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9話 王立学園の野外実習で1
しおりを挟む明日から2泊の予定で、王都から馬車で4時間位の所にある森で野外実習がある。
自宅に帰り、空間魔法で作った無限空間収納袋のウエストバッグの形のマジックバックに着替えなどの用意をしていると、母親が。
「リュウト、気を付けてね。魔獣が出ても無理して戦わないでよ」
「大丈夫だよ、明日行く森には危険な魔獣は出ないと教官が言っていたし、もしもに備えて騎士も同行するから心配ないよ」
「そうなら良いけど。母さん何だか胸騒ぎがするから、注意してね」
「お母さん、心配し過ぎだよ」
次の日の朝早くに学園に行くと、サヨナァが来ていて男みたいな口調で。
「リュウト来たか、今日の実践は楽しみだな。課題は飛びラビットを4匹倒す事だから楽勝だよな」
飛びラビットとは、体長が1m位の頭の真ん中に30cmの角と口に牙を生やした魔獣で飛び上がって、角と牙で攻撃してくるD級の魔獣だ。
魔獣には強さを表す為に階級が付けられている。D、C,B,A,S,SSがあり、飛びラビットは弱いDランクの魔獣なのだ。
ナナファーナとダンライも来て4人で話していると、剣の教師、筋肉隆々の元近衛騎士バートン・ガリラヤ教官が大きな声で。
「全員揃ったな。今から野外実習の森に行きく! 課題の飛びラビットを各班で4匹倒して貰うが、油断すると角や牙に刺され、死ぬこともあるので、注意しなさい。それと、無いと思うが、D級以上の魔獣が出た場合は、今から配る笛を吹きなさい。騎士が助けに駆けつけるから、それと森の5km以上の奥には絶対入らないように。以上だ」
学園が用意した馬車に分散して乗り、目的地に着くと、100人の生徒たちはクラス別に決められた場所に班に分かれて、野営の為にテントを設置した。
テントの設置を終えた班は話し合いをしていて、ナナファーナが。
「班のリーダを決めて、教官に報告して飛びラビットを探しに行きましょう。リーダを誰にします」
僕が当たり前の様に。
「ナナファーナで良いじゃない」
「あら! 成績順で言うなら、リュウトじゃない」
サヨナァが面倒臭そうに。
「ジャンケンで決めたら」
「そんな無責任な、では多数決で決めます。
リュウトが良い人、私はリュウトが良いわ」
ナナファーナが手を上げると、ダンライとサヨナァも釣られて手を上げて。
「ええっ! 何で僕なの・・・・・」
「はい、決まりリュウト頑張れ」
班のリーダにさせられて思わず前世の関西弁で。
「なんでやねん!・・・・・・」
と呟いたのですがその関西弁の言葉は誰にも聞かれる事は無かったのだ。
それから4人は、飛びラビットを倒す為に森の中に入ったが、なかなか飛びラビットを見つける事は出来なかった。
メンバーに隠れて探知魔法を展開すると、少し先の洞窟に飛びラビットらしき魔獣が隠れているのを見つけて。
「人間が大勢で来たから、飛びラビットは臆病な魔獣はなので隠れているかも知れないから、隠れていそうな場所を探そうか」
と言い、皆を誘導して洞窟の前に行き。
「此の洞窟の中に隠れて居そうだな、燻り出そうか」
サヨナァが。
「私が水で追い出すから、リュウトとダンライは剣を抜いて倒す用意をしておいて」
水魔法で雨のように洞窟の中に水を吹き付けると、突然の水に驚いたのか、キィー、キィーと鳴いて飛びラビットが5匹飛び出して来たのだ。
刀を抜いて用意していたリュウトは、飛びラビットの3匹の首を切り、ダンライが2匹の首を切り落として、5匹を倒したのだ。
ナナファーナが興奮して。
【凄―いー! 一度に5匹も倒して、明日が本番なのに、もう課題を達成したわ】
サヨナァが僕とダンライを恨めしそうに見て。
「私は1匹も倒せなかったわ。1匹くらいは残してくれたら良いのに。リュウトは火の魔法が凄いと聞いていたけど剣の腕も凄いのね。その片手剣は珍しくて初めて見たわ」
リュウトは創造の魔法で作った、前世の刀を胡麻化して。
「此れは、たまたま、露天の出店で見つけて珍しい剣で安かったから買ったけど、使いやすいから愛用しているんだよ」
「ふ~ん、そうなんだ。リュウトは平民なのに、物知りで座学は学年1位だし、実技は実力を隠しているみたいだし、リュウト本当は何者なの?」
「僕は、孤児院の園長の息子で平民だよ。嘘じゃないから」
ナナファーナは何かを考えていて、ダンライはリュウトを見て。
「僕も最初リュウトに会った時から、唯の平民とは思えなかったよ。常識で考えても、家庭教師もいない普通の平民が王立学園の入学試験を学科と実技の両方を1位の成績を取れるはずが無いからね。今は言わなくても良いけど、僕たちを信用したら本当の事を教えてよ」
僕は、何も言えずにただ。
