宙くらいまで高い場所に、手は届かない。

 あんな高かったら、私でも不可能だよ。
っていうかあの光って羽だよね。だったら落ちてくるよね。

「サキ、ロア、ソラさん!上を見てみてください。何か降ってきます!」

「ほんとだ!鳥さんの羽?」
「ソラお姉ちゃん、あれ取れますか?」
予想通りこっちに落ちてき始める羽根を指差して、ロアは私を見上げる。

 私から見ると上目遣いに見えるんだけど。
光も十分綺麗で眩しいけど、今はロアの方が眩しい……

 そんな顔で見られたら断れないじゃん。元から断るつもりは無かったけど。

「分かったよ。」
私は一瞬だけ足を身体激化で強化し、思いっきりジャンプする。

 うぉっ高っ!自分でも自分を人間かどうか疑うほどの高さだよ、これ。

 降下し始めるので、その途中で3枚の羽を掴んでから着地した。

 羽をちらっと見てみると、黄色みがかった緋色をしていた。

 ……御伽噺じゃ、なかったの?そもそもいきなりすぎでしょ、これ。こんないきなり、神様のいたずらか何か?

 考えても仕方ないので、私は3人の元に戻る。

「3枚しかないけど、どうする?」
私は3枚の羽を広げ、3人に見せる。

 ロア、サキ、ネル。これでもう3枚。私の分が無い……

「私とサキで一枚でいいです。なので、ネル様とソラお姉ちゃんで残りの2枚を持っていってください。」
私はそういってくれたロアの頭を撫で、羽を1枚手渡す。

「私にもください、ソラさん。」
「はい。」

 ピクニックをしていたはずなのに、いつの間にか緋色の鳥の羽に全て持ってかれてしまったのであった。

 ロアとサキはテレスさんにプレゼントするそうで、ネルは秘密と言っていた。
 なんなんだろうね。秘密って。

———————————————————————

 この羽の話を考えたのは、この先で羽を使いたかったからです。
 この羽を有効活用していきたいです。

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