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19話 それぞれの思い

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                                       ナナファ―ナ王女の思い
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 私は、オスガン王国、第一王女のナナファーナ・オスガンです。

 ここ数年前から、天使教の信者の困窮者と自殺者が増えて、お父様のバイセラ国王が悩んでいるのです。

 天使教会から、16歳の成人になると能力や職業を授けられるので国民の殆どが天使教の信者なのです。

 信者が多いので、困窮者と自殺者は目立ちませんが、最近は急増して国としても困っていたのです。

 そんな時に、不思議な人物が現れたのです。

 彼の名はリュウトと言い、孤児園の園長の息子さんで平民なのですが、王立学園の入学試験を学科、実技の試験では王国の魔法騎士団長でも使えないような火の魔法を使い両方を1位で合格したのです。

 平民の人が王立学園の入学試験で1位になるなど、学園始まって以来初めてなのです。

 貴族は、子供が小さい時から家庭教師をつけて勉強させますが。

 平民には家庭教師を雇うお金などなく、だから私が1位で合格するのが当たり前だと思っていた。

 だが思いもかけずに2位だったのでガッカリしてしまい。

 1位で合格したリュウトがどんな人なのか興味を持ち試験の後、探していると何と、校庭のベンチで気持ちよさそうに転寝をしているではないか。

 リュウトは、見た目は女の子と間違えるような綺麗な顔立ちで少し見とれていましたが私が声をかけると、驚いたのか暫く私を見てから、慌ててベンチに服が汚れないようにハンカチを敷いてくれたのです。

 今度は、まだ成人したての16歳の男の子が貴族でも出来ないマナーを知っていたことに驚き、話してみると言葉使いも綺麗なので、本当に平民なのか疑い。

 もしかして、どこかの国の王族か貴族が訳があって身分を隠しているのかと思ったのでした。

 学園に入学して初めての野外実習の時に私は魔獣に襲われて死を覚悟したのです。

 その魔獣の前に立ち、命がけで魔獣を倒して助けてくれたのはリュウトで私の命の恩人なのです。

 そんな、リュウトを好きになるなと言うのは無理で、私は彼を大好きになり、愛してしまったのです。

 リュウトが騎士爵になり、貴族になったときは、もしかしたら彼と結婚できるかもと淡い期待をしたのです。

 しかし、その後にリュウトの正体が分かり、彼は何と何千年も前に世界を救った龍人王様だったのでした。

 彼は私など手の届かない存在の人で、でも彼は偉ぶった態度などをとらずに今でも仲間として、いえ、友人として私に接してくれているのです。

 私は、リュウト以外の男性を好きになれないので出来たら彼を見守り、一生独身を貫こうと思っているのです。

 でも本音は、リュウトと結ばれたら良いのですが・・・・・・。


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                  ダンライ・ランキンの思い
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 僕はランキン公爵家の長男のダンライ・ランキンです。

 父親が此の王国の宰相なので、小さい時から公爵家の跡取りとして剣と学問の家庭教師を付けられて、厳しく育てられました。

 第一王女のナナファ―ナ様と同じ年なので時々一緒に勉強した幼馴染で、王立学園の入学試験はどちらが1位を取るか競い合っていました。

 結果は驚く事に1位はリュウトと言う平民で僕は3位でした。

 僕は、ナナファ―ナ王女様に負けたのは仕方ないが、平民に負けたのは悔しくて入学式で初めてリュウトに会ったときは。

 見た目は女と間違える位に綺麗な顔でこんな優男に負けるものかと思い。

「卒業までに絶対お前を抜いてやる」

と宣戦布告したのだ。

 だが、付き合ってみると彼は、平民なのに知識が豊富で、礼儀作法も貴族以上で平民というのは嘘で本当の彼は何者なんだろうと思ったのです。

 学園の野外実習の時のリュウトの行動は、自分を顧みない命がけの行動でナナファ―ナ王女の命を救い。

 見た目と違い男らしい行動に僕は心を打たれ、彼を一生の友として付き合って行こうと思ったのだ。

 その後にリュウトが騎士爵になり、驚く事に龍神王様だと分かっても、彼の僕に対する態度は変わらず、友として接してくれた。

 今はリュウトから指導を受けて能力も上がり、此れからも僕は龍神族の子孫なので、彼に忠誠を誓い又、親友として一生を共にしようと思っているのだ。

 蛇足だが、ナナファ―ナ王女がリュウトに思いを寄せているのはまるわかりなのに、リュウトは女性に関しては鈍感なので気が付かず。

 彼がいつナナファ―ナ王女の思いに気が付くか楽しみで出来る事なら2人が結ばれる事を願っている僕なのだ。


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                  サヨナァ・シャロムの思い
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 私はシャロム辺境伯の長女でサヨナァ・シャロムと言います。

 私の両親は龍神族の子孫で先祖は龍神王に仕えていて、此の世界が滅亡の危機に晒された時に龍神王に従いこの世界を救ったのです。

 その時に従った4人に龍神王が。

「この世界が、滅亡の危機の時は再び現れる」

 と言い残して忽然と姿を消したそうです。

 残された4人は冒険者として過ごし、その子孫で今の国王の先祖オスガン1世が立ち上がり、領地を巡る争いを平定して立ち上げた国がオスガン王国で。

 その時に一緒に戦った同じ龍神族の3人の子孫の1人が私の先祖で辺境伯に任じられたのです。

 ですから、両親は龍神王様を崇拝していて武術を磨きいざという時に備えているのです。

 辺境伯の領地は天使教の本山のある、ナチラス聖国と接しており。

 私の父親は、天使教のやる事に疑問を持っていてナチラス聖国がいずれ攻めて来ると言い、準備をしているのです。

 私も女なのに、小さい頃から男の子みたいに武術を訓練させられ、今では男みたいな性格になってしまい。

 嫁の貰い手が現れないと両親は心配をしている。

 成人して王立学園に入学したが、こんな性格なので、同性の友達も出来ずにいた。

 そんな時にランキン公爵家の長男ダンライが同じ班に入らないかと誘ってくれたのです。

 班のメンバーはダンライの他にナナファ―ナ王女と何故か平民のリュウトがいたのだ。

 私を誘ったのは、その平民のリュウトで、平民なのに王女や公爵の息子に囲まれているのが不思議だったが。

 彼は不思議な人で、貴族よりも高貴な綺麗な顔立ちのうえ、動作や言葉使いも綺麗で入学試験で学科と実技も1位だったと聞き、興味を持ったのです。

 その後の彼は、野外実習の時に魔獣に襲われたナナファ―ナ王女を助けてあれよ、あれよという間に騎士爵になり、驚いた。

 だが、リュウトが龍神王だと知った時は、天地がひっくり返る程驚き。

 両親に手紙で知らせると、父親はリュウトに会いに直ぐに王都に来ようとした。

 母親に領地の収穫時の大事な時期だから駄目だと言われて、暇になったら是非に会いたいと伝えてきたのです。

 私は、伝説の英雄で龍神王にどう接したら良いのか悩みましたが、リュウトは今迄通り友達として接してくれと言い。

 今では冗談も言い合える友達だが、私に取っては魔法や色んな事を教えてくれる師匠なのだ。

 ナナファ―ナがリュウトを慕っているのが分かっているが、朴念仁の彼は気が付いていなくいつ気が付くか楽しみだ。

 私? 男みたいな私には色恋は縁が無いのさ、そのうちに物好きが現れるかもしれないがね。

「アッハハハー・・・・」
 
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