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玲香 救援要請   7月4日 木曜日

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ある、木曜日、午後8時頃、スナック茜から救援要請が入った。
玲香が鶴舞へお客様を送り届けた時だった。ママから電話が入る。
「れいちゃん、今、何処」  ママが慌てている様子だ。
「今、鶴舞にいるけど・・・」
「よかった、お願い すぐ来て」
「お客さん?」
「ごめんね!違うの!お願い、お願いだから、お店を手伝って、今、私一人なの、
加奈ちゃんも智ちゃんもお休みで連絡が付かない、
なのに、お客さんがどんどん入って来て、私一人では、もう、どうにもならない、ね、お願い、助けて!」

「でも、助けろって言われても、スナック経験、全くないし、仕事中だし・・」

「そう、言うと思って、いい、私の言うことを聞いて、
タクシーはメーター入れたままでいいから来て、
そして、ジャンボパーキングにメーター入れたまま駐車しておけばいいから、
お金は全部、私が払うから、で、来る途中、
東新町の南側にほら、ファミマの手前にドレスショップがあったでしょ、
そこで適当なドレスを買って着替えて、お店に来て、お願い、
私にはれいちゃんしかいないの!
お店にいるだけでいいから、何もしなくていいから、
お客さんとお喋りしているだけでいいから ね!お願い!」

「ママがそこまで言うならいくけど、あまりあてにしないでよ」
「ありがとう、れいちゃん、本当に助かる、待っているから、早く来てね」
「了解です」玲香は言われた通り、キャミワンピースを買うと、
ジャンボパーキングにタクシーを入れて、
駐車場のトイレで着替えるとお店に向かった。
お店は、ほぼ満員状態だ、ママがせわしく飛び回っている。
 [ママ、ビール]
  [炭酸無いよ]
 [ママ、お勘定]
 あっちこっちで言葉が宙に浮いていた。玲香はドアを開けると、
 「は~い、れいちゃんで~す。」
「あれ、れいちゃん、どうした?今日、お休み」
「中沢さん・吉村さん、お勘定なの、帰るの」
「れいちゃんは、そんな格好して、どうしたの」
「今日は、特別応援、ママが立っているだけでいいから来いって」
「じゃ、もう少しいるか 」   中沢さんたちはまた、腰を下ろした。
 テーブル席についていた3人連れのお客さんが玲香を見て、
「えぇ、れいちゃんってタクシー運転手のれいちゃん ? ホントだ」
 前に、茜で呼ばれて送ったお客さんだ。
「あの時はありがとございました、島さんでしたっけ! また、よろしく
お願いいたします」
れいちゃん、れいちゃんと呼んでいるので、他のお客もれいちゃんと呼びだした。
「れいちゃんビール頂戴 」
「れいちゃん、こっち、炭酸無いからね」
「は~い、ちょっとだけ待ってねぇ!」
  ママが用意すると、玲香はテーブル席に次々に運んだ。
 すると、島さんの連れが
 「れいちゃん、かわいいお尻」と云って玲香のお尻を撫でた。
 「わ、いやらしい、セクハラよ、 
セ・ク・ハ・ラ・ ・・言っとくけど、お尻だけだからね」  
 玲香はびっくりして大きな声を上げた。
同時に、まずいと思って・まくらことばのつもりでお尻だけだからね、と言ったのだ。
しかし、まくらことばがあだになって帰って来た。

「えぇ、おしりだけってお尻はさわっていいんか? 」

と云って、また、島さんの連れが玲香のお尻を触った。
玲香は、不穏な空気を感じた。
「だめだろ、幸次、行儀悪いな!」
すると、もう一人の連れが、
「幸次、飲みすぎだぞ、島さん、こんな奴、連れて来なきゃよかったのに、
こいつ酒癖悪いから、ほどほどにしないと、幸次、いい加減にしろよ」
玲香は雰囲気が悪くなってくるのを避けようとして、
「幸ちゃん、言っておくけど、私のお尻、臭いからね、
私の干支はスカンクなんだから」
「干支にスカンクってあったか」  幸次が口ずさむ
「隠れ干支って知らないの、もう、ほら、手だしてみて臭うでしょう」
「あ、あ、ホントだ、れいちゃんのにおいがする、いい匂い」嬉しそうだ。
「あんまり臭いから手も腐ちゃうよ、大丈夫、幸ちゃん」 玲香が言った。
「大丈夫、とっくに頭、腐っているから・・・」
誰かがその会話を聞いてプッと噴出した。笑いが聞こえる。
張りつめていた、その場が和んだ。
すると玲香が歌いだした。
「おしりふりふり、おしりふりふり、おしりふりふり」
と言って、おしりを振りながら歩く。
すると、幸ちゃんがまた、おしりをさわった。島さんが触った。
島さんの連れも触った。
 「おしりふりふり、おしりふりふり、おしりふりふり」
そのうちにお尻フリフリに手拍子が付き、みんな歌いだす。
「おしりふりふり、プップ」「おしりふりふり、プップ」 
「おしりふりふり、プップ」に変わった。
お尻フリフリは、お尻が横に揺れるが、プップウはお尻を突き出す格好になる。
つまり、薄っぺらなキャミワンピースを着ているお尻は、
プップウの時、パンティラインがしっかり見えるのだ。
白い花柄刺繍のパンティだとわかるくらいにはっきりと見える。
それが、セクシーと云うかエロチックと云うか、なんとも艶めかしい  
玲香はこれを知っているのだろうか。
お客、全員が玲香のお尻に注目だ。勢いが付く
「おしりふりふり、おしりふりふり プップ」   中沢さんが触る
「おしりふりふり、おしりふりふり プップ」  吉村さんが触る

「おしりふりふり、おしりふりふり プップ」  山田さんが触る
次から次と玲香は順番にお客さんの顔に向けて プップをする。
お客さんたちはこの時とばかりに触る、撫でる、たたく、
顔をつけてチュウするお客まで出て来た。
プップの時お尻を上げるものだから、体がかがむ、
すると、胸の谷間が開いてオッパイも見えた。
それに気づいたお客さんたちは、前から後ろから大騒ぎだ、
「おしりふりふり、おしりふりふり プップ」が鳴りやまない。
すると、一人でカウンターで飲んでいる静かな金山さんが ママに言った 。
「ママ、なんか、真面目に飲んでいるのがあほらしくなった。
れいちゃん、触っても大丈夫かな」  
ママにお伺いを立てている。ママは大きな声で言った
「れいちゃん、真面目な金山さんもお尻注文なんだって」
「はーい、お尻 注文一丁」
「おしりふりふり、おしりふりふり、おしりふりふり プップ」と言いながら、
金山さんにお尻を向けた。金山さんは両手で、じっくり撫でまわす。
「あ、インチキ、触りすぎ」って、一人が叫んだ、みんな大笑いだ。
「キャバクラより、よっぽど、いい、れいちゃんにカンパ~イ、最高!」
「 ママ、こちら、ビールだって」
ママがカウンターから玲香にビールを手渡しをすると、
玲香はお客さんにビールを注いで廻る。
胸元から見えそうなオッパイを覗き込もうとするお客に、
ハイって言ってほんの一瞬、胸元を開いて見せた。大歓声だ。
「れいちゃん、何飲んでるの、ビール飲もうか」
杉田さんがビールを注ごうとする。
「私、まだ、仕事中なの」
杉田さんは、玲香がタクシーの仕事中に此処に来ている事を知らないようだ。
「だから、飲まなきゃ、売り上げにならないよ」

「私の仕事はタクシー運転手なの、抜け出してきて手伝っているの
 なので、、タクシーはジャンボパーキングで待機中なの
 わたしが飲んだら、どうなると思う、みんなが、飲ませたって事で全員逮捕よ。」
「やば、それまずいよ、」幸ちゃんが言った。
「でしょ」

「だから、今日は、お酒は飲めないし、ス カ ン ク~って感じ」
「そりゃあ、かわいそうだ、じゃあ、何、飲みもしないで、お尻フリフリってか、やるねぇ」
「タクシーやめて茜においでよ、おれたち、毎日のように来てあげるからさ~」
「飲みもしないで、ここまでできるんだ。こんな女性、錦にもいないぞ」
「いや、参った、すごいね」
「ママ、もう、茜やめて、スカンクに名前変えたら・・・」
「本当ね、私、スカンクで皿洗いで使ってもらおうかな」
 みんな大笑いだ。誰ともなく、話題はスカンク、みんな一つになっていた。
中沢さんがママに言う。
「れいちゃんがいると、帰る時間を忘れてしまうよ、お勘定して、で、れいちゃんに乾杯って事で、ボトル入れとくから、それも一緒に頼むよ」
すると、玲香が、新しいいいちこを出してくると、
いいちこにスカンクの絵をかいて玲香と書いた、
その横に中沢・吉村と書いて、これでいいと言って見せると、
「これ、可愛いね、スカンクだ、すごくいいよ」 
みんなが見たいと言い出した。それを手渡しに見せると、
俺も俺もと、あっという間に10本のボトルが売れたのだ。
ママがボトルの在庫が無いって言うと、ボトルは次回にして、
今日はその支払いも一緒にお勘定するから、
次に来るまでにスカンクを書いておくようにと、みんなに頼まれた。
時計は23時40分だ、玲香は、これが潮時と思って、
「ほたるのひかーり・・・・」と歌うと、お客の一人が歌いだした。
「スカンクのにお~い、いいかおり、あしたもスカンク~会いたいな~」
「スカンクのにお~い、いいかおり、あしたもスカンク~会いたいな~」
「スカンクのにお~い、いいかおり、あしたもスカンク~会いたいな~」
みんな合唱して帰って行く。
玲香はみんなに謝りながら、明日はないと、きっぱり断った。
中沢さん・吉村さんがもう、電車がないと云うので玲香が送る事にした。。
村井さん・井沢さん・山口さんは春樹を呼んだ。
島さん・幸ちゃん・山田さんは豊田だ 修平を呼んだ。
あと2台タクシーが必要だったので修平に頼んだ

 0時10分、今日という日がようやく終わった。玲香に感謝だ。

感謝してもしきれない。本当に玲香に助けてもらった。

あの、男たちのさばき方 、ただ者ではない。
本当に水商売に染まっていないのだろうかと、驚くばかりだった。
今日の売り上げ、二十六万円、今までにない最高の売り上げなのだ
ボトルだけでも十万近くの売り上げがある。
すべて、玲香が売ったようなものだ。すご~い、もう、頭が上がらないと思った。玲香の今度の休みは日曜日だ。春樹も修平も仕事だ。
3人の日程表をもらっているので、すぐにわかるのだ。
今度の日曜日は玲香とどこかへ食事に行こう、
その時に、今回の支払いもしようと思ったのだ。
ジャンボパーキング代、メーター待機料金、ドレス代、救援代、含めて十万円、
利益が云々じゃない。本当はもう、二十六万円、全部上げてもいいと思った。
それくらい嬉しかった。

玲香が 一宮の中沢さんと岐阜の吉村さんを送り届けて
会社に戻ると丁度三時、春樹が車の中で待っていた。
「お疲れさん、岐阜へ行ったんだって、いくら出た?」
「尾西経由の安八町だったから、三万円弱、
だって、ジャンボパーキングで待機していた一万三千円もメーター切らないで、
そのまま、行けって言うんだもん、甘えちゃった」

「よかったな、だけど、ちょっと、いくらママの頼みでも、大胆すぎやしないか、
村井さんたちから聞いてびっくりだよ」

「ね、参っちゃった 、まさか、ね、ごめんね!」

「誤る事ないけどさ、あきれてね、玲香にもママにも、
ママ一人で賄(まかな)えきれないのなら、お客入れなきゃいいのに・・・
玲香も玲香、仕事中にスナックにいましたってだけでも、大問題なのに・・・
ホステス?何て呼ぶんだ、スナックだと、まぁ~、バイトしていました、
なんて、わかったら、即刻、首だから」 
  
「だよね!ごめんね!本当にごめんなさい」
「村井さんたち、家に着くまで、玲香の話・・・スカンクってお店を出すのなら
スポンサーになってやるって意気込んでいたよ」


「するわけないじゃん、きっぱり、お客さんたちにも、今日だけですって
断っておいたのに・・・だって、私、スナックの事、なんにも、わからないし、
何をしていいのかもわからないのに、
ママが立っているだけでいいからって言うから立ってただけなのに・・・・」

「ケツ、出してか」
春樹の顔がゆがんでいる。玲香はしまったと思った。
村井さんたちに口止めしておけばよかったと思ったのだ。
春樹にだけは知られたくなかった。

「ケツなんかだしていないわよ、
ママがリオのカーニバルみたいに踊れって云うから、
お尻振って踊っていただけ・だから、
ごめんごめんごめんごめんごめんごめん、
ママが、酔っぱらって、おしりふりふりってやって、
私にも、それをやれって云うんだもん。
嫌だったけど、ほら、ママ怒ると怖いから・・ママがわるいのよ。
私、こんな事したくなかったのに」泣きそうな顔をして答えた。

「まぁ~いいけどさ、それで、着ていたドレス、どうした」

「えぇっ、バックに入ってるよ、ママに返さなきゃ、どうして?」

「生地が薄いペラペラのドレスなんだって、お尻を突き出した時、
パンツまで透けて見えたって、タクシーの中で大盛り上がり、
うるさくて、運転も、ままならなかった」

「うそ、そんな・・・見えるわけないと思うけど・・・」
 それについては玲香も吉村さんたちに言われて知っていたのだが、
春樹には、とても知っていたとは言えなかったのだ。

マンションに帰ると、玲香は、なんか、身の置き所が無く 、シャワーを浴びた後も、
春樹に合わせる顔が無く、なかなか出て来れなかった。

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