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2章 魔法少女と竹林の村
60 話 魔法少女は戻ってくる(一旦)
しおりを挟む私は森を走り抜き、いつの間にか壁が見え始めた。
久しぶりの街の壁、謎の安心感があるね。
私は門まで行って、門番さんに「お疲れ様です」と一言口にしてカードを渡す。
門番さんはすぐにカードを返してくれて、私は街に入る。
「ひっさしぶりの街だー。」
今からの私のミッションを説明しよう。
その1、上着を買いに行く。
その2、今日分の宿を確保。
その3、お店を覗いてみる。
その4、ロアを探す。
そして最後に、明日フィリオに相談に行く。
別に悪い話では無いし、ただちょっとフィリオの仕事が増えるだけだ。
町にとって利益になるんだから、領主のフィリオは喜んでやると思う。
「知らないけど…」
私は誰かに見られないように、細心の注意を払って進む。
さっきの門番さんは、最初にあった門番さんだから良かったけど、知り合いじゃ無かったらヒソヒソ話されそうで怖いし。
別に変な格好じゃ無いのに、少し変な格好なだけなのにね。不思議だ。
この服のせいで、私の頭も変になっちゃったよ。
…それは元からな気がしないでも無いけど、気のせいにして片付ける。
「よし着いた。早く潜ろう。」
そんな考えをしている間に、宿屋の手前の道の脇にあるこのお店に着き、私はすぐにのれんを潜った。
「お邪魔します。」
のれんをくぐり、私はそう小声気味で呟く。
「……嬢さんかい。また上着をご所望かい?」
フードを深々と被った女性が、店の奥の方からやってくる。
この人、髪が短かったら女性って分からないね。
男って言われたら男に見えなくも無い。
「こないだ来たばっかなのに、すいません。」
「構わないさ。」
上着をレジの机に雑に置き、銀貨1枚だ、と言って上着を投げ渡してくる。
「はい、銀貨1枚です。」
「丁度。」
そう言い、また闇に戻っていった。
私も店から出て、次の目的地である宿屋に向かう。
お腹も空いたし、エリーのご飯食べてから行こうかな。
宿屋はすぐ近くなので、一分経たないうちに着いた。久しぶりの扉を開き、私は宿屋に入る。
「いらっしゃいませー……ってソラっ!」
エリーがビジネススマイルを浮かべて挨拶をし、それが私だったと気づくと慌てふためき始める。
「久しぶり、エリー。今日一泊分と、昼ご飯をお願い。」
その分のお金を支払ってから席に着く。
今日はいろいろあったせいで朝ごはんも昼ごはんも食べてない。
だからお腹はぺこぺこだ。お店に行く前に、自分のお腹を膨らませないと。
「久しぶりですね、ソラ。」
「そうだね。あっ今日のおすすめとかでいいよ。」
そう言うとテキパキも食材を切り分けて行き、お肉を揚げ始めた。
今日は唐揚げかな?
そう思っていたらどんどん盛り付けが進んでいき、どうなってるの?って疑うレベルのスピードで完成した。
「今日は、唐揚げ定食が人気なんですよね。」
カウンターで頬杖をついて、そんな話をする。
「へー、エリーのご飯はどれも美味しいからね。どこにお嫁に行っても、安心だね。」
「ソっソラ?なっ、何を、言ってるの?」
目をぐるぐると回し、頬を赤く染めて慌てる。
…?何か変なこと言った?
「まだエリーを嫁がせはしないよ。」
エリーのお母さんが、奥から料理をしながらそんな風に返してくる。
「ちょっ、お母さん!何変なこと言ってるの!」
見てて飽きないね、エリー達は。
私は夕方ごろまでには戻ってくる旨を伝え、今度はカフェに足を運ぶ。
今はまだギリギリ開店中なので、裏口からこっそり入る事にする。
怪しい人になっちゃうけど、一応テレスさんにオーナーは私と頑なに言い張ったのでオーナーの私なら大丈夫なはず。
「こんにちは、食材足りてます?」
キッチンでレインとテレスさんが料理をしていたので、キリのいいところで話しかけた。
「あっソラさん、いつもお世話になってます。食材は、まだ大丈夫だったと思いますけど…」
「じゃあ一応、地下に食材補充してきます。」
私がいなくても、食材の補充ができるようになれば楽なのにな…主に私が。
私のステッキのミニバージョン的な、それかどこぞの猫型ロボットのスペアのポケットみたいに、中身をつなげるとか。
そうすれば、テレスさん達もいちいち食材をもらわなくて済むし。
「開発してみようかな。」
そう思いながら私は、食材を地下に補充しに行った。
店内を見てみると、ロアがカウンターでジュースを飲んでいる姿が見えたので、ロアの元に駆け寄った。
「久しぶり、ロア。」
「あっ。ソラお姉ちゃん。久しぶりです。」
そうやって挨拶をし合い、話に花を咲かす。(そのせいで閉店時間を余裕で過ぎたけど)
私もついでに飲み物(クリームソーダ)を頼み、話していった。
ロアは私がいない間に、少しずつだけど解体を覚えたという。
テレスさんがいない間は、危なく無い、自分で出来る範囲の仕事を探してお金を稼いだり、サキの世話をしているらしい。
私からは、竹林のことを始めに、チャールさんのことやアボデルさんのこと、あの竹の上にあった丘からみた景色、温泉、色々話した。
カロォークの話はって?
バカじゃないの?今はお食事中だ。気持ち悪い話なんで出来ない。
そんな風に充実した1日を過ごし、宿屋に戻ってくる。エリーにご飯は要らないことを伝えて部屋に戻る。
実はあの時、クリームソーダと一緒にハンバーガーまで注文してしまっていたみたいで、お腹の中に空き容量が無い。
だから仕方なくエリーのご飯を諦め、部屋に戻った。
明日はフィリオに頼まなきゃいけないし、しっかり睡眠をとって行かないと。
まぁあのフィリオだし、大抵のことじゃ怒らないと思う。そういう領主だ。あの人は。
じゃないと、こんな平和な街が作れるわけが無い。
どこもかしこも平和、なんてことは無論無い。そんな世界、どこを探してもあるわけがない。
でも、フィリオは自分の見える範囲、手の届く範囲なら全てに手を差し伸べ、助けられる人だ。
そのせいで恨みを買われることも多いかもしれないけど、それ以上に信頼と、信用と、人徳もある。
不安は全てどこかに置いてきて、私は静かに眠りに落ちる。
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フィリオは、超理想な領主です。
こんな領主もいれば、他の街にはゴミみたいな領主もいます。
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