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2章 魔法少女と竹林の村
65話 ロアとお店と魔法少女
しおりを挟む私はフィリオとマリンさんに、道作りの全てを頼んだので暇な時間が出来た。
その時間を何に使うかは簡単、惰眠を貪ったり散歩をすることに使う。
どこからか、そんな暇なら手伝え!と、怒られた気がするけど宿屋の部屋にそんな声が聞こえてくるはずが無いので無視をする。
「やっぱり惰眠は至福だね~。」
枕を抱きながら、脚を小さくぱたつかせる。
働くのは疲れるし、やっぱり遊ぶのが1番だ。
スマホも小説も漫画もアニメも無くて、ここには娯楽は少ないけど数日くらいなら楽しく過ごせる。
「ちょっとお店に顔出そうかな?」
小腹も空いてきたことだし、行ってみてもいいかもしれない。
ベッドに立てかけてあるステッキを手に取り、腕を大きく伸ばしてから扉に手をかける。
ロアもいてくれたらいいね。話し相手になってもらおう。
えっと、今は多分11時ぐらい。
今日は定休日じゃないし、閉店時間は3時。まだまだ大丈夫でしょう。
この世界の物価とかその辺りはよく分かんないけど、お給料はあれでいいのかな?
足りてる?って思ってる。
ボーナスとか付ければいいのかな?
テレスさんは、『住み込みの見習いは、この程度です』と言っていた。
私的にはもっとあげたいんだけど、その辺りのお金の話は、テレスさんにやってもらってるからね。
私にはそんな権利がないんだよ。
私はエリーに出かけることを伝えて、カフェに向けて歩き出す。
私も私の家とか欲しいなって、最近思う。
エリーのご飯も、この宿屋も居心地はいいけど自分の家はやっぱり欲しい。
今度お金貯めて買おうかな?
家自体は魔導法のお陰で、ロックウォールで作れるし核石は自力でなんとかなる。
「クリームソーダっ、クリームソーダっ。」
私は好物のクリームソーダを求めて、(もちろんロアのことも)カフェに向かってルンルンで歩く。
お店が視界に移り、入り口には行列までとは行かなくとも、だいぶ人が並んでいた。
今日は、ちょっと混んでそうだ。なにかあったのかな?
最近、人がいなくなったり多くなったり色々あるね。
私は仕方なく裏口から失礼し、私は厨房を覗いた。
「…オーナー。何か?」
「あぁえっと、クリームソーダ飲みに来たんだけど、混んでたから……、手伝おうかなって。」
私は、年下のはずのレインの迫力につい、思ってもないことを口に出してしまった。
言っちゃったよ、手伝う気はなかったけど手伝うって言ったからには手伝わないと……
「ソラさん…来てたんですか。」
「手伝いに来ましたよ。」
「ありがとうございます。最近、食材やら布やらが入ってこないようで、ここに人が集まるんですよ…」
それではお願いします、と言って焦ったようにまた料理を作り始める。
確かにここのご飯は安いし、食材は私が提供してるから大丈夫だけど、何かあったのかな?
……聞けそうもないけど。
そろそろ仕事、始めますか。
私はフードを取り、その上に制服を着た。
「星テーブルに持ってってねー。」
「ネトラーさん、分かりました。」
私はお盆に乗った、ハンバーガーとサンドイッチを星テーブルに持っていく。
ちなみに星テーブルとは、テーブルに付いてる置物の形のことだ。
見分けをつけるために置物を置き、それで呼んでる。
星テーブル初めとして、例えばハートテーブルだったり、丸テーブルだったり色々ある。
「「お待たせしました、こちらハンバーガーとサンドイッチになります。」」
そんな、どこかで聞いたことのある声と私の声は重なる。
「ロア⁉︎」
またまた声が重なり、そこにいたロアに声をかける。
それから2時間くらいの手伝い、私は改めて休憩所に行って椅子で休みながら話をすることにした。
「ロアも手伝ってたんだね。」
「混んでましたし、私も暇でしたので。」
テレスさんが用意してくれた、クリームソーダをストローで吸いながら話す。
「ソラお姉ちゃんって、それ好きですよね。美味しいんですか?」
「ああ、クリームソーダね。美味しいよ、飲む?」
私はもう1本ストローをグラスに差し込む。
一足がようやく落ち着いたから、ようやくロアと話すことが出来た。
「っシュワシュワしてて美味しいですね!」
ゴクンと飲み込み、ニコッと笑顔を向ける。
うぅ…眩しいよ、こういうのを日本では尊いというのだろうか?
謎の評論家みたいな口調になってた。
流石ロア、恐ろしや。
「ロアは偉いね。将来は立派な人になるね。」
ストローでちゅちゅうと吸い上げてるロアの頭に、私は手を乗せた。
やっぱり純粋で可愛い子どもはいいね。
もしこれが、どこぞのガキ大将とかだったらこのステッキで、9回裏のツーアウトでの逆転サヨナラホームラン並みのスイングを叩きつけていたところだった。
仕事もひと段落ついたし、今度ロアと出かけてみるのもいいかもしれない。
あっ、もちろんサキも一緒だよ。
「ロア、いつかどこかに遊びに行かない?」
何気なくそう聞いてみた。
「いつかで無くて、いつでもいいです。ソラお姉ちゃんと一緒なら、どこでも。」
満面の笑みを浮かべ、ちょうどそこに窓から差した日の光がロアの顔に当たる。
それはあの日見た、100点満点の笑顔に似ていた。
その、太陽すら目劣りしてしまうほどの笑顔を、むやみに男性諸君に見られないことを私は願ったのであった。
「じゃあ、今度誘うよ。あんまり遠くは無理だけど、ピクニックとかしよう。」
私は頭の中で日程表を作り、いくつか場所を空けておいた。
———————————————————————
これで2章は終了です。
次の3章はどうなるんでしょうか?
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