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53話 リュウトの母親マリシャーヌに恋をした吸血王サビオ
しおりを挟む次の日に母親を連れて自分の領地の城に帰り、城を母親に見せると母上は目を見開き。
「此れがリュウトの城なの、綺麗で吃驚したわ」
サビオがニコニコして。
「マリシャーヌ様、城の中から見る夕日の海は、綺麗で言葉になりませんよ。それに海上から見る城は此の地の観光名所です。宜しかったら、私が案内いたしますがどうですか」
城の中に入りると仲間が集まり、口々に久しぶりと挨拶をしてナナファ―ナが。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。リュウト様と正式に婚約いたしました。此れからも宜しくお願い致します」
ライナも緊張して。
「私し、ライナ・パイオニもリュウト様の婚約者になりました。宜しくお願い致します」
「2人とも王女様なのに、息子の婚約者になっていただき光栄です。至らない息子ですが宜しくお願い致します」
いつまでも、この世界の救世主のリュウトを小さな子供扱いをする、母親に子供を愛する母親の姿を見て、皆は心がホッコリしていたのでした。
その晩は、城の料理長が腕に寄りを掛けて沢山の料理を作り、母上を囲んで楽しい食事会になって母上がリュウトの子供の頃の話をして。
「リュウトは、小さい時は、発育が遅くて言葉も満足に話せずに同じ位の子供に虐められて、もしかしたなら、知恵遅れなのかと心配したのよ。でも、あのひ弱だったリュウトがこんなに仲間が出来て世間から救世主様と呼ばれて王女様2人と結婚するなんて、今でも信じられないわ」
サビオが母上の話を聞いて。
「マリシャーヌ様は、本当に優しい心の持ち主でリュウト様は、良い母親に恵まれましたな。世の中の母親がマリシャーヌ様みたいでしたら子供たちは幸せでしょう」
「サビオ様は私を買いかぶり過ぎですよ。リュウトと言う子供がいたから私は、頑張れたのです。リュウトは私の宝物なのよ。オッホホ」
リュウトは、母親の優しい言葉に涙が零れそうになり、天井を向いて涙が流れるのを防いたが、ナナファ―ナとライナが涙を流して。
「私たちも、マリシャーヌ様みたいに良い母親に成れるように頑張ります」
サヨナァも感激して。
「マリシャーヌ様は、自分の子供だけでなくて孤児たちを育てたりしてまるで聖母様みたい」
食事の後に女性たちは、母上を露天の大浴場に誘い、大浴場から海を見ながら、女子会を開き、盛り上がったのは男性たちには内緒でした。
次の日に諜報部のハンドイがドアイル帝国の報告に来て執務室で報告を聞いた。
「リュウト様、ドアイル帝国の変化は、ありませんが如何やら前皇帝の皇妃で今は皇后のサマサイナ・ドアイルが実権を握り、女帝になったみたいです。
奴隷や平民を見下して貴族が平民を奴隷の様に扱うのは、前より酷くなっています。此の儘では、帝国の国民が可哀そうです。何とかなりませんか」
「やっぱりか! ドアイル帝国の皇族たちは、駄目みたいだな。女帝になったサマサイナはどんな人物なのだ」
「はっきり言って分かりません。皇帝が生きている時の皇妃時代は、穏やかで奴隷たちにも優しかったみたいです。女帝になった今は、人が変わったみたいに権力を笠に着て贅沢三昧で奴隷が気に要らないと暴力を振るい、まるで今までと別人みたいだと言われています」
「そうか、争い事は嫌だが何とかしなくてはドアイル帝国の国民や奴隷たちが可哀そうだな。そのまま様子を見てくれるか。覚悟を決めて帝国の皇族と貴族たちを排除する為の用意をするから」
「はい、分かりました。何か動きがあったら直ぐに連絡いたします」
ハンドイが執務室からいなくなるとサビオが来て。
「リュウトの母上を海上から城を見る為に船に乗せても良いかな」
「うん、今から王国と公国の国王と通信機で会談をするから、サビオが良いなら母上の案内役で此の領地を観光させてくれると助かるが、お願い出来るか」
「はい、私が聖国に行くのは、一週間後なのでその間は暇なのでマリシャーヌ様の案内は任せて下さい」
サビオは、リュウトの許可を取るとマリシャーヌの部屋に行き部屋のドアを叩き。
「マリシャーヌ様、サビオです。観光の案内に来ましたが入っても宜しいですか」
「どうぞ、お入りください」
サビオが部屋に入ると、マリシャーヌは着替えたばかりなのか恥ずかしそうに顔を赤らめて。
「此の服装で良いかしら。船に乗ると聞いたものですから濡れても良い服装にしたのですが」
マリシャーヌの若々しい服装と態度にサビオは釘付けになり思わず。
『綺麗だ』と呟き。
「えっ? 何とおっしゃいました?」
「いえ、何でも無いです。その服装なら大丈夫です。では行きましょうか」
サビオがマリシャーヌをエスコートして船の乗り場に向かう様子を見ていたナナファ―ナとライナは。
「まるで夫婦見たいね」
と言ったのです。
船に乗る時にマリシャーヌがふらついて転びそうになり、サビオが慌てて抱きしめて。
「船は揺れて危ないので」と言い。マリシャーヌをお姫様抱きにして船に乗せると、マリシャーヌは、余りの恥ずかしさに年甲斐も無く顔を真っ赤にしていたのでした。
2人は船に乗り、海上から城を見上げると、絶壁の崖の上に白亜の城がまるで天に向かって聳え立っているようでその姿に、周りの船に乗っている観光客からも歓声が上がり、マリシャーヌも小娘の様に歓声を上げて城を見上げていた。
そのマリシャーヌの姿を見てサビオは。
「何と純真で優しい方なのだ。私は2千年以上も生きて来て初めて恋をしたみたいだ」
と呟いた言葉は波の音に消されて誰にも聞かれる事は無かったのだ。
船が陸に戻る途中にマリシャーヌは上気して赤くなった頬を抑えて。
「サビオ様、ありがとうございました。こんな楽しかったのは、まだ子供だった時に今は亡くなった両親に連れられて遊びに行った時以来ですわ。ウッフフ」
サビオは、そのマリシャーヌの可愛らしさに思わず抱きしめそうになり、自制して心の中で。
(だ、駄目だ。私は、完全にマリシャーヌ様に惚れたみたいだ。どうすれば良いのだ)
そんなサビオの気持ちも知らないマリシャーヌは、まるで娘に返った様にはしゃいで領内を観光して回ったのでした。
マリシャーヌは観光を終わり城に帰ると、リュウトにまるで子供の様に。
「リュウト、海上から見た此の白亜の城は凄く綺麗で感動したわ。他にもサビオ様が色んな所に連れて行ってくれて物凄く楽しかったのよ。サビオ様にリュウトからもお礼を言っておいてね」
「母上が楽しんでくれて良かったです。サビオには後で礼を言っておきます」
「お願いね。ランランララ・・・・ランラン・・・・・・ウッフフ」
母親の初めて見せる歌を口ずさむ楽しそうな姿にリュウトは首を傾げて。
「母上があんなに喜ぶとは、いったい何があったのかな」
マリシャーヌは、用意された自分の部屋のベッドに入ると何故かサビオの事ばかり考えてしまい。
(いい年をして小娘みたいにはしゃいで私は、どうかしているわ。もしかして私はサビオを・・・・・そんな事は、おばさんの私には無いはずだわ・・・・)
マリシャーヌは、自分の心を持て余していたのでした。
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