62 / 681
2章 魔法少女と竹林の村
61話 魔法少女は相談に行く
しおりを挟む私はいつも通り朝起きて、上着を着て、そしてエリーのご飯を食べた。
これはいつものことだけど、エリーのご飯は美味しいね。
アボデルさんのご飯がまずいって言ってるわけじゃないよ。
あれもあれで美味しかった。
今は何をしてるかって?歩いてるんだよ。
どこに向かってって、そのくらい察してよ。
フィリオの家に行ってるの。
前に家に行った時も感じたけど、街から遠いよ。なんで領主の家は、こんなにも遠いんだろうか。
歩きで行ったら、凄い時間がかかるよ。
神速は使わないって決めたしなぁ、でもこれを歩いていくのもなぁ、だからと言って領主の家の近くで走るなんてなんか嫌だしなぁ。
「うーん。どうしよう……」
そう思ってると、後ろから何か音が聞こえて来る。
振り返ると、そこには馬車が走っていた。
って馬車⁉︎なんでここに馬車?
いや、領主の家の近くに馬車が走るのは普通、なのかな?よく分かんない。
すると馬車は私の後ろで停車し、扉が開かれる。
「ソラ?どうしてここにいる。」
そこからフィリオが降りてきて、そんな声をかけて来る。
「フィリオこそ、なんでここに?」
「隣町から帰ってきたんだよ。」
フィリオが私の隣に来て、そう返してくれる。
隣町からって言ったけど、何しに行ったのかな?貿易?会合?まぁなんでもいいや。
「で、ソラこそなんの用だ?」
早速話を聞こうとするフィリオに、私は「ここでするのあれだし……」と言って、屋敷の中でする事になった。
フィリオが乗ってきた馬車に乗り、屋敷に向かう。
馬車なんて初体験だけど、結構早いんだね。
その分、結構揺れるけど。
馬車の中で、暇だからフィリオと話をしていたら、私が知らないネルの母親(フィリオの妻)の話も聞かされた。
名前はフェロールさんというらしく、緩い感じだけど敵に回すと1番怖いタイプと言っていた。
それを聞かれたら、やばい事になりそうだけどいないからよしとしよう。
ネルはフェロールさんに似ているらしく、想像してみると美人が頭に浮かんだ。
こうして改めて話してみると、色々知らないことが聞けたり、面白い事に出会えるかもしれない。
これは、フィリオだからこそ出来る芸当だけど。
いつの間にか馬車は屋敷についていて、馬車を降りて屋敷に入る。
今は、話に聞いたフェロールさんがいるらしい。(あの時いなかったのは、他の街に出ていたからだそう)
すると奥から一人の女性がやって来る。
「フィリオ、帰ったのね。あら?そこの隣のお嬢さんは?」
まさか拾ってきたとか言わないわよね?と、少し面白おかしそうにフィリオに言葉をかける。
まさかこの人がフェロールさん?
……これは確かに、あんまり逆らっちゃいけないような雰囲気があるというか、なんというか。
一言で言うと、フィリオは絶対尻に敷かれてる。
「そんなわけあるか。前に話したソラだ。」
「あらあら、貴方がソラちゃんね。話はネルからも聞いてるわ。」
さぁさぁ上がって、と私の手を引いて上がらせる。
軽い感じで、接しやすいと言えば接しやすい。
「それで、今日はなんのようかしら。」
応接室のような場所に入れられ、机を挟んで向こうには優雅に紅茶を飲むフェロールさんと、その隣にコーヒーを飲むフィリオがいる。
なんか貴族二人を前にすると、怖くなって来た。今回はフィリオだけじゃ無いから、余計に。
そんな風に縮こまっていたら、一筋の光が差し込む。
「お父様、お帰りになられてたんですね。」
嬉しそうな笑みと共に、扉を開く。
「ネル、部屋に入る際はノックをしろ。」
優しそうな微笑みを浮かべ、そう注意する。
「今はお客様が来ているのだから、うるさくしてはダメよ。」
フェロールさんが更に重ねて言い、ネルは「すみませんでした」と小さく謝る。
別にそのくらい気にしないのに。
相手がめちゃくちゃ態度が悪かったり、嫌な感じだったら怒りたいけど、ネルはそんな子じゃ無いのは知ってるし、可愛いから気にしない。
でも貴族のマナーとかもあるし、これからネルが相手するのは私だけじゃ無い。
そういうことも考えて教育しなきゃいけないんだよね。
大変そうだね、貴族は。
その点、私は大丈夫。
付き合うつもりも、結婚するつもりも毛頭無い。
「あっ、ソラさんでしたか。失礼致しました。」
ペコリと小さく頭を下げ、可愛らしく去っていく。
微笑ましいね。
「悪い。うちの娘が。」
「全然大丈夫だから。」
やっぱ可愛いというのは、心が洗われていく。
私の心は元から綺麗だよ⁉︎腐ってなんか無い!
「それで、話というのは?」
フィリオが真剣な目で、私にそう聞いて来る。
あっ、本題の方忘れてた。危ない危ない。
私は竹林のことや、その奥の村のことを大雑把に説明した。
ちゃんと説明すると長くなりそうだし、そんなに長く仕事の手を止めてもらうわけにはいかない。
「そうか。そんな依頼を受けていたのか。」
はぁ、と少しため息を吐く。
「魔物の討伐も出来て、見知らぬ土地の探索も出来て、ソラちゃんはなんでも出来るのね。」
楽しそうに、弾んだ声フェロールさんは言う。
そんな大層なものじゃ無いと思う。
カロォークの話はしなかった。
なぜかと言うと、今フィリオにカロォークについて尋ねたら、カロォークは推定ランクAと言っていた。
私のランクはC。どう考えても驚かれるか怪しまれるかのどっちかだ。
だからやめておいた。
そんな魔物を2匹も討伐したとか言ったら、またランクやらなんやら上げられそうだし。
「で、ここからが大事なところなんですけど、そこの村とこの街で、交易とか出来ない?」
了承は貰ってるけど…、と首を傾げて言ってみる。
「公益、か。」
フィリオが考えるように指を顎に添え、唸っている。
「もちろん、その道を作るのは私だよ。」
そもそも私じゃないと作れない。舗装とかはそっちでお願いしたい。
「こっちとしても、未知の竹には興味がある。そしてもう、向こうの了承も得ていると。」
「いいんじゃないかしら?その村を、この街の一部として守っていけば資源確保よ。」
フェロールさんは、私の案に乗り気のようで、このままいけば押し切れそうな感じがする。
「…そうだな。許可しよう。」
最後はフェロールさんによる一押しのおかげで、許可をもらうことが出来た。
「こちらとしても、準備が必要だ。優先してやるとしても、5日後になる。」
「急ぎってわけでは無いから、5日くらいなら大丈夫だよ。」
私はそう言って部屋を出て、ネルに引き止められたから少しお喋りをして帰っていった。
やっぱりロアとかネルとか、純粋な子は可愛いね。
犯罪臭がするって言った奴、正直に出てこい。
今ならまだ許してやろう。
———————————————————————
無事、許可をもらうことが出来たソラ。
しかしゲームのようにすぐに取り組めるわけが無かった。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる