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2章 魔法少女と竹林の村
63話 魔法少女は託す
しおりを挟む私は1人で、ずんずん石畳の道を歩いていく。
道を作るって言ってたけど、ここからは石畳のだから村まで繋げなくて済むね。
多分、舗装作業とかの代金もバカにならないだろうし、いくら短めの道だからといって安いわけじゃない。
別に詳しいわけじゃないから素人目になっちゃうけど、時間とお金も多くかかるから作業する人達には感謝しよう。
「———それじゃあ通行料はどの程度にするか?」
「そうね、どうか5枚、いや交易路だからもう少し高く7枚は絞り取れそうね。」
フィリオとマリンさんが、通行料の話で盛り上がっていた。
マリンさんは楽しそうな(悪巧みの笑みとも言う)顔をして通行料の提案をする。
「あぁソラへ振り込まれる割合も決めないとな。」
「色々考えて、3割くらいでいいと思うけど?」
するとなんだかおかしな話が聞こえてきた。
私に振り込まれるお金⁉︎そんな物あるの?
えっ、そんなもの振り込んでもらっちゃっていいの?
「なんで私にお金が入るの?」
私はそんな当然の疑問を、後ろで話してるフィリオ達に聞いてみる。
「何言ってるんだ?ここで生まれる利益は、お前がいないと生まれないものなんだぞ。」
私を変なものでも見ているかのように、眉を顰めて言った。
「そもそも竹林を退かせるのは、今のところソラさんだけですし、退かしたのもソラさんです。」
普通でしょう?と言って、またフィリオとお金や道を作った後の話をし始める。
村に着くまでに喋っていたことは、休憩所を設けるか否かや、この道に何か店でも設置するかや、馬車の停留所はどこにするかなど、大雑把にを決めていく。
また後で、話し合って決めるんだと思う。
まぁそういうことで、村に着いた。
今は、全員アボデルさんの家にお邪魔している。
村に着いた最初の部分を簡潔に説明すると、門番(?)はいきなり馬車がやってきてびっくりし、そこから出てきたフィリオ達のことを説明すると、更に腰をぬかして大変だった。
アボデルさんの家で、フィリオ達は道の説明や辺り作る物の話をしていた。
そして私は、ただお茶を飲んで相槌を打つだけのロボットと成り果てていた。
だって難しいんだもん。何言ってるか分からない。
そんな専門知識無いし、大切な部分とか私に関係してる部分は後で聞けばいいと思う。
「それでは、作業開始は最低でも3日後から。」
「分かった。こちらはいつでも準備は出来ている。」
そんな会話で、ここでの話し合いが終わった。
私、いる意味あった?という疑問が無いでも無いけど、終わってしまったものは仕方ない。
もうやることがないと判断した私は、一休みしているフィリオとマリンさんにこう切り出す。
「私、そろそろ帰っていい?」
「は?」
2人のは?とえ?が重なり、私を驚いたように見つめる。
…そんな、驚くこと?いやさぁ、どっからどう見ても要らないでしょ、私。
「私、道作りとか知らないし、帰ってもいいよね。」
「ったく、お前は……」
呆れたように手のひらを顔に当て、嘆息を吐く。
「仕方ないですね。帰ってもいいですが、商業ギルドの方で、ギルドカードを作ってくださいよ?そもそもお店をやっているのにカードを持っていないのは、違法なんですから。」
マリンさんは、少し早口気味に言い切った。
えっ、違法?は?えっ、ちょまっ……
私の口はモゴモゴと、声は出ずに動き続ける。
「まっ、実際に運営しているわけじゃないのでギリギリセーフですけどね。」
カード、ちゃんと作ってくださいね、と笑って言う。
いや、笑って言わないで。笑っていうことじゃないよ?
私、犯罪者一歩手前になってたってこと?
危なかった……
「わっ分かりました……」
少し声が裏返り、薄く笑いながら返事をする。
作ろう。ギルドカード、作ろう。
さあ作ろう、今すぐ作ろう、さあ作ろう。
私の心の一句
こんなふざけたことしてないで、早く戻ってギルドカード作らないと。
私はアボデルさんの家から出て、急ぎめに走る。
神速は使わないから少し時間かかるけど、自分で決めたことだししょうがない。
その代わりに魔力を脚に付与し、全力疾走で街に向かう。
地面はめり込み、足跡がつく。
魔物達はその勢いに気圧されて、近づくことが出来ていない。
特殊な魔物だったら、余計に近寄りそうだけど。
まぁそんなことは気にせずに、馬車よりも速いく走っていると外壁が見え始めた。
「はぁ、はぁ…流石に、全力で走り過ぎた。」
私は肩で呼吸し、膝に手を置いていったんの休憩をとる。
私がこんなにも急いでるってのに、空は快晴で鳥が鳴いている。
少し暖かい風が吹き、私の世界で言う夏が運ばれているような気がした。
「そもそも、この世界に季節はあるの?」
ウォーターの水を飲みながら、1人でこの世界の謎について考える。
今度ロアとかにそれっぽく聞いてみようかな?
『最近暑くなってきたね』とか言ってみて、『そろそろ夏ですね』って返って来てくれたらいいんだけど。
って違う違う。今はギルドカード。
私は犯罪者にならないためにも、早足で門のところに向かう。
いつも通りにカードを渡し、返してもらってから街に入る。
確かギルドの方向は、こっちだったよね。
私だって1回しか行ってないから、覚えてない。
商業ギルドなんて印象に残るだろって?それが残らないんだなあ、私は。
———————————————————————
ソラは、犯罪者一歩手前の危ない人だったみたいです。
そこはマリンさんお得意の、権力でなんとかしていたと考えておいてください。
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