魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ

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2章 魔法少女と竹林の村

42話  魔法少女は感動する

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 私は、走って出て行ったチャールさんを、追いかける。

 大体場所は分かるけど、流石に初めての所だから案内は欲しいものだね。
 だから走って行かないでよ!

「ちょっと、チャールさん⁉︎」
「なんですか?」
後ろを振り返って、私に向かって首を傾げた。

「走って先に行かれたら、見失っちゃうんですけど。」

「…あっ、すいません。」
チャールさんは、少し申し訳なさそうにして、こっちに戻ってきた。

 いや、別に戻らなくてもいいんだけど。

「じゃあ、行きましょうか。景色、とっても綺麗ですから。」
子供のような、はにかんだ笑顔で笑いかけた。

 チャールさんって、大人が子供かよく分かんないね。

 私たちは、そのまま昨日来た道を、逆に進んでいく。そして、石畳が段々無くなってくる。

「こっちに進んでいくと、綺麗な景色が見られます。」
指を、脇の少し竹が薄くなってるところに差して、歩いていく。

 えっ、ここ?ここ道というより、ギリギリ通れる何かじゃん。
 獣道にもならないでしょ。

 ほんとにギリギリ。私が、なんとか通れるようなくねくね道(?)じゃん。

「ほんとに、ここで合ってるんですか?」

「合って、ますよ。」
竹林の竹をかき分けながら、チャールさんは進んでいく。

 この竹、切ってもいいかな?竹林の竹とは違うから、襲われることはないと思うけど。

「あと、どのくらい、これ続くんですか?」
このまま続くとか言ったら、帰るよ。

「あと少しで、一旦竹林から出ると、思います。」

 進み方を間違えたら、怪我しそうだね。まぁ、私が怪我することはないけど。

 でも、上着が切れそうで怖い。
魔力付与でもして、硬度を上げとくか。

 それにしても、肉体的疲労がないとしても、行動を制限された状態で動くのは、精神にくるね。
 ちょっとイラつきが出始めたかも。

 私の怒りが爆発する前に、着いてくれるのを祈るのみだ…

 それからも、竹、かき分ける、竹、かき分ける。の作業を永遠と繰り返した。

「もう、見えてきました…」

「ようやく、ですか。」
チャールさんは、汗を滲ませながら、はぁはぁ、と息切れを少し起こして進む。

 チャールさんは、いくらこの村の村人だからといって、こんな所を平然と進むことはできないんだね。
 私も疲れてはいないけど、これを進むのはやめておきたいところだし、こんな所を、魔法少女服無しで行くのは不可能だ。

 あと、そんなアクティブな女子高生いないよ。
……それより。魔法少女服に上着を着て、魔物を倒す女子高生の方が、よっぽどいないね。

 恥ずかしがってても、どうにもならないし、いつかは、この上着も取ろうと思ってる。

 でも、流石にまだ慣れてないし、羞恥心も生きている。
 あと、どのくらい先になるんだろうね。

「はぁ、はぁ、着き、ましたよ。」
ちょっと広くなって、ようやく進めるような道が現れる。
 チャールさんは、地面に座って、一息つく。

「やっとだ…」
私はウォーターで水球を作り、それを飲む。

 ぷはぁー!疲れた体に染み渡る。
チャールさんも、欲しそうな顔をしていたので、そこら辺の竹を切って、水を入れた。

 くんくん、と鼻を鳴らすと、この竹から、なんかいい匂いがしている事に気づく。

「この竹って、どんな竹ですか?」

「その竹はですね、えっと、香竹です。香りだけが、とても良いので、玄関や、トイレなどに使われます。」
私が指差した竹について、そう説明をくれる。

 日本で言うと消臭剤ってことだね。うちのトイレにも合ったね。
 置いた初日辺りは、腐ったリンゴの匂いがする消臭剤。あの匂いには参ったよ。

 だから、嫌だけどトイレは口呼吸をしてた。

がいいので、そこにかけて『香竹』となったそうです。」

「そうなんですね。」

 でも、石鹸のやつとは何が違うんだろう。
同じ香りのあるものだから、同じじゃないのかな?

「あの、石鹸で使われてる竹と、この竹って何が違うんですか?」
気になるので、一応聞く事にする。

「僕も専門家でもなんでもありませんから、詳しくは分かりませんけど、香竹に似た、押すと、泡が出る竹があるんです。」
それで作られています、と言って私が渡した水を、飲み始める。

 飲み終わると、「そろそろ行きましょうか」と言うので、はい、と返事して進む。

 ここから先は、結構楽だった。
道は広いから、進みやすいし、この村の辺りでは、魔物は全くいなくて、拍子抜けした部分もある。

 空は、少し赤みがかかり始め、日が沈もうとしている。

「速くしましょう。日が暮れてしまいます。」
そう言って走り出す。
 私も追いかけるようにして走り、チャールさんが止まったところで、私も足を止めた。

「見てください、あれ。」
そこは開けた崖の上で、指を差される前に、自然と顔が、そっちのほうに向かっていた。

 向こうを見ると、巨大な竹林の上に、夕日がのぞいていて、さらに向こうにある川に、光が映し出されていた。

 昨日、温泉から見た景色より、もっと綺麗な景色だった。

 人は、美味しすぎたり、綺麗すぎたりすると、「美味しい」、「綺麗」しか出てこなくなるんだね。
 そのくらい、言葉で表すのが難しく、憚られるような綺麗さだった。

「綺麗、ですね。」

「来てよかったでしょう?」

「そうですね。」
私は景色に見惚れながら、そう答えていく。

 写真に撮りたいけど、この世界にそんなものは無い。

 異世界は、魔法や魔物がいて、日本よりも楽しそうと思った。

 実際楽しいし、発見も多くて面白い。
でもたまに、不便だと思うことがある。

 でも、それだからこそ異世界で、その『不便』っていう思いも、異世界の楽しみ方の一つなんだと思う。
 だから、何が言いたいと言うと。

 この景色を、目に焼き付けよう。

 私は、一通り楽しみ終えて、チャールさんと戻る事になった。

 帰りは行きよりも楽だったけど、竹が増えてくると、また面倒くさくなる。
 それでも、行きよりかは楽に感じる。

 下り坂ってのもあるけど、あの景色を見た後じゃ、心も穏やかになってるってのもある。

 これは、本当に依頼を達成させないといけないね。
 こんな綺麗な景色、日本でも中々見れないよ。

 そんな決意を胸に、村に戻る。

———————————————————————

 存分に綺麗な景色を楽しんだ後は、討伐です。
無事にカタツムリもどきを倒せるのか⁉︎
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