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2章 魔法少女と竹林の村

45話  魔法少女は戦ってみる

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 まずは、万属剣から撃ってみようかな。

 あんまり、カロォークに近づきたくはないから、遠距離系の魔法を撃っておこう。

 魔物があんま啼かないって、珍しいね。私が今まで戦ってきた魔物は、全てなんかは啼いてた。

「これが、効いてくれたらいいんだけど…」
ステッキから魔力を出し、私の左右に属性が付与された剣が現れる。

「いっけー!突き刺されぇーー!」
ステッキをバッと前に振って、剣を射出させる。

 いつまでも、ヌチャヌチャうるさいカロォークに、私の魔法が飛んでいく。

 プラス投擲の力で、威力が増してる。これで無理とか言ったら、私は搦手で行かなきゃいけなくなる。

 結構な速度で射出されたその剣は、しっかりと的を捉え、カロォークを突き刺した……と思ったら、謎の弾力によって力が弱められ、見た限り的に傷は負わせられてない。

「ほんとに言ってる?」
私は驚き半分、呆れ半分のため息を、ハーッと深く吐く。

 まさか、この万属剣まで防がれるとは思ってなかった。
 こうなったらもう、やけになるしかない。

 もう魔導書とかも全部解放しちゃうよ。魔法とか、全部掛け合わせちゃえ!

「もう、これで終わって!」
私は魔導法によって調節した、魔導書と魔法全部を統合した、混合魔法を用意する。

「そもそも、これで無理だったら、私には無理だよ⁉︎」
誰に言うわけでもなく、そう叫びながら魔法を撃つ。

 知ってた。知ってたよ。
結果はもちろん効いてない。

 いや、効いているといえば効いてるのかもしれないけど、見た感じ、ちょっと雷で焦げたくらいだ。

 うん。焦がした。焦がしたからもういいでしょ。
無理だって、あんな防御力の塊!

 私にあの鉄壁の防御は、破れない。
別に、諦めて『帰ります』みたいにはならないけど、これは負ける可能性が、富士山くらい高い。
 エベレストまではいかないけど。

「…どうしよう?」
体を軽く焦がされたカロォークは、ちょっとイラついたように、ヌッチャヌッチャ動き回ってる。

 こいつを倒す方法として、思いついたのが竹の力を出させる前に、強行突破だけなんだけど。

 一旦逃げる?
戦略的撤退でいこうか。

 村とかに来られたら厄介だから、チャールさんを背負って、回り込んでから帰ろう。

 そう思って、チャールさんの方向を振り返ると、イソギンチャクが動くように、空中でウネウネしてた。

「いつ飛んだの!あとどうやって浮かせてるの、その巨体を!」
ツッコミどころの多さに、思わずツッコんでしまった。

 これ、このままいったら、私とチャールさん、一緒に潰されちゃうんじゃない?

 神速でいける?
それだと、もし失敗した場合が怖い。

 だって今、ほぼゼロ距離。

 だぁぁぁぁ!!考えてる暇なんてない!

 私は自分が出せる、最大限の魔力をステッキに込め、スキルの身体強化をフル活用する。

 その他使えそうなスキルを、全部一瞬にして使い、ステッキを横に薙ぎ払う。

 ヌチャっと言う粘液の音とともに、グニャッという弾力のある感触がする。

「これに、止められてたってこと?…」
カロォークの全体重が、私のステッキに集中する。

 スキルの力で無理矢理重さを誤魔化して、地面を踏みしめながら耐える。

 もう、やばいかも。

 残ってる魔力を、ほとんどステッキの方にやり、投擲の魔法を発動させる。

「せめて、飛んでけ!」
すると、ぶにょんっという、可愛らしい音が鳴って、カロォークを飛ばすことに成功する。

 でも、その反動で私も空に投げ出される。

「体が、うまく動かない…」
宙に飛ばされた私は、魔力がないせいで、うまく体を動かすことが出来ずに、そのまま地面に接近する。

 ドゴッという鈍い音が体から鳴り、短く悲鳴を溢す。

「いったぁ…くっ、…はぁ…、」
私は動くことが出来ない体を、なんとか少し動かし、いつもの癖で怪我にヒールをしようとする。

「魔力、無いんだった。」
ははは、と薄い笑いが込み上げてくる。

 チャールさんは、動けそうにないし、私も私で体が動かない。

「もしかして、終わった?」
私の人生、17年で終わっちゃうの?、とそんな軽口が、こんな時にも出てしまった。

 なんか、今出来ることってない?
薄い意識のまま、私はスキルの項目を確認する。

スキル 魔法生成 魔力強化 魔力付与 
 魔力感知 魔法記憶 身体強化 詠唱破棄
  覚醒 魔法分解 振れ幅調整

 魔法生成、そんなものは使えない。魔力強化、強化する魔力がない。

 ダメ、ダメ、ダメ、これもダメ。

 そして一つ、使ったことはないけど、使えそうなスキルを見つける。

 覚醒

魔法少女服の状態でのみ発動できる。全ステータスを4倍する。一度使うと1日は使えなくなり、ステータスも3日半減する。

 これ、なら?

 私は残る力を全て、上着を脱ぐことに使う。
幸い、今の戦闘でいくつかボタンが外れていて、すぐに脱ぐことが出来た。

「これが無理なら、私の人生、終わるかもね。」
こんなとき、こんな時だからこそ、そんな言葉が漏れ出てきた。

 もつ立つ力も残ってない。この覚醒に、全てを賭けよう。

「発動して、覚醒!」
喉から声を絞り出し、出来る限りの大声で叫ぶ。

 刹那。

「へ?」
体中、いや、魔法少女服のある部分だけ光り、ステッキも共鳴するように光を放つ。

 魔法少女服は、戦闘服をアレンジしたようなものに変わる。

 指空きの手袋は、指がつき、服は体を薄く覆った。

 足や胸の辺りは硬そうな薄い板が装着された。
手にはステッキがいつの間にか握られ、見方によっては、刀に見えなくもない。

 一言で言うと、戦闘がしづらそうな戦闘服が出来上がる。

 でも、体は軽く、力が溢れるような気分になった。

 私はステッキを握りしめ、立ち上がる。

「もう1回、私のターンだよ。」

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 新たな力で、もう1度。


 覚醒を使ったソラ!さて次はどうなってしまうんでしょう?

 そもそも覚醒を覚えてる人、います?




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