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2章 魔法少女と竹林の村

44話  魔法少女はちょっと引く

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 自然と、ゴクリと喉が鳴る。

「近くに、いるんですね。」
私は隣にいるチャールさんに、そんな確認を取る。

 前に行くにつれて、少しずつ、少しずつ竹の量も、増えている。

「チャールさん、この竹って、何竹か分かりますか?」

「すみません、ちょっと、分かりません。」
小さく、申し訳なさそうに呟く。

 別に謝らなくってもいいのに。
分からないんだったら、分からないでそれでいい。一応聞いただけだしね。

「チャールさん、ちょっと後ろに下がってて。危ないから。」
左手を後ろにやって、チャールさんを下がらせる。

 ここから先は、私の出番。チャールさんの案内はもう要らない。あとは、私がカロォークを倒す。

 それで依頼は終了だね。
パッと倒して、パッと帰ろう。

 私を先頭に変えて、ゆっくりと歩き出す。

「気をつけて、くださいね。」

「チャールさんこそ、前に気を取られないで、足元も気をつけてくださいね。」
さっき転んだことを思い出して、私もチャールさんに注意を促す。

 カロォークの強さも分かんないんじゃ、チャールさんを守り切れるかも分かんない。

 だから、下がっててもらわないと危険だからね。

「すいません…気をつけます。」
チャールさんもさっきのことを思い出した様子で、苦笑いで答える。

 歩くに従って、生えてる竹が少なくなったり、途中で無くなってる竹が増えてきて、地面には、引くほどの量の竹が落ちてる。

「…気持ち悪い。」
ちょっと声に漏れ出てしまった。

「…ですね。流石にここまでとは…」
チャールさんも、だいぶ引き気味で言う。

 私も、流石にこれは予想できなかった。どんだけ食欲旺盛なのよ。

 桜の絨毯じゃなくて、竹の絨毯になっちゃってる。
 竹の絨毯って、意味分からないね。

 地面がうまく踏めないので、竹を踏んで進んでいると、分かりやすいくらいに、ヌチャァヌチャァ、と軟体系の、ネバネバしたものが這いずっているような音がしていた。

「これ、カロォークです、よね?」

「そう、だと思います。」
分かってたことだけど、一応カロォークを知ってるチャールさんにも、確認をとる。

 よし、行くぞ。行こう、うん行こう。
…決心が鈍る。

 音から分かるよ。絶対気持ち悪いでしょ!
そして、姿はカタツムリときた。

 バカでしょ。神様、そんなヤバいものを生み出さないでください。

「そ、それじゃ、いっ行きましょう。」

「そそ、そうですね。」
二人で、カロォークの姿を想像して、少しプルプルと震えながら進んでいく。

 その瞬間、目の前に巨大なカタツムリが現れた。

「カタツムリじゃん!」
気持ち悪さよりも、カタツムリが勝っちゃって、そう叫んでしまった。

 カタツムリみたいな、じゃなくて、カタツムリじゃん。ご丁寧に殻まで被って、それ、カタツムリとしか言いようがないじゃん。

 カロォークじゃなくて、マイマイとかの方がしっくり来るよ。

 よーく観察してみよう。
殻は真緑で、不健康そう。

 中身?体?は、黒い薄茶色。触りたくなくなるような、そんな感じ。

 目の部分が、うにょーんって伸びてて、こっちを見てきてる。

 殻も含めて、身体中が謎の粘液に包まれてて、本来だったら、逃げ出していた程のキモさだった。

「よくよく見ると、気持ち悪くなってくる…」
ステッキを持ってる右手で、口を抑える。

「すい、ません。ちょっと、僕、動けそうに、ありません。」
目を開いて、ブルブルと震え出すチャールさん。
一度襲われていると聞いたから、その時に、トラウマになったんだと思う。

 私は初めてだから、怖さと言うよりも、気持ち悪さがある。

 …なんだろう、無言の圧を感じる。
アニメとか漫画で例えると、敵の下からゴゴゴゴゴッ!!とか、そんな効果音が聞こえてきそうな、そんな感じ。

 魔物なんだから、なんか啼き声とか出さないの?

 カタツムリには悪いけど、見れば見るほど、逃げたくなってくる。
気持ち悪さが、音を超えてやってくる。

 この魔物、スキルとかあったら『不快』とか持ってそう。

 そんな風に考えてたら、ヌチャッヌチャッと、こっちに近づいてくる。

「やるしかない、…やりますか。」
私は魔法を撃つ準備をする。

 詠唱破棄があるから、準備はいらないけどね。

「ファイボルト!」
魔導法の追加効果のおかげで、調節をが楽になったね。過去の私、ナイス!

 炎を纏った雷は、ジグザグに動きながら、カロォークに向かって進んでいく。

 すると、カロォークはタイミングよく、当たると同時に前に進む。

 ファイボルトは、見事に相殺され、向こうは傷ひとつ負ってない。

「なにそれ、ダメージカット?酷くない?」

 これにプラスして、竹の力とか…ギリギリになりそうだね。

「やれるだけ、やる。無理だったら逃げる。そうしよう。」
そう決意を漏らし、ステッキを握る手に、力を込める。

 リミットは、私の魔力が尽きるまで、それか、危険になったら。

 その辺の判断は、早めにつけよう。
今回は、私一人じゃないから、気を使わないといけないし、敵は強いしで大変だぁ…

 でも、やるって言ったんだから、やらないとだね。

 見せてやりますよ。日本人の底力ってものを!

 今も、ヌチャヌチャうるさいカロォークに向けて、私は走り出す。

 神速なんて使ったら、ぶつかっちゃうから、絶対使いたくない。

 私の心が、死なないために。

———————————————————————

 カタツムリ対ソラ、どちらが勝つんでしょうか!
答えは、また数日後。


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