36 / 681
2章 魔法少女と竹林の村
35話 魔法少女は竹林へ向かう
しおりを挟むあの竹林までって、どのくらいだっけ?
私はギルドを出た後に、真っ直ぐ道を通り過ぎていった。
門に行くと、門番の人に店の話を振られたので、簡単に返して門を通る。
よっし、ようやくあの気になるところに行ける。…これは、私的な理由じゃなくて、仕事だから。仕事。うっ、うん。
そう自分に言い聞かせて、この間の黒丸を魔力感知で探す。
魔力阻害で阻害されてるから、分かりやすいね。
こう、地図みたいなのの中に、でっかく黒丸がある。
多分あれだよね、竹林って。
…入口が分からない。竹林自体の場所は分かるんだけど、入口は?
「ここのどこから入ればいいの…」
私は適当にぐるぐると回ってみる。
すると、徐々にそこには竹が生え始めていた。
どういう原理?これ。
竹林に近づいてるってことかな?
迷いの竹林って言うくらいだし、霧でも発生してくるのかと思ったんだけど、ほんとにただの竹林なんだ。
歩いても歩いても、ただ単に竹の量が増すだけっていう、なんか面白いね。
この竹林の先に何があるんだろう。あんまり迷わせてきてない感じからすると、中に村とか街とかあったりするんじゃないかな?
「どこ見ても、竹、竹、竹。」
…嫌になってくる。
目の前の左右、前後、全てが竹。上を向いたら。
「竹が、しなってて、蓋をしてる。」
ははは、と薄い笑いをする。
いや、ね。あれだよ。もっと楽しい感じのを思い浮かべてたんだよね。
こうなったら、魔物来ーい。
そうでもしないと、私は暇で暇で、暇だよ!
語彙力の喪失が見られているけど、そこは気にしない方向で。
私は、こういう時はちゃんと運が発動する。
魔物の場合は、呼べば出てくるんだよね。
これは、いい体質なのか、悪い体質なのかはよく分からないね。
まっ、いっちょ叫んでみますか。
「魔ー物~こっちに来~い!」
私は、誰もいない竹林の中で、叫び声を上げる。
……アニメとかで言ったら、ヒュ~って風と木の葉と一緒に、音が鳴っているんだと思う。
そう、魔物が来ないのだ。
殺して、いっそもう、殺して。来ないんだったら来ないって言ってよ。
「って、そもそもいないんだから言えないでしょ!」
そんな空い独り言も、誰にも聞かれずに、風に流されていった。
あれだけ『私は、こういう時はちゃんと運が発動する。』とか言ってたのに、全く発動してない、私の運!
入口、無し。出口、無し。魔物、無し。
あるのは数えきれないほどの竹と、私だけ。
もうこうなったら、こんな竹、薙ぎ払ってやる。
「アクアソーサー!」
いくつものアクアソーサーを作り出し、四方八方に、飛ばしていく。
まるで、木をカットする丸いあれみたいに回転しながら切っていく。
あれの名前って、分からないよね。
別に知ってても何かあるわけじゃないし、チェーンソーもどき(丸型)でいいや。
そんなチェーンソーもどき(丸型)が、竹を切り刻んでいく。
それに対して竹側は、とてつもない生命力と、再生力によって、切られた端から再生を始める。
その竹は、意志を持ったかのようにしなり、襲いかかってくる。
私はなんとかチェーンソ…アクアソーサーで切ったおかげで、防ぐことができた。
えっ、竹って攻撃できるの?竹って確か、全部が根で繋がってるんだよね。
だからここに生えてる竹は、全部敵なの?
「竹、恐ろしい。」
流石に燃やしちゃうのは憚られるので、アクアソーサーで切りながら進むことにする。
あれ、これ攻撃しちゃダメだった系のやつなの?私が攻撃したせいで、攻撃してくるの?
この竹林、謎が多い。でも、だからこそいい!
いいじゃんいいじゃん。こういうやつを求めてたの。こういう謎とか気になっちゃうよね。
こういうのって大体は、竹が勝手に移動して、道を阻んでくるとかでしょ。
それにプラスして、魔力阻害。普通の人だったら、簡単に迷っちゃうやつだね。
だがしかし、私は魔法少女。普通、出来ないことも、私にだったら出来るかもしれない。
私のスキルの中で、使えそうなのないかな?
竹に魔力付与して、竹の動きを把握するとか?
まぁ、まずは簡単に出来そうなのからいきましょうか。
「えっと、身体強化に足に魔力付与っと。」
こうすれば、格段に脚力が上昇するはずだ。
しゃがみ込み、勢いをつけてドォーン!と高く跳んだ。
地面には、くっきりと足跡が残ってる。
私は、適当にしなってる竹を切って、再生し始めたところを掴む。
「おぉ、いい眺めですなぁ。」
言葉遣いが変わってしまったけど、綺麗だから仕方ない(?)。
竹林の中は、普通に朝方くらいの明るさっていうか、光だったけど、外を見てみたらもう日も暮れかけてる。
時間感覚が麻痺ってきてるね。そんな時間経った?
ちなみに今捕まってるところの高さは、見た限りビル10階ぐらいの高さ、30メートルくらいある。
今、ものすごく怖い。
綺麗な景色で、恐怖をなんとか抑えてるけど、これ降りる時大丈夫だよね?
外を見ても、成果は景色しかなかったから、降りることにする。
手を離すと、すごいスピードで落下して、体が少し回る。
綺麗に着地したい!
私の、人生で一度でいいからやってみたいことランキング第24位ぐらいの、くるっとして着地!っての。
勢いに任せてやってたら、くるっじゃなくて、ぐるぐるになるから、ウィンドカッターでうまく調節し、一回転する。
「あとは着地っ。」
足に魔力とウィンドカッターの足場を作り、スー、ストンッ。と着地する。
「よし、出来た。」
私は満足げにガッツポーズをとる。
……本題の出口のことを忘れてた。
———————————————————————
竹林に入ったはいいものの、出口も入口もわからなくなったソラです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
107
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる