上 下
20 / 681
1章 魔法少女と異世界の街

19話  魔法少女は怒る

しおりを挟む

 話をしながら歩いてると、赤い屋根のアパート(?)が見えてきた。

「ソラお姉ちゃん、見えてきましたよ。」
ロアは指を指して言う。

 確かあそこの202号室だったような気がする。

 私たちはアパートの前に着き、階段まで行ってその階段を上がり始める。

 少しボロいね。ほんとに大丈夫なのかな、ロア。

 私は不安に思いながら着いていく。
ロアは2階に着いて、ポケットをゴソゴソと探して、鍵を見つける。

「今、開けますね。」

「うん。分かったよ。」
笑顔で言うので私も笑顔で言い返す。

 鍵を回し、ガチャリと音が鳴った。
ロアはそのままドアを開け、「どうぞ」と中に入れてくれる。

「ロア、ありがとう。」
短くお礼を言う。

「ただいまー」
ロアも家に入ってそう言う。

「お姉ちゃんおかえりなさい。」
奥の部屋からそう聞こえてくる。

「サキ、ただいま。具合は大丈夫?」

 あれってロアの妹なのかな?ロアと同じで可愛いね。ロアも昔はこんな感じなのかな?

「お姉ちゃん、あの人だれ?」
私に指を指して言う。

 魔法少女ですよ、怪しくないよ。
優しく手を振ってみる。

「私の命の恩人だよ。とっても優しい人だから、だから安心していいよ。」
妹のサキにそう言った。

「私は空、冒険者をしてて道に迷ったところをロアに助けられたんだよ。」

「あたしはサキです。お姉ちゃんを助けてくれてありがとうございます。」
小さくペコリと頭を下げる。

 サキも礼儀正しくていい子だね。私の子ども時代は、こんないい子じゃなかったなぁ。

 私は自分とロアやサキを重ねて悲しくなってくる。

「別にいいよ。私も助けられたんだし、ウィンウィンだよ。」
「うぃんうぃん?」と首を傾げる。

 あれ?この世界にこの言葉ってないのかな?

「んーなんて言うんだろう。」

 ウィンウィンって、大体の意味はわかるけど、いざ説明しろとなると分からないね。

「まぁ、私もロアも互いに助けられたからどっちも感謝してるってこと。」
ウィンウィンとは意味が違くなってる気がするけど…大丈夫だと思う。

「へぇーお姉ちゃんもお姉ちゃんに感謝してるの?」

 お姉ちゃんとお姉ちゃんじゃ区別がつかないね。
何か他の呼び名はないのかな?

「うん、感謝してるよ。」
私はそう言う。

 実際、宿屋を教えてくれたり、ギルドの場所を教えてくれたりしてくれたから、だいぶロアに助けられてる。

「お父さん、遅いな。」
玄関の方向を見て、そう呟いた。

「おとうさん何があったんだろ。」
サキも一緒に言う。

 そうだね。そろそろ帰ってきてもおかしくない時間だよね。夜も近いし、子どもがいる父親なんだから早く帰るのが普通だと思う。

「ちょっと待ってみようか。」
私は近くにあった椅子に腰掛ける。

 ロアはサキをベットに寝かせる。ロアは近くにある椅子を引きずってきて、私の隣に座る。


 それからいくらか経ち、サキが眠ってしまった頃、玄関がガチャリと鳴った。

「お父さ…ん、ただ…」
ロアはただいまと言おうとして、途中でやめた。

 理由が気になり、見に行ってみると、そこには顔を真っ赤にしてフラフラと千鳥足で歩く男性がいた。
 何度もこけそうになり、こちらへ来る。

「…誰だぁ、あんたぁ。」

 うっ、酒臭っ。

「お父さんどうしたの!?」

 あれお父さんなの!?ロアが言うにはいつもは優しい人らしいけど、今は見る影もない。

「邪魔だ、どけよ…」
ロアの父親は腕を振ってロアを吹き飛ばす。
 ロアは体制を崩し、こけてしまう。

 こいつ!自分の子どもに危害を加えるなんて!
ロアを吹き飛ばすなんて、いくら父親で、酔っていたとしても許せない。

 私はロアには幸せになってほしい。そのためには必ず、親が必要だ。
 こんなのでも、いつもはいい人らしいし。

「ロア、ちょっとごめんね。」
ロアは首を傾げる。

 その瞬間、私は目の前の酔っぱらいにウォーターで水をかける。

「は?」

「へ?」

 父親とロアが今起こったことが理解できずボーッとしている。

「ねぇ、自分の子どもに危害を加えるってどうなの?」
私は言葉に魔力を込め、力強く言う。

「こっちは、たいへんなんだよ、子供のオマエが口を出すな!」
対抗してそう言う。

「大変?そんなの知らないよ。ロアはね、楽をさせるために1人で薬草を取りに行って危ない目に遭ってるんだよ。あなた、魔物に襲われそうになったこと、ある?」

 酔っぱらいは「オマエもねぇだろ」と言う。
それがあるんだよなぁ、私、冒険者なんだから。

「あるよ、だって冒険者だもん。」
私はCランクに上がったギルドカードを見せる。

「は、はぁ?」
そんな声を漏らす。

「子どもにはね、親しかいないんだよ。母親が死んじゃって、今はあなたしかいないの。分かる?そんなあなたがこんなんだったら、ロアやサキがちゃんと育たないでしょう。」

 そんな言葉に震えながら拳を握る。

「俺だってなぁ、やってるんだよ。一生懸命にな、それが分からないのかよ!」

「分からないよ!」
私のその言葉で静寂が訪れる。

「分からないよ。あなたが何をしていて、何を努力してるかなんて。私はあなたに努力しろなんて言いたいんじゃない、子どもには親しかいない、せめて成人して出ていくまで耐えようよ。」

 最後は優しく、そう言う。

「無理だ、そこまで耐えられるような金はない。」
すっかり酔いも覚めた様子で言う。

「あなた、なんの仕事をしてるの?」

「料理人だ。」

 いや、どこのよ。

「ソラお姉ちゃん、あのレストランのです。」

 はぁ!?あそこの?あの美味しかったご飯を作ってるのがこの人なの?

「あなたの料理、美味しかったけどなんでお金がないの?」
私はもう一度質問をする。

 あそこのご飯はほんとに美味しかった。なのに謎だね。

「客が来ないんだよ。開店当初から。」

「初めはまだよかった。知り合いが来てくれた。でもな、その知り合いたちも家庭がある。母さんが死んでしまった頃から、パタリと来なくなった。」

 それでお金がないのか。

 料理、私も料理くらいはできる。あとは宣伝とお店、あと料理の変更。もっと安くすれば来ると思う。
…土地関係だったら領主に相談できないかな?

「ねぇ、色々と策があるから、数日待ってくれない?」

 私はロアの父親にそう言った。

「策?なんだそれ。」

「ちょっと時間がかかりそうだから。」

 魔法少女の格好は恥ずかしいけど、宣伝にはなると思う。いざとなったら私が宣伝するか。

 色々と変わっちゃうかもだけど、許してほしい。
私は、明日、領主に会おうと思う。

 そのために、宿屋で早めに寝よう。

 そう思いながら、ロアの家を出た。

———————————————————————

 ソラの策とは一体なんでしょう。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。 このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...