「ゴメン、今は、何も言えない。仲間でいてくれてありがとう」
「私のせいで、湿っぽくさせてごめんなさい。大丈夫、リュウトが話してくれるまでもうこの話はしないから、課題も達成した事だし、帰ろうよ」
リュウトは帰り道で、王女、公爵、辺境伯の子供で、本来ならば平民の彼が口も利けない身分の3人に感謝して、此の3人にはいずれ自分が幻の龍人族で前世の記憶を持っている事を話そうと思ったのでした。
学園の基地に戻り、課題の飛びラビットの角と牙を教官に見せると驚いて。
「もう、5匹も倒して課題を終わらせたのか。流石にAクラスのトップの班だな」
4人は、自分たちのテントに戻り、夕食の準備を始めたが、ナナファーナが気まずそうに。
「ごめんなさい。・・・・私は料理をした事がないの」
他の2人も料理はした事が無いので、リュウトが配給された食材を使って肉と野菜の煮込みとスープを作ったのだ。
出来上がった料理とパンを食べて、ナナファーナが。
「美味しーい! リュウト、貴方を私のお嫁さんに欲しいわ」
「えー! 僕は男だから・・・・・・」
~~~~~~~~~~~~~~~~
時間を戻して、リュウトたちがテントに戻った頃の森でDクラスの平民4人の班が1匹の飛びラビットを倒して、証拠の角と牙を持って、帰り道を急いでいると。
Aクラスの公爵家の長男ガクトイがリーダをしている班の4人が現れて道を塞ぎ。
「おい平民、お前たちが倒した飛びラビットの角と牙をよこせ」
「えっ? 此れは僕たちが倒した証拠だから、渡せないです」
「平民の癖に生意気なんだよ。俺の言う事を聞いて渡せよ」
平民の班の4人が逃げようとしたが、ガクトイがポケットから、魔法陣の書いてある紙を取り出して、魔法陣の書いてある紙に魔力を込めて息を吹きかけると。
体長が3m以上はある長い牙を生やした猪の魔獣が現れたのだ。
Dクラスの4人はあっと言う間に、渡された笛を吹く間もなく、その猪の魔獣に襲われて血を流して倒れてしまい。見ていたガクトイが薄ら笑いをして。
「フン、おとなしく角と牙を渡せば良いのに平民が」
そう言いながら、倒れている生徒の袋から、角と牙を取って自分のカバンに入れたのだ。
「そうだ! 面白い事を思いついた。あの平民の生意気なリュウトを殺してやる。・・・・・・フフフ・・・・」
~~~~~~~~~~~~~~~~
リュウトたちが冗談を言いながら食事が終わった時に、元近衛騎士のバートン教官が来て。
「食事中にすまないが、この時間に成っても2組の班が戻らないのだ。騎士団と捜索に行くことになったが君たちの班は実力があるので騎士団が必ず守りますから、捜索に同行して頂けませんでしょうか」
ナナファーナは簡単に。
「分かりました。私たちよろしければ、同行いたします」
「みませんが、宜しくお願いします」
急いで森に入ろうとした時に、ガクトイを先頭に4人の生徒が。
【魔獣が出た~! 助けてくれ~!】
ガクトイの後方に猪の魔獣が此方を睨みつけていたのだ。ついて来た騎士が。
『不味い‼ あれはB級魔獣で鋼の猪だ』
騎士の声が終わらないうちに猪の魔獣が突進して襲い掛かって来た。
騎士たちも、ナナファーナを守るどころか。
逃げ出してしまい。ナナファーナも逃げようとしたが、石に躓き転んでしまい。猪魔獣の鋭い牙で突き上げられされそうになったのだ。
リュウトは。我を忘れて咄嗟に身体強化して刀を抜き猪の魔獣の前に立ち、刀で切りつけた。
だが魔獣の皮膚はまるで鋼のように固く、表面に傷をつけただけ、跳ね飛ばされてしまい。
木にぶつかり、身体強化していたので軽い傷で済み、直ぐに立ち上がり。
魔獣は勢い余って離れた。
ナナファーナを抱いて、大木の上に飛び上がり、気絶しているナナファ―ナを安全そうな木の枝に寝かせて。
刀に真空の刃を被せて勢いを付け、木の上から飛び降り、魔獣の柔らかい目に刀を突き刺した。
突き刺した刀は目から頭を突き抜けて魔獣は頭から血しぶきを上げてブォーと悲鳴を上げて倒れ痙攣して絶命したのだ。
鋼の猪の魔獣が絶命したのを見届けると、直ぐに飛び上がると、気絶しているナナファーナを抱いて飛び降り、逃げた騎士たちを睨みつけて救護班の所にナナファーナを連れて行ったのだ。
幸い、ナナファ―ナは転んだ時の擦り傷だけで、直ぐに気が付き、僕を見て。
「私は、助かったのね! ・・・・・・リュウトが私をかばって魔獣の前に立った・・・・・・えっ?・・・・・・
リュウトは無事なの」
「僕は無事で元気だよ。それよりナナファーナ何処か悪いところは無い?」
「大丈夫よ! 何処も痛くないわ。でも、あの時は死ぬかと思ったわ」
リュウトは、ナナファ―ナを助ける事が出来て良かったと思い、ホットしたのでした。
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