10 / 58
10話 野外実習の後で
しおりを挟む最後を歩いていたバートン教官が急いで駆けつけて来て。
「ナナファ―ナ様、大丈夫でしたか? 警護の騎士たちがナナファ―ナ様を守らずに逃げ出してしまい、誠に申し訳ありません。まだ新米の騎士といえ厳しく処分いたします、リュウト、ナナファ―ナ様を助けてくれてありがとう、お陰で助かったよ」
「僕は当然の事をしただけですから」
ダンライとサヨナァが息を切らして駆けつけて来て。
「リュウト、魔獣に襲われたと聞いたが大丈夫か?」
「ナナファ―ナ、怪我は無かったですか?」
「リュウトが私を守って、B級魔獣で鋼の猪を倒してくれたから無事だったわ。でも、死ぬかと思った」
バートン教官が・・・・・・。
「それにしても、リュウトは凄いな、B級魔獣で鋼の猪を倒すとは、並みの騎士でも倒せないのに、それも魔法を使わず剣だけで倒すとは、驚いたよ」
離れた所から様子を見ていたガクトイが、歯ぎしりして。
「クソ―! 鋼の猪を倒すとは、彼奴は何なんだ! 平民の癖に、次こそは絶対に殺してやる」
バートン教官が思い出したように。
「リュウト、疲れている所で済まないがDクラスの班が戻らないので探しに行くが一緒に来てくれないか」
「はい、良いですよ」
ダンライとサヨナァが。
「僕たちも一緒に探しに行きます」
「そうか、助かる」
逃げた新米騎士たちも名誉挽回の為に付いて来る事になり、日が暮れ初めた森に入り探していると、血まみれの4人を見つけたが3人は死んでおり。
1人だけが生きて居り、リュウトが抱き起そうとすると、気が付き口を震わして。
「ガク・・が・・・・魔獣をしょう・・・・」
切れ切れの言葉を残して亡くなったのだ。
その亡くなった生徒は、紙切れを握っていたので手から取って見て見ると、紙切れには血で汚れていた。
見た事のない文字が書かれていたので、後で調べようと思い、ポケットに入れたのだ。
見習い騎士たちが4人の遺体を運んで学園の基地に帰ると、流石に疲れていたので、テントの中に入り寝袋に潜り込み直ぐに眠りに落ちてしまった。
朝早く、目を覚まし、皆はまだ寝ていたので静かに寝袋から出てテントの外に出ると、昨日の事が嘘のような綺麗な朝焼けで、見ていると暫くして皆も起きて来た。
昨晩の残りのスープとパンの簡単な朝食を取りながらナナファ―ナが改めて。
「リュウト、昨日は本当にありがとう。あのままだったら私は死んでいたから、貴方は私の命の恩人だわ」
「それにしても、リュウトは凄いなB級魔獣の鋼の猪を倒すとは」
「火事場の馬鹿力だよ。自分でも信じられないよ」
食事が終わる頃に全員が集まるように言われて、集まるとバートン教官が。
「昨日は、残念な事にDクラスの4人が予想もしない魔獣に襲われて亡くなり。野外実習は明日迄の予定だったが、打ち切って今から学園に帰るので準備をしてくれ」
昨晩のうちに騎士二人が、馬を飛ばして王都の騎士団に報告に行き、普通の騎士より強い近衛騎士団がナナファ―ナ王女の護衛に来ている。
準備が終わると、あんな事件の後なのでナナファ―ナは王女なので特別な馬車に乗り近衛騎士団に守られて帰る事になった。
ダンライとサヨナァは高貴な貴族なので分かるが、何故か平民の僕も同じ馬車に乗せられたのだ。
馬車の中で死に際に残した生徒の言葉を思い出して何を言いたかったのか考えていると、サヨナァが。
「リュウト、何を考えているの? もしかしてエッチな事?」
「馬鹿な事を言わないでよ! 亡くなったDクラスの生徒の最後の言葉を考えていた」
リュウトが聞いた切れ切れの言葉を言うと、ナナファ―ナが考え込み。
【ガクはガクトイ、・・・・・・しょうは召喚・・・・・・】
それを聞いたダンライが。
「あの森に、B級魔獣が出た事が無いのに、そうか! ゾンダイ家は召喚魔法を使えるはずだ。ガクトイがD組の襲われた場所から、あの魔獣から逃げれたのもおかしいし・・・・・・もしかしたなら」
「ダンライもそう思う、でも証拠がないわ」
証拠と言われてリュウトは、あの紙切れを思い出して、ポケットから取り出し。
「あのさ、此の紙切れは亡くなった生徒が握り締めていた物だが」
ダンライが紙切れを見て驚いて。
「こ、此れは! 魔法陣に間違いない。破れているし、血で文字が完全に読めないが魔法陣に間違いない」
「魔獣を召喚するには、魔法言葉を唱えるだけでは無く魔法陣が必要だと、家庭教師から聞いたことがあるわ」
2人の話から、ゾンダイ公爵家の長男のガクトイの仕業だと思ったが、裏付ける証拠が無いので黙っていたのだ。
王都に付くと、生徒を乗せた馬車は学園に行き、ナナファ―ナ王女とリュウトたちを乗せた馬車は、近衛騎士たちに守られて王城に向かっている。
王城に着き、馬車から降りて近くで見る王城は、前世のベルサイユ宮殿の様で見惚れていた。
ダンライに注意されて、王城の中に入ると、ナナファ―ナたち3人と別れて僕だけ侍女に別室に案内されたのだ。
案内された部屋は、王都を一望出来る豪華な部屋で、案内した侍女が。
「この部屋で暫くお待ち下さい」
前世は大学の研究生で、此の世界でも貧民街で育ったために、初めての上流階級の豪華な部屋に落ち着かずに、何のために王城に連れて来られたのか分からず不安だったのだ。
暫くすると、中年の眼鏡をかけた貴族が部屋に来て。
「待たせてすまない。わしは、スマライ・ランキン公爵でオスガン王国の宰相をしている者だ。ダンライの父親で息子から君の噂は聞いておる。この度はナナファ―ナ王女様を助けてくれて礼を言う」
「初めてお目にかかります。希望孤児園の園長の息子のリュウトと言います。宜しくお願い致します」
「そんなに堅くならんでも良いから楽にしなさい。野外実習の件で騎士から報告は受けたが、君に直接話を聞きたいので呼んだのだ。詳しく話してくれるか」
「はい、分かりました」
リュウトは野外実習で起きた事を詳しく話して、推測は話さないでDクラスの生徒の最後の言葉と紙切れはダンライに渡したと話した。
話し終えると宰相は難しい顔をしていたが、最後に。
「君は、本当に平民か? それにしては話し方がその辺の貴族より綺麗な言葉使いで礼儀正しく教養があるから、わしには、唯の平民とは思えないが」
緊張して前世の言葉で話してしまい。苦しい言い訳をして。
「母上が、言葉使いに厳しいもので・・・・・・」
宰相は、ニヤリと笑い。
「そういう事にしておこう。ナナファ―ナ王女を助けた礼を陛下が直接言いたいが、今日は外国の使者が来ており、日を改めて褒美を渡すと言っておるので今日は此れで帰りなさい」
宰相が部屋を出ると、ナナファ―ナとダンライ、サヨナァが来てダンライが。
「リュウト、親父に会って、緊張したか」
「ダンライ、リュウトをからかうのは止めなさいよ」
「宰相がダンライのお父さんとは知らなかったから、驚いて焦ったよ」
サヨナァがからかい。
「へぇー、リュウトでも緊張するんだ」
「そんな事よりも、帰るには、何処から出れば良いの?」
ナナファ―ナが含み笑いをして。
「ウッフフ、付いてらっしゃい」
「王女様の直々の案内恐れ多いのですが」
「馬鹿を言わないで、来なさいよ」
ナナファ―ナに付いて行くと王城の玄関に行き、玄関の前には豪華な馬車が待っていた。
馬車の前には、バートン教官がいて。
「リュウトを送るように宰相から言われた。此の馬車に乗れ」
バートン教官に馬車に押し込まれて、自宅に戻り、王家の紋の付いた豪華な馬車から降りるとお母さんが目を見開き。
「リュウト、貴方何かあったの?」
「後で、話すから心配する様なことは無いから」
送ってくれてバートン教官も馬車から降りて。
「リュウト君の母上ですか、始めてお目にかかります、私は王立学園の教官のバートンと申します。リュウト君はナナファ―ナ王女様を助けてくれたのですが、詳しい事はリュウト君からお聞き下さい。夜も遅いので、私は此れで失礼します」
自宅の中に入り、お母さんに野外実習の出来事を話すと。
「やっぱり! 私の胸騒ぎは当たったのね」
それから、ナナファ―ナ王女を助けたのに、貴族と仲良くなるな、とか説教をされて何とか母親からの説教を逃れて久しぶりにお風呂に浸かり、その晩は爆睡したのである。
75
お気に入りに追加
678
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